作品紹介・あらすじ
マレー半島を訪れた推理作家・有栖川有栖と臨床犯罪学者・火村英生を待ち受ける「目張り密室」殺人事件!外部へと通じるあらゆる隙間をテープで封印されたトレーラーハウス内の死体。この「完璧な密室」の謎を火村の推理は見事切り伏せられるのか?真正面から「本格」に挑んだ、これぞ有栖川本格の金字塔。
感想・レビュー・書評
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「合理も極まれば狂気に接近する」
最近私の中で作家アリスシリーズが再燃しているので、その中でも大好きな『マレー鉄道の謎』を2年ぶりくらいに再読。
火村とアリスが日本を飛び出し、旅先・マレーシアでの謎解きが描かれる。
この作品の一番好きなところは、アリスのサムライ・イングリッシュ。
英語が全然できない私が言うのもなんだけど、これが本当にかわいい。
あくまでアリスの視点で話が進むから、英語の会話になるとちょくちょく「××××(聞き取り不能)」になるのも面白すぎる。
そんなユーモアを挟みつつも、ここはやっぱり本格ミステリ。再読とはいえ結末は忘れていたので、ドキドキしながら読めた。
特に、最後、火村が犯人を追い詰めるシーンの緊迫感はすごい。手に汗握る、とはまさにこのことだと思う。
謎解きの面白さはもちろん、流暢な英語で渡り合う火村とサムライ・イングリッシュで頑張るアリス、火村とアリスの友だち思いな一面も見られて、私にとってはてんこもりな一冊。
今まで図書館で借りて読んでいたけど、大好きだから自分でも買おうかと思う。
長編を読みたい気分なので、次は『乱鴉の島』を読む予定!
2022.1.22 読了(再読)
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国名シリーズ中、その国で解決するのは本家クイーンの『アメリカ銃の謎』と本書『マレー鉄道の謎』だけだろう。
取材成果を活かしたいのか、第一の殺人が起きるまでは紀行文のようである。34歳の男二人旅だが楽しげだ。
アウェイの事件とはいえ、現地の警察が協力的なので、火村のフィールドワークは進捗する。
目張り密室の封印は、そんなに上手く行くのか、と疑問を覚えた。
ジャッキとジャックの勘違い→第三の殺人、にはしてやられた。今回も犯人は指摘できず。謎の一端をかすめるように解いただけにとどまった。
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長編の国名シリーズ。
火村先生とアリスの南国リゾートバカンスのギャッブに笑顔になりながら、こちらも旅をしているような気分で一気に読んでしまいました。
トレーラーハウスの目張り密室で、何パターンかトリックは思い浮かぶものの、実際にできるのかは曖昧で、火村先生が導き出した答えを聞いても随分力技だなと苦笑したりしましたが面白かったです。突破口になった「ジャック」も海外だからこそのミスリードで素直になるほど!と嬉しくなります。
真相にたどり着いた火村先生の表情や仕草を思い浮かべると読んでいる方も心が沸き立つようです。
二人の大龍への厚い友情に胸を打たれ、ラストの必死なハイウェイドライブが最高でした。有栖川先生の作品は余韻に浸らせてくれるのが良いですね。
悪い意味でタフな犯罪者達の陰でひっそりと命を燃やす男性たち。「蛍」の例えが儚いです。
旅情をそそる素晴らしい本でした。
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長編シリーズ。それも密室殺人。蛍が気になります。
最初の方はダレてたけど事件がおきると面白いくて夢中で読みました。人の欲とは恐ろしい…その欲により何人の人が犠牲になったんだろう…
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超大作の後の余韻冷めやらぬ時に読んだのと、仕事で色々あって本に集中できなかったせいもあると思うが世界に入り込めないまま終わってしまった感じです。
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とても面白い長編でした。
有栖川先生の長編は少しグダるところがあるなぁと他の作品を読んで思っていましたが、今作はずっと飽きる事なく読めました。
マレーシアにもタイにも行ったことがないので、情景描写があっても想像しにくいかな〜と思っていたのですが私の想像力でも補完できるくらい綺麗な書かれ方がされていました。
マレーシアに行ってみたくなりますね!
悲しい人間関係、庇おうと隠そうと守ろうとする行動が多くみられて、こういうのが読みたかった!と感動しました。
最後にはちょっとした虚脱感が襲いますが…
先が気になって一気に読んでしまう作品でした!
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火村英生。旅先で連続殺人事件に遭遇する。帰国のせまるなかのタイムトライアル。
C0293
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舞台はマレーシア。
登場人物が特別多いわけではないけれど、カタカナの人名・地名は苦手だし…とか思いながら読んだけれど、意外と、複雑で分かりにくかった、という印象はなかった。
火村さんが英語堪能なのは分かったけど、アリスも、一般的な日本人のレベルとしては出来るほうだと思うけれど。
日常会話以上のレベルで話せてると思う。
基本、アリスの一人称だから、会話で彼が聞き取れないところは、「××××」で伏せられてるのが、なるほど、て感じだった。
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悲しい作品やね。
人の欲って際限がなくてね
結局極論と思える手段で、成し遂げてしまう人も
いるわけですよ。
そして、そのために数多くの人が死に、
身の回りの人も傷つきました。
おこってしまったからには
もうそれをいい状況に戻すことは、できません。
著者の長編作品は
基本的に不条理で
救いようのないものばかりです。
きっとね、火村が悪に立ち向かうのは
こういう思いをする人が
なくなって欲しいからなのかもしれませんよ。
でも、今回は火村にとっては敗北だったと思います。
そう、法律とて、
真の黒幕は何の罪に問えないのです。
ですが…
その結果は思いもよらぬ延焼を起こし
黒幕は、一生戻らぬ過去に
さいなまれて暮らすことでしょう。
出てきてよいこともあったけど
それだとしても代償は大きすぎましたね。
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休暇でマレーシアに行った2人が出くわした殺人事件。
まったく予想がつかなくてモヤモヤしていた所でまさかの謎解き結果。
そう来たか、火村先生。
He doesn't miss a trick!
Picture star!
著者プロフィール
1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。
「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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