悪魔と詐欺師 薬屋探偵妖綺談 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061821057

感想・レビュー・書評

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  • ゲゲゲの鬼太郎の方が面白いと思う……受け付けませんでした。

  • 【 シリーズ第3弾。薬屋3人組、東奔西走す! 】  

    読了日:2005.11.02
    分 類:連作短編集
    ページ:278P
    値 段:800円
    発行日:1999年12月
    出版社:講談社ノベルス
    評 定:★★★

    ●菜の花の独断と偏見による評定●
    ------------------------------
    文 章 :★★★
    描 写 :★★
    展 開 :★★★
    独自性 :★★★
    読後感 :★★★
    ------------------------------

    ---【100字紹介】-------------------
    「当ててごらん。これらの事件には、共通点がある」
    喫茶室で毒死した男。マンションから飛び降りた会社員。
    プログラマーは列車事故で死に、書店員は手首を切った。
    だがそれらはすべて解決したはずの事件だったのだ… 
    -------------------------------------

    本作は高里椎奈の「薬屋探偵」シリーズの第3作。しかし前2作とは大分、趣が違います。

    全5幕+カーテンコール(エピローグ)から成っていて、それぞれが独立しているようでしていないような。


    シリーズの簡単な説明を。
    とある街の一角、まるでそこだけ時にとり残されたかのような「深山木薬店」。澄んだ美貌の少年(深山木秋)、優しげな青年(座木)、元気な男の子(リベザル)の3人が営む薬店、実は探偵事務所!?「何でも調合する」あやしげな薬屋さん。裏家業は妖怪専門のごたごた片付け屋さん。何故彼らはそんなことをするのか?妖怪が人間と平和裏に共生していくのに必要だから。実際のところ、そんな彼ら自身が妖怪なのです。

    ちなみにシリーズ第1作「銀の檻を溶かして」はメフィスト賞受賞作で、高里椎奈のデビュー作です。

    そんな薬屋3人組に前2作で関わってきたキャラが刑事の二人の刑事。頭の回転が速いが少しとっつきにくい高遠、天真爛漫で深山木秋の大ファンの御(おき)。

    本作でも彼ら5人が主に活躍しています。


    第1幕「暗鬼」は、シリーズ中ではおなじみの刑事・高遠が主人公。
    何とお見合いの席につかされることになった高遠の胸中とともに彼の知られざる(?)子ども時代や家庭の事情などがさらりと流れさっていきます。そして出会い頭にぶつかった、ホテルの喫茶室での毒死事件。
    珍しく、オカルト色は完全にゼロ。短編にふさわしい小さな事件ですが、本格ミステリです。

    第2幕「再鬼」は薬屋3人組の最年少・リベザルが主人公。
    おつかいで駅前を歩いていたリベザルが、シリーズ第1作で出会った高橋総和(with ペットの推定イグアナ)と再会するところからお話は始まります。彼は、旅行会社の社員である先輩の飛び降り自殺に不審を感じたと深山木秋に相談にきたということ。
    リベザルの心の動きを描くことを主目的としているような筆致。ただ、やはり少しぎこちないでしょうか。この著者の描きたいことはよく伝わってくるしそれは好ましいものに思えますが、文章の滑らかさに関しては、著者にもう少しの作家経験が必要なのかもしれません。

    第3幕「夜鬼」は薬屋3人が主人公?またはリベザルでしょうか。
    ある意味、薬屋の裏家業の真っ当な依頼がきた、という感じ。依頼人と薬屋3人の掛け合いが軽妙なオカルト・ライトノベル。短編らしい明快さのある作品です。

    第4幕「回鬼」も、リベザルが主人公。
    しかも他の薬屋2人(深山木秋、座木)が、ほぼ不在。リベザルの遊び場である近所の山で起きた殺人事件の聞き込み捜査にやってきた刑事たちに応対した留守番のリベザルがその殺人事件をひとりで解決するという珍しいお話。リベザルが独力で事件を解くのはこれが初ですね。しかしメインはミステリよりもやはり、リベザルの心の動きでしょうか。

    最終幕「惹鬼」はここまでの4作の合計よりやや少ない程度の長さで短編というよりは中編小説というべきでしょう。前作でも登場していたネットの情報屋「シャドウ」から刑事の高遠に「これらの事件には共通点がある」と謎かけが出されます。事件は徐々に進んでおり、この作品に到達した時点で6つ。高遠は御刑事とともに深山木薬店に相談にやってきます。しかし秋は不在で、座木とリベザルが彼らに協力。主に座木の活躍が描かれる章ですが、独立してもうひとつ、「秋らしくない秋」が動いているお話がときどき挿入されていきます。さて、それらの関係は?というところ。
    また、この章では第1幕で振られた「高遠の事情」がもう一度現れ、終幕にふさわしい彩を添えてくれます。
    短編が独立ではないことを、事件の繋がりだけでなく各人の事情へ絡めていく描き方は巧いと思いました。それにリベザルの心の動きと比べて、高遠のトラウマ(?)はリアリティがあって滑らかな描写です。著者にも何かトラウマでもあるのでしょうか…。


    ●作品データ●
    ------------------------------
    主人公 :薬屋3人+刑事(主にリベザル、高遠 三次)
    語り口 :3人称
    ジャンル:オカルト風ミステリ
    対 象 :ヤングアダルト寄り
    雰囲気 :ライトノベル
    ------------------------------


    「本物、ですよね?」
    「影武者を持った覚えはないわね、一応」
    (リベザル、高橋 総和)

  • 地元図書館(04/08/20)

  • 最後に明かされた秋の行動に「そうだったんだ」と驚きました。零一もぐるだったなんて!(笑

  • *登場人物*<br>
    <table>
    <table border="0">
    <tr><td><font size="-1">深山木秋</font></td><td><font size="-1">妖怪。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">座木(ザギ)</font></td><td><font size="-1">イギリス出身の妖怪。妖精の一種。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">リベザル</font></td><td><font size="-1">ポーランド出身の妖怪。精霊の一種。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">高遠三次</font></td><td><font size="-1">上流坂署の刑事。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">御葉山</font></td><td><font size="-1">上流坂署の刑事。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">衒崎弥</font></td><td><font size="-1">上流坂署の警部補。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">桜庭零一</font></td><td><font size="-1">秋の友人(秋談)。フィンランド出身の悪魔。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">新条正</font></td><td><font size="-1">珞岩外科医院医師。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">根岸</font></td><td><font size="-1">京都府警の警部。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">五十嵐</font></td><td><font size="-1">京都府警の刑事。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">高橋総和</font></td><td><font size="-1">大小寺の息子。大学生。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">三木有助</font></td><td><font size="-1">高橋総和の先輩。辻堂市在住。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">中村浩</font></td><td><font size="-1">永康総合病院前院長。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">中村恒樹</font></td><td><font size="-1">中村浩の長男。同病院医師。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">ニジカワ</font></td><td><font size="-1">同病院医師。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">ヘラ</font></td><td><font size="-1">ドイツ出身の悪魔。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">木村絵未</font></td><td><font size="-1">老人ホーム勤務の養護士。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">館端孝則</font></td><td><font size="-1">久彼山署の警察官。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">日下部</font></td><td><font size="-1">久彼山署の刑事。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">双海由高</font></td><td><font size="-1">高校生。和良市立崇基高校在籍。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">西元芳憲</font></td><td><font size="-1">プログラマー。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">岩川涼子</font></td><td><font size="-1">書店員。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">車谷エリカ</font></td><td><font size="-1">大学生。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">道長円</font></td><td><font size="-1">大学生。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">塙季和</font></td><td><font size="-1">高校生。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">山野実</font></td><td><font size="-1">葬祭業経営者。</font></td></tr>
    </table><br><br>
    <p>《story》<br>
    「当ててごらん。これらの事件には、共通点がある」<br>
    喫茶室で毒死した男。マンションから飛び下りた会社員。<br>
    プログラマーは列車事故で死に、書店員の娘は手首を切った。<br>
    だが、それらはすべて解決したはずの事件だったのだ。<br>
    そこに「なにか」の意思が働いていたというのか―?<br>
    おなじみ薬屋三人組、東奔西走す。
    </p><br><br>
    怜の好きな言葉・シーン<br><br>
    秋=秋 り=リベザル<bR><br>
    <p>
     秋  「死因を判断するのは医者、動機を探るのは警察の仕事です。<br>
        警察が自殺と判断したならそうなんでしょう。総和さんは僕に何を期待してるんですか?」<br>
     り  「師匠、俺も総和さんの話、変だと思います。何で手伝わないんですか?<br>
        総和さんが折角頼って来てくれたのに」<br>
     秋  「それは僕の台詞だ」<br>
     り  「? どういう意味ですかっ」<br>
     秋  「問題になってるのは、お前の大切なお友達の親友だ。話も聞きたくないって面してたクセに」<br>
     り  「そんなこと・・・・・・総和さんの前で言わなくたっていいじゃないですか!」<br>
     秋  「進歩がないね」<br>
     り  「だって! 気にしないようにって思っても、どうしても気になっちゃうんです。でも、」<br>
     秋  「そのことを言ってるんじゃないよ。起こってしまう感情はどうしようもない。<br>
        頭でこう思おうと決めても、そう易々と変えられないからね。自覚してるだけで十分だ」<br>
     り  「じゃあ、進歩してないって何処がですか?」<br>
     秋  「僕は失敗してもいいとは言ったけど、なかった事にしていいとは言ってない。<br>
        過失を過失と認めていないならそれは経験として無価値だ。言ってる意味、解るか?」<br>
     り  「そんなのっ・・・・・・。<br>
         解らない、です」<br>
     秋  「なら、考えるんだな。<br>
         男の墜死の話を僕は変だとは思わない。だけど、お前が変だと思うなら手伝えばいいじゃないか」<br>
     り  「でも、俺は頼まれてないんです」<br>
     秋  「頼まれなきゃ何もしないのか? 死んだ彼や僕を羨ましいと思う暇があるなら、<br>
        その立場になれるよう努力するんだな」<br>
     り  「そんなこと思ってませんっ」<br>
     秋  「顔には出てる。<br>
         僕が小坊主の期待を裏切ったとでも思ってるらしいが、自分で何もせずに結果を待ち構えるだけなんて、<br>
        針も付けずに魚を釣ろうとするのと同じだ。彼もそれが解ってる。<br>
        それで、まだし足りない抗議を飲み込んだんだ。僕の買い被りじゃないですね?」</p>
    <br><br>
    <p>
     り  「事件調べるの、師匠はやらないんですか?」<br>
     秋  「リベザルはやりたいんだろ?」<br>
     り  「・・・・・・はい。でも」<br>
     秋  「またか。僕に何度同じ事を言わせるつもりだ?」<br>
     り  「三木さんの時は、勢いでっ」<br>
     秋  「勢いで?」<br>
     り  「いき、おい・・・・・・で。<br>
         することがないんです」<br>
     秋  「自分のするべき行動は『ある』んじゃなくて『望む』んだよ」<br>
     り  「望む?」<br>
     秋  「選ぶと言い換えてもいい。自主性のない行為は効率を下げる。勉強、運動、仕事、なんでもそう。<br>
        リベザルの直した方がいい部分だね」<br>
     り  「俺の、直した方がいい部分。<bR>
         迷惑になりませんか? 兄貴の足手纏いになります」<br>
     秋  「大丈夫。ザギはそういうコト厳しいから、邪魔なら邪魔て直接的に言いはしなくても断るさ」<br>
     り  「そう、ですか?」<br>
     秋  「言ったろ? 何をしたいかを決めるまでは個人の仕事。したくもない事をさせられたり、<br>
        したい事をさせてもらえなかったりはよくある事だけど、やりたい事は相手に伝えない限り、<br>
        させてもらえるチャンスは殆どゼロだ。『始めなければ始まらない』。単純だけど真理だよ」</p>
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  • 内容(「BOOK」データベースより)
    「当ててごらん。これらの事件には、共通点がある」喫茶室で毒死した男。マンションから飛び下りた会社員。プログラマーは列車事故で死に、書店員の娘は手首を切った。だが、それらはすべて解決したはずの事件だったのだ。そこに「なにか」の意思が働いていたというのか―?おなじみ薬屋三人組、東奔西走す。

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著者プロフィール

茨城県出身。芝浦工業大学工学部機械工学科卒業。1999年『銀の檻を溶かして』で第11回メフィスト賞を受賞しデビュー。著作に、デビュー作を始めとする「薬屋探偵」シリーズ、「ドルチェ・ヴィスタ」シリーズ、「フェンネル大陸」シリーズ(以上、講談社)などがある。2019年5月に「うちの執事が言うことには」が映画化された。

「2023年 『雨宮兄弟の骨董事件簿 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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