- Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061854444
作品紹介・あらすじ
高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。
感想・レビュー・書評
-
面白かったです!失敗したなと思ったのはつい先日、先に「変身」を読み終えていた点。まー、そこまで大きな失敗ではありませんが。当時、東野さん的に脳ブームだったようですね。本作、34年程前に刊行されたものですが、そこまで古さは感じません。読みやすく、謎、伏線、その解明と回収がわかりやすく表現されてます。この主人公2人にはどういった宿命が!?ラストのくだり、終章からですが、そこまでは予想してなかったので「あらま、そうなんですか!」と、個人的には楽しめました。意外性。
引き続き、東野さん未読作読み進めていきたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初期の東野作品でまだ読んでいなかった本書をチョイスしてみました。
地域の有力企業の新社長が、ボウガンの矢に刺されて殺害されるという事件が発生。
捜査にあたることになった刑事の和倉勇作は、事件関係者である企業一族に、かつて何をやっても敵わなかった“ライバル”・瓜生晃彦がいることに、複雑な心境に陥ります。
しかも晃彦は、勇作の昔の恋人・美佐子と結婚していて・・。
ミステリであると同時に人間ドラマとしての要素も多分に含まれている内容で、勇作たちが追う“社長射殺事件”は、あくまでエピソードの一つであって、その事件を拠点とした勇作・晃彦・美佐子を結びつける、数奇な“運命の糸”の謎に惹き込まれました。
さらに冒頭で綴られている、勇作が子どもの頃に慕っていた女性・サナエさんの不審な転落死事件との関わりと、その背後に何があったのか・・。
グイグイ読ませる安定のリーダビリティで、勇作と晃彦のバックボーンを描きながら、その因縁めいた関係性と事件の謎が絶妙に絡み合って展開していきます。
後半、勇作は完全に公私混同状態で、現在担当している事件より過去の“サナエ事件”の方にメインで追っていたような感じなのですが、その間に“社長射殺事件”は他の刑事によって解決しちゃいましたw(こっちはこっちで、動機は弱めとはいえ犯人の意外性はありましたけど)。
そして、終盤にいくにしたがって“サナエ事件”の真相と共に、彼らを結びつける「糸」の背景も明かになってきて、最後の勇作と晃彦の会話シーンで一気に“伏線回収”されていく感じが良くできてますね~。
さらにダメ押しで明かされた勇作と晃彦の“関係”には驚きましたが、まさにタイトルそのものの“宿命”だったのだな・・と感慨深いもの感じました。
“ラストの一行”がこれまた秀逸で、東野さんもこの一行を気に入っているらしいとのことです。
因みに解説で、本書は『変身』に繋がるとあったのですが、実はこちらも未読なので、“まだ読んでいない東野初期作品シリーズ”、次は『変身』を読んでみようかな・・と目論んでおります。 -
殺人事件そのものより、過去になにがあったのか、二人を繋ぐ宿命とは何なのか。そこに重点を置いたストーリー。
読みたかった系統ではなかったが、それなりに楽しめた。最後の男性2人の会話が粋な感じで良かった。 -
ストーリー終盤でのスピード感のある展開、ラスト1行の意外性など読了後、タイトルの意味に納得。
しかしながら主要人物のバックボーン、殺人事件の犯人やトリックが、いまいちインパクトに欠け、ドラマとして感情移入までに至れなかった。
-
すごく良かった。
東野さんはやっぱりこういう作品がいい。
解説によると、最後の一行のために練りに練ったとか。
確かに意外な一文で、そしてなんか微笑ましく感じる一文。
犯人も予想外で、あの人が見抜いていたというのも意外だった。
脳科学も、こういうことができるのか?と夢か現実か分からないくらいの部分が面白いんだと、解説に納得。
-
5に近い4です。
ミステリーなんだが、いや、確かにその要素もしっかりあるんだが、それよりもタイトルの『宿命』。
なるほど、宿命だなぁ。どちらかというと、そっちの方が主になってて、そちらを書きたくて書いたミステリーって感じだ。 -
まさに宿命。
これぞ宿命。
ずっと負け続けていた宿敵に対して、最後の1行は勝ったと捉える事ができる。
-
殺人事件と、幼少期からの「宿敵」である勇作と晃彦の関係性の真実、この2つの謎解きが同時進行で進んでいく。
序盤から登場人物が多くて、相関関係を書き出そうか迷いながら読み進めましたが、ある程度流れが分かると問題なしでした。
宿命とは生まれながらに定められた変えることのできない人間の運命。この物語のタイトルは「宿命」という言葉以外では表せないことが読み終わった今はよく分かる。
殺人事件の真相解明よりも、悲しい宿命を背負う登場人物たちの真実が分かることの方が衝撃的だった。