潜水服は蝶の夢を見る

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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062088671

感想・レビュー・書評

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  • タイトルと帯の文句が気になって購入。
    タイトルの意味を考えながら読み始めた本書、プロローグで理解して胸がつまった。

    エッセイの様な美しい、流れるような文章で描かれているせいか奇麗にまとめられ過ぎている、というのが実直な感想。

    文中では著者の負の想いが描かれているにも関わらず、結局は世界の美しさを感じさせられたことを残念に思う。自身の人生そのものを、ある種作品の様にまとめあげた著者の心を想うことも烏滸がましいか。

  • これはエッセイだ。
    それも植物人間になりかけた男性の―。
    彼はまばたきをすることでしか意思を疎通できない。
    その気の遠くなるようなコミュニケーションの果てに生まれたのがこのエッセイなのだ。

    だがしかし、これを読んでいる限り著者の絶望や諦めを感じることは無いだろう。
    彼はウィットに飛んだ文を書き―勿論これはフランス人の気質の影響も多少はあるのかもしれないが―あくまで冷静だ。
    読んでいて時折、彼はペンを走らせて書くように、すらすらっと叙述しているような気さえする。
    まばたきの先に生まれたとは到底思えない。

  • 以前友人からの紹介で映画を見た。医師であることを抜きにして、映画の印象は不思議さと映像表現の秀逸さに驚かされた印象がある。

  • 意識や知能は全く元のまま、全身が麻痺しているロックトイン・シンドロームの患者が、かろうじて動かせる左目のまばたきによって言葉を綴った本。

    当事者の手記を読んでいるというよりは、
    軽やかなタッチのエッセイ集を読んでいる感覚に陥った。
    今まで読んだ当事者の手記では経験したことない感覚だったなぁ。
    とても、とても綺麗な世界。
    でも、ゆっくりと、じっくりと、筆者の言葉の奥の心が届く一冊。

  • 映画を観ていて、杉本亜未さんの「ファンタジウム」でも取り上げられていて、原作読もう、と思ってたのがようやく実現。フランス人でもともと編集者だからか、どことなく詩的な印象。

    「潜水服」は、頭と意識(心)だけがしっかりしている自分。「蝶」はそんな身体であっても、思考は自由に飛んでいける暗喩。活字を自由に扱ってた人がそれを取り上げられた時の絶望、言語聴覚士と出会って、また言葉を取り戻せたときの喜びはどんなだったんだろう。

  • 難病で自由がきかなくなった自分の体を「潜水服」に、それでも自由にはばたく自分の意志や想像力を「蝶」にたとえる。
    なんと魅力的、どこまで洒脱なのだろう、この人は。

  • ・まぶた以外の全てが動かなくなった人がまばたきだけで書いた本 実話
    ・映画化もされている
    ・HJさんのおすすめ
    http://nozaki.blog15.fc2.com/blog-entry-1362.html

  • 自分にはこの病気を乗り越える自信がない
    著者の生命力・想像力・ユーモアには脱帽だ
    父の日のくだりには参った
    眠っている息子の頭を撫でる この身体に感謝

  • ロックトインシンドローム。ELLEの編集長の彼が脳出血により陥った障害。
    想像できるだろうか。感情や意識はそのままで、左のまぶたを動かす以外のすべての自由が奪われてしまうという悪夢のような状況を。
    どれほどの苦痛がそれに伴うのか、本当の苦しみは私たちには決して理解できないだろう。
    そんな彼が、気の遠くなるような(協力者が示したアルファベットに、YesかNoかをまばたきで一つずつ答えるという)作業を通して描き上げたエッセイが本書。
    想像を絶するような苦しみの中にある人物とは思えないほど、ウィットに富み、描写は美しく、ちょっとした皮肉も忘れず、まさに蝶のようにかろやかに書きつづられている。

    「カーテン」という章では、別れた妻と子供たちが会いに来て一緒に海岸へ遊びに行く様子が描かれているのだが、その情景の美しさと、そして彼の置かれている冷たい現実と、子供たちを見つめるその姿に、どうしようもなく胸が締め付けられ、涙が出た。つらく、切ない。

    私にはめったにないことだが、原作を読んで、是非映画を観てみたくなった。
    (2011.1.15映画も観た。結構原作に忠実に作られていたなあ)

  • ELLEの編集長である筆者は脳出血で倒れて
    左目しか動かせないロックトインシンドロームに陥ってしまった。
    身体が全く動かせず潜水服を着ているような状態でも
    思考だけは蝶のように自由に飛びまわることができる。
    アルファベットを読み上げてもらいながら
    左目だけで綴った作品。
    装丁:渋川育由

    映画を先に見たのだけれど女の人の区別がつかなくて(笑)
    原作で確認しようと思って読んだのですが
    エッセイ集というかストーリー仕立てになってないんですね。
    疑問は解消されなかったけれど美しい文章です。

    自分の置かれた状況を皮肉ったり、悲しんだり、愛しんだり。
    旅の思い出を反芻したり、空想の中で食事や入浴を楽しんだり。
    電車で読んだので涙を堪えるのに苦労しました。

    自分の体験を元として考えた舞台についての一説。
    「最後のシーンも、もう決めてある。
     ほの暗い舞台の上、中央のベッドだけが、後光が射しているかのようにうっすら明るい。夜。すべてが眠りについている。そこで突然、幕が上がって以来ずっとぐったりしていたL氏が、シーツも毛布もはねのけて、ベッドの下に飛び下り、奇妙に明るい光の中をぐるりとひとまわりする。そして、再び闇。観客は、また陰の声で、L氏の心の内の最後のモノローグを聞くのだ。
    ――ちきしょう、夢だったのか。」

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