- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062162487
感想・レビュー・書評
-
もちろん素晴らしいミステリー小説なのですが、偽札鑑定士(?)のフクロウの人物造型が見事で、その一点だけでも読む価値があると思いました。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あれれ?ここで終わり?
続きがありそうな話ですね。 -
偽札によって世の中に革命を起こすという発想の面白さとスピーディな展開に時間を忘れてしまう。栞として偽札らしきものがついているのも興味深い。2010/08/13
-
通貨の0.01%が偽札になっただけでインフレが起こり、0.02%ともなるとかなりの信用不安を伴った、国の根本を揺るがすような事態になるんだとか。普通、何千億円分も偽札を刷っても使い道に困りそうに思うが、この小説のように宗教法人を介した地域通貨の形で紛れ込ませたり、日本経済の壊滅を目的とした外国政府のレベルの話になると、こういうストーリーもありなのかも。
-
小説ってのはデザートじゃないから後味の善し悪しを競うものでもないんだろうなあ。
きっとどこを切るかによって、いろんな読み方ができる本なんだろうと思う。僕にとっては蟻がどれだけ知恵と力を持っても巨象の前では...っていう話だった。 -
7/22
叩くねえ叩くねえ。
貨幣経済の問題点、というありきたりなテーマではあるけど、読み物としても面白く書ける人は違うなあ。 -
悪貨が良貨を駆逐する。終いには、より悪貨が無知な悪貨を取り込んで行く皮肉が皮肉を呼ぶ展開。スピーディーかつ昨今の時期ネタを上手く取り込んで飽きさせない。彦にゃんならもっと奥深く描いて欲しかった期待が残るのが残念。happyendじゃないから好きな展開であり作家である。また、零園紙幣をするその遊び心が他に誰も無く個性が立って好きな作家である。
-
駆逐されたモノは良貨ばかりではない
偽金を巡る冒険小説。偽札作りの印刷職人、真贋の鑑定人、有島武郎と麻原彰晃を足して二で割ったような社会活動家、在中国の投資家、中国の黒幕、若くて美人で聡明な警察官、警察官僚などが、カネの流れを巡って、冒険します。
悪貨を作る職人と鑑定人の間、社会活動家と投資家の間、投資家と黒幕、投資家と警察官、警察官と警察官僚、警察官僚と鑑定人の間に、信頼、友情、愛情、など好ましい感情が垣間見え、物語の中頃まではそれが救い。悪貨が蔓延るにつれ、それら全ての人間関係の好ましさは、各自の意思に関わらず、概ね悪い方に変質していきます。
悪貨とは偽札のみを示すのではなく、金に関わって理性を保てないことを示すところから物語は始まります。ホームレス、チンピラの挿話は、多くの人にとって卑近な例だと思います。キャバ嬢の挿話から示されるのは、金融システムの前に個人は無力であるということ。そして、実は偽札でなくても行いうる、巨大な資本を笠に着て行う侵略、文化破壊、テロ、といった行為について、現在の日本の危うい状況を描いています。
明確な解決策は示されません。付録の0円札が意味するところ、菩薩の描写、その諧謔を含めた在り方こそに救いがあるのでしょう。しかし、一定水準を超えた金融システムの前では、世界一の国家ですら、真っ当な手段では手出しができないことは、オバマ・バラクの苦労を見れば、わかるところです。
昭和三十年代までに、江戸、明治、大正、昭和と続いた価値観を失い、その後、新たな節度や道徳を構築することなく、バブルを経て知性まで失いかけている現代日本に対する警鐘として、大変、面白く読めました。
ダジャレや、諧謔がきつすぎる作家ですが、控えめな表現を選び、経済小説とも読めるような落ち着きを見せたことが、悪貨の衝撃をより与えているように思います。
結局、支配したい人と支配されたい人、競争場裡から逃れたい人がいるということかよ、と自棄にもなりますが、幸い寿命と言うこともあり、何とかなっていくかもしれませ。個人的には競争条理から逃れる人が増えることが面白いように思います。
作品は面白かったが、それが示す可能性については大変残念。この警鐘をどう受け止めるかは、大変難しい。
2010/08/15、感想をまとめる。
感想はもうちょっと落ち着いてから、名作です。
2010/07/17、読了。練馬図書館から借用。 -
潜入捜査官エリカと巨額の資金を操る、謎の男野々宮の物語。
20年ぶりの島田雅彦。こんなに読みやすい人だったっけ・・・
思っていたより、なんだかライトだった。 -
作家の野心が滲み出ている。こんなの書く人になったのだなって、感じかな。