- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062173865
作品紹介・あらすじ
眉目秀麗、文武両道、才覚溢れるジェントルマン。その正体-紛うことなき、犯罪者。誰もが羨む美貌と優しさを兼ね備えた青年・漱太郎。その姿をどこか冷ややかに見つめていた同級生の夢生だったが、ある嵐の日、漱太郎の美しくも残酷な本性を目撃してしまう。それは、紳士の姿に隠された、恐ろしき犯罪者の貌だった-。その背徳にすっかり魅せられてしまった夢生は、以来、漱太郎が犯す秘められた罪を知るただひとりの存在として、彼を愛し守り抜くと誓うのだが…。比類なき愛と哀しみに彩られた、驚愕のピカレスク長篇小説。
感想・レビュー・書評
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背伸びして詠美さんの本を読んでいたあの頃を思い出しながら、この本を手に取った。きっと年齢的にはかなり追いついてきてるはずだが、彼女の世界観には相変わらずおっきな差を感じてしまう。自分の覗いたことのない世界へいつも導いてくれる存在だ。
彼がジェントルマンなら、世の中には無数のジェントルマンがいるに違いない。惹かれてはならないものに惹かれるのが恋というものなのだろう。男同士の関係よりもユメと圭の友情に安らぎを覚えた。二人が結ばれたならどんなによかったか…。
冒頭部分に戻った最後は、とても美しかった。結びの美しい作品は好きだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
山田詠美の同性愛者を主役にした長篇小説が出て、いよいよかと思いました。今までは短編でしかなかったはず…。
これは男が男に恋をしないと作り出せない物語だなと思えます。
かつ、あくまで一個人の恋愛物として読ませてくれるので、
ユメに共感するところもあり、その強烈な想いにぐいぐい惹かれます。
罪人の姿だとしても、自分だけが知っている彼の姿があって、
性行為がなくても二人だけの告解を通じた関係がある、堪らなく痛い片思い。
ゲイという設定だけに食いついたり、同性愛物は苦手だと敬遠したら勿体ない、
濃厚な恋愛小説だと思います。 -
この作品好き
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後味の悪さがクセになる...かな
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久しぶりに読んだエイミー本。
私は読書量はそこそこだけれど、文学を語れるほどでもないので高尚な書評は書けませんが、山田詠美を長年読みつくしてきたファンとして、この作品について評価をするならば…う~ん(-"-)という感じ。。。かつてなく、薄っぺらい感じ。ヤングライトノベルに挑戦したのかな?みたいな。だとしても!
確かに筆力は健在で、ページをめくる手のスピードは落ちませんでした。でも、一方で「?」が頭によぎりながらのページ捲り。
そしてこれだけはいちファンとして断言できる。いくつかのコメントに「エイミー節は健在!」みたいなのがあったけど、往年のエイミー節はこの小説には全然活きていない。ちがうちがう(>_<)
そう思う人たちは、どこからの読者なのかな。『蝶々の纏足』『風葬の教室』『24/7』『ひざまづいて足をお舐め』etc..このあたり、このあたりを読んでみて~(T_T) -
うううううぬ…。読後感ワルっw (いい意味で)
仲良しのお姉さんに勧められて、久々に読んだエイミーさん。
ところどころに散見するわたしの青臭いアドレッセンスを彩った山田節に郷愁めいたものを感じつつ、その頃のそれとは比べ物にならないドス黒いリビドーと哀しい純愛物語の重々しさといったら。「恋」をかくも陳腐なものに貶める破滅的な純愛。なんというか、正しきものへのアンチテーゼのようにも思える。自虐的な意味では、善悪を超越した情動的エロスを俯瞰する享楽的読書体験でした。はい。
しかし帯の禍々しさがぱないですわ。山田作品は未だもってアニマル・ロジックが最強です。個人的に。
登場人物の中ではケイさんがとても好きだな〜。「…友情」/「友情ならば、裏切れる」。悲しい言葉です。 -
詠美さんにしか書けない。
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本当に、女性が書く男性同士の感情の運び合いの嘘くささというのは、拭い去れるものではないなあ、と改めて。夢生は真の意味では本質として男性ではないし、漱太郎も女性が書く幻想としての男性だし、その2人のやりとりといったらもう、女同士でしかない。カニンガムとか、フォックス(小説内に出てきたけど)を貪るように読んだ身としては、ただのおふざけの延長線上のように感じられる。人間というものを全く書いていない。都合のいい人形を動かしているかのよう。ただ、この手の小説でそれなりに質の良いものというのは、娯楽小説と割り切れば受け入れられる。ストーリーはわくわくするものだったし、恍惚、という言葉が絶え間なく頭の中でチカチカするような、そんなかんじ。こういう本を読むたびに読書とは何なのかということを考えてしまう。人形を動かしているのに人間を書いているつもりでいる本か、本当に人間を書いている本か、人間を書くことの難しさを理解した上であえて人形を動かすような本を書いているか。
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ジェンダーフリーも人唇に膾炙して来た時代に、エイミーが投げかけた大問題作だと思います。
最初から幸せな結末を迎えるわけがないと思いつつ読み。そのまま重い気持ちで読み終わりました。 -
冒頭のシーンから結末が想像できるが、後から出てくる花鋏がラストで大変重要な役割を果たす事に感動した。
到底理解できないと思っていたゲイの心情が夢生によって切々と語られ、なんとなくわかったような気がしてしまう。そして最後まで夢生に恋心を明かさなかった圭子はとてもいじらしかった。
漱太郎のように誰からも愛される優等生の意外な裏の姿はよくある話だが、ここまで酷いとむしろ清々しい。とはいうものの読後感はやはり良くなく、ラストシーンの禍々しい美しさだけが心に残った。
「ねえ、休日にパタゴニア着てる銀行員ってどう思う? 特技は、ダッチオーヴンを使ったアウトドア料理。どうよ、この意外性」
「な? 世の中、ちゃちな不幸だらけだろ? それを、みんな必死になって隠そうとしている。それなのに、たいしたことないちっぽけな幸せは見せびらかしたがる。くだんねえな」 -
すばらしい。。。いや、怖ろしい。とんでもない本を読んだいう読書自体の喜びと、嫌悪感がない交ぜになる。あまりの内容に本自体を禍々しく感じてしまって、本から手を離したくなったぞ。ただごとじゃないなあ。とりあえず今年の一冊は決定した。
初期の作品から倫理要素は多かったけど、これは最早全体が哲学本だ。この人の眼は一体どういうことになっていてどういうふうに観えているのか。で、こんなに心正しい優しくて意地悪な人はいないと思う。
文章が濃密で途中で深呼吸すること何度か。赤潮青潮。 -
山田詠美の本、久しぶりに読んだ。
なんか、暗い…
同性愛とか人の闇みたいなのがいっぱい。
紳士淑女もみんな裏の顔持ってるのかな?
大好きな人でも全部知らないことが、いいことなのかも。 -
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わー、読まれたんですね!!
すごい小説でしたよね、これ。
山田詠美の恋愛小説は、
reader93さんが書かれているように
愛し方に...わー、読まれたんですね!!
すごい小説でしたよね、これ。
山田詠美の恋愛小説は、
reader93さんが書かれているように
愛し方に本当に圧倒されますね。
>「良い人」という皮をかぶり皆に愛される蛇が、特定の人の前でだけ脱皮し、恐ろしい本当の姿を見せる。本当に人を愛するということは、その恐ろしい姿をも愛するということなんだろうか。
reader93さんのこの部分、感動しました。
どうなんでしょうね。。。
究極の愛となると、こうなるのでしょうか?
この本は色々お話したいので
近いうちにメール送らせてください。
また色々語り合いましょう♪2012/01/12 -
Christyさん
christyさんに良いと聞いてからずっと読みたかったこの本、年末日本から遊びに来た友達に頼んで持ってきてもらいました!...Christyさん
christyさんに良いと聞いてからずっと読みたかったこの本、年末日本から遊びに来た友達に頼んで持ってきてもらいました!ついに読めて嬉しかったです。これ良かったです。待ったかいがありました。いい本教えてくれてありがとう。山田詠美って文章がとてもいいですよね。山田詠美の本を読むたびに「こんな本が読めるなんて日本人で良かったー。日本語が読めて良かったー」と思います。2012/01/13
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愛なのか、嫉妬なのか。
ゲイとノンケの間にある感情がデフォルメされているとはいえ、片思いをするゲイの表情が瑞々しく書かれているように感じた。
久しぶりに、「これほどまでに私を引き込んでくれる」小説に出会った。 -
BLがわりとオープンに語られることが少なくない昨今、ついに山田詠美まで!?と、ちょっと焦ったけど、心配なかった。耽美とかBLとかそういうカテゴライズどうでもよくて、ただ、極上の恋愛小説。誰かのことだけを想うことって、ちょっと狂ってるんだな。そして、誰もがその狂気をもってるのね。
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「誰もがその狂気をもってるのね。」
山田詠美は、それを慈しんでいるように思えてしまう。「誰もがその狂気をもってるのね。」
山田詠美は、それを慈しんでいるように思えてしまう。2013/04/09
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何不自由ない家庭に生まれているにも関わらず、ジェントルマンでいることを演じている人間が持つ心の闇。私は漱太郎の気持ちが何となく分かる。
読後感が悪い(良い意味で)。 -
美しい花には棘(毒)がある。
偽善を通り越した非の打ち所のなさの裏には
やはり闇しかないのか。
懺悔室を持って闇を知っている自分こそが
誰よりも特別なのだと自負していた夢生だか
肝心なことは何も知らされていない
ただの奴隷のままだった。
ベージュ色の床が真紅に染まり
懺悔室が処刑台へ。
最後は自らの手できみの罪と見逃し続けた
ぼくの罪を裁き、作品を生み出すことで
二人の関係は永遠になれたということなのか。
初の山田詠美さんでした。
とてもサクサク読めたので☆5なのだけど
出てくる誰の心情にも近寄りたくなくて
心情を読もうとすると闇に引きずられそうに
なるから−1で。
感想を聞こうとして、やっとこういう事かと
気がつくところもあるぐらいだったので
まだまだ読み解けてないことがある気がする。
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高校生のころの坂井嗽太郎(さかい・そうたろう)は、勉強もスポーツも完璧にこなし、女子の人気を集めていました。そんな彼の「ジェントルマン」ぶりに、宮下夢生(みやした・ゆめお)と藤崎圭子(ふじさき・けいこ)は引っかかりを感じていました。そんなある日、夢生は嗽太郎の知られていない内面をのぞき見るような出来事を目撃してしまいます。嗽太郎は、人の心の鍵穴をこじ開けずにはいられない衝動を内に秘めていました。そして、この出来事がきっかけで、夢生は嗽太郎に強く惹きつけられ、彼のことを観察しつづけることになります。
やがて彼らは大人になり、嗽太郎は家庭をもって、あいかわらず完璧な「ジェントルマン」を演じ、夢生は自分が彼の秘密を共有するただ一人の人物となります。ところが、漱太郎の妹の貴恵子が、夢生のゲイ仲間のシゲと恋に落ちたことで、物語は急展開し、クライマックスへと向かっていくことになります。
同性愛やサイコパスといった大きなテーマをごった煮にした作品で、もうすこしエンターテインメント志向の小説であればこれらのなかのひとつをメインに据えて収まりのいい物語にするのでしょうが、著者はむしろそれらのテーマを無造作に作品のなかに放り込むことで、振幅の大きな物語をつくることを意図したのかもしれません。ただその割には、登場人物たちのキャラクター設定がやや平板に感じられてしまったのは残念でした。 -
ジェントルなのか?
強姦して人を自殺にまで追い込んでしまうのは。。
「人がなにかを感じる時に理由なんてありますか?
」っていうフレーズは好き
純愛といえば純愛?
わたしの好きな本ではなかった -
この人は私にとって絶対だってわかる瞬間は確かにある。愛じゃなくて恋だと思う。恋と乞いって似てる。瑞々しい感覚っていうより、枯れた植物の根っこみたいだけど。
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こんなに美しく狂気を書けるなんて、さすが。
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78:瀬太郎という「完璧な」男にまつわる罪と罰、そして愛情。瀬太郎に惹かれるユメという存在は、山田文学らしい純粋さと脆さ、危うさを持っていて、いびつで、決して愉快ではない物語を艶やかに、そして妖しく彩っています。あまり好きではない方向性の物語なのだけど、どうしてか目を離せない。そうこうしているうちに読み終えてしまって、ラストシーンの美しさと、どうしようもない運命に揺さぶられるとともに、つまらない道徳やモラルというものについて考えさせられました。
「あまり好きではない方向性の物語」を読ませてしまう魅力って、すごいな……。