最果てアーケード

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062176712

感想・レビュー・書評

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  • ちょっとさびれているけれど懐かしい雰囲気のあるお店を一話ごと想像した。ステンドグラス越しに柔らかい陽の射すアーケードを思い浮かべながら、品物の細かな様子も手に取るよう。
    それぞれに少しせつない物語がある。
    小川洋子さんの本は好きだ。
    出てくる人がどんな特徴があって、どんなことを習慣にして日々を過ごす人間なのかという描写を読んでいるうち惹き込まれる。
    何かほんの少しいつもと違うことが起こったりするとき、どうなるんだととても気になる。
    けれども無理に感動に連れていくような結末ではなくて、すっと終わる。
    キラッとしてあとはすっと。
    そこがいい。後味が悪くなく、ほとんど温かい雰囲気で終わる話が多かった。

  • 華やかさのない、必要のない人には忘れられたアーケードの、そこに住む少女の目から見た話。
    この少女が亡霊?なのか、時間の流れが違うところに身をおいえているように見える。体がなのか心がなのか、そのせいで廃墟の影というか気配のような存在に思えてならない。
    好きなのはノブさん。

  • KindleUnlimitedから。

    目次を開いてまず目に入る「兎夫人」「紙店シスター」「遺髪レース」といった章のタイトルからなんだかいい。
    おとぎ話みたいな現実離れした空気感をまといつつリアルで身近な感覚も書かれていて、不思議な読後感。
    小川洋子好きだったみたい!好きな作家が増えて嬉しい。

    2022-46

  • 小さなアーケードを舞台にした10個の物語。落ち着いた文章で安心して読めますが、火事や剥製用の義眼や遺髪、愛犬の老いなどどこかに死が感じられる本でした。

  • 不思議なことを繊細な表現で。
    やわらかくてかるい。

  • あったかくて、最後は少し切なかった。
    アーケードの店主たちは私の事をずっと見守っていたのかな。
    様々なお店の描写が丁寧で映像が浮かぶようで、綺麗。
    見たことはないような珍しいお店ばかりなのに、そのお店を覗いたような経験を与えてくれる。凄いです。
    毎日の時間を大切に過ごしたくなる、そう感じる本です。

  • そこは世界で一番小さなアーケード。風変わりな品々を扱う店主と、理由あってそこに集まる客たちのささやかで不思議な物語。どこか現実離れした、浮遊感のともなう世界は、リトル・アリョーヒンが暮らしていたチェス盤の下の窪みともリンクするような、そんな密やかさと、後ろ暗さに包まれている。わずかな人生という営みの中の、ほんの一瞬の奇蹟を掬い上げる言葉たちは、唯一無二の旋律をもって心の奥底にたまっていく。そういった時間のせつなさが、酒井駒子さんの装画からも感じられます。

  • 最後まで読み終えて、また最初(表紙まで戻って)から読み直したくなる。

  • 素晴らしい!
    小川さんの短編はホント、素敵です。
    遺髪レースや図書館のあたりであれっ?っと思ったりはしたのだけれど、あわいの子だった、ということですね。
    いや、このアーケード自体があわい、ということもありえる。
    どのお話も好きですが、輪っか屋さんのポニーテールの彼女のポニーテールの描写がとても素敵。
    つーか、素敵、としか表現できない自分の語彙力のなさにうんざりするけど…。ただの髪型の説明なのに、そこに彼女を表す全てがあるような、そんな言葉の豊かさにうっとりする。
    ノブさんの店でくらがりに身を浸してみたいなあ。
    衣装係さんの誰も知らない恋の話、も哀しい。
    百科事典の少女や兎夫人など、どこか死の影が消えない印象だけど、哀しくはあるけど、暗さはなくて、死をも飲み込んで残る品物たちの佇まいにそっと手をのばしたくなる。

  • まるで幻を見ているかのような作品。
    なんだろう、確実に物悲しいはずなのに
    そこに陰鬱は漂わないんだよ。

    主人公である私はアーケードで
    配送の仕事をしているのです。
    そんな彼女はある事件により
    最愛の父を亡くした天涯孤独の女性です。

    物語は、そんな彼女を軸とした
    物語。
    死が漂っているけれども
    陰鬱ではないこの不思議さ。
    そして、何とも言えない雰囲気。

    その雰囲気に魅入られて読んでしまいました。
    悪い本だ、まったく。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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