- Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062180320
感想・レビュー・書評
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平野さんの小説。しっかり文を読んだのは初めてかもしれない。今回は飛ばさずに読めた気がする。
分人の下りは新書で読んでいたから、結構すんなり入ってきた。それによって救われる様子も登場人物の描写でわかる。
それよりも、生きていることの特異性の方が今回は心に残った。考えるとブラックホールに落ちていく感覚になる。正直読み返したいと思う本ではないけど、20年経って自分が歳を取って、この本ともう一度向き合ったときに、その感覚が少し変わって感じるのか、確かめてみたい本だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平野啓一郎の作品を読んだのは、マチネにの終わりに続いて2作目。
復生後、一度死ぬまでの人生を振り返りながら、夫として、父として、誠実に生きようとする主人公の男性に心を打たれた。
作品の中で出てきた「分人」という概念を詳しく知りたいと思った。講談社現代新書から出ている著者の本も読んでみたい。
また、一度きりの人生を生きるとはどういうことか、死ぬことはどういうことか、考えるきっかけになった。 -
なかなか読み終わらなかった。
30幕のp319〜p338だけ面白かった。
まず典型的な現代人である主人公に共感ができない。人の意見はなかなか受け入れない頑固だし、そのくせ偏ってるし、固定概念に囚われてる。良い父親じゃないと、仕事をちゃんとしないと、親孝行しないと、良い家に住まないと。疲労で手に入れたものこそ本物の幸福だ、と思ってる。でもそれが現代の日本人の大多数なのだろう。そういう考えを持ちがちな人には響く作品だと思う。
作者は現代社会の過労によって望まぬ死がうまれていて、かつ誰もがその可能性があること、死によって起きる周りの影響がどれだけ大きいか、そもそも死とは無になることではないかと言おうとしたのではないかと解釈した。
しかし主人公とその周りの人達のまわりくどい言い回しや推測、憶測が長くて何度も飽きた。その丁寧すぎるほどの描写によってより鮮明にイメージできたというのはあるかもしれないが、思っていることがあるならさっさと言い合え!と思ってしまった。
美術館で参考作品として挙げられていたので読んでみた。特に分人の概念などは、作品と作家の意図をより理解することに繋がったので好みではなかったが結果的には読んでよかった。
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「マチネの終わりに」に続き2作目。死人が生き返るとか設定が安っぽく見えてしまって最初は大丈夫かなと思いながら読んでいたが、いつの間にかはまってしまい、クライマックスで泣きそうになった。「マチネ」もそうだったが、この著者は物語の終わりを最も感動の高まる瞬間にもってくる事で全てを帳消しにするというか、その終わる一瞬の感情の高まりにすべてを託しているように思う。感動の力を信じている、というか。そのこだわりは、復生者の一人が言っていた「人生の終わり方が人生をすべて象徴するわけではないが、終わり方が残された人に大きなインパクトを残す事は認めざるを得ない」というような趣旨の発言と繋がる考え方なのではないかと思う。
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平野啓一郎が示す分人に関しての小説。著書で説明していた分人を小説で説明することにより、より分人の定義がわかりやすかった。本編の主人公は自殺の理由で苦悩するが、その苦悩が誰にでもあてはまる、理想の自分と現実の自分とのギャップ、愛する人に良く見られたい感情などとても共感できる。人間関係で悩んだとき、この考えができれば少し心が楽になるかもしれない。
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ちょっとメロドラマチックで入り込めないところもあったけど、やっぱり巧い。えっ、こんな設定にして、この先どうするの? と思うようなところを巧く処理していく。読み終わって大局的に見てみると、案外シンプルなストーリーだ。だがそれをそう思わせないところが細部の妙か。
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ともすれば陰鬱になりそうな生死感を伴った物語をミステリー仕立てのシンプルな構成でぐいぐい読ませる傑作、最後の「分人」を用いた謎解きが圧巻だ。
しかしながら著者の「ドーン」で提示された「個人」(indiviual)という分割不可能な唯一無二の人格」ではなく、相対する人との関係性ごとに複数の分割可能な「分人」(dividual)から成るというという考え方がそもそも日本人を妙に言い当てていて、これこそが「個人主義」の発達を阻害しているように思うのだ。
その意味ではフェイスブックなどソーシャルメディアが日本人の「分人」を統合して「個人」を形成し、いわゆる「個人主義を」発達させるのではするのでは、思っていたりする訳で。。。
話がずれてしまいましたが、人間の生と死そして愛を今までに無かった視点で切り込んだ素晴らしい小説であることは間違いありません。 -
「誰かといる時の愛せる自分を足場に生きる」…心に留めておきたい。ほかにも「誰も苦悩する権利を否定することはできない」「人生には同じことが何度も起きるわけじゃない、その1回に何をするのか、それがその人」小説という形を借りた、生きづらい時の指南書のよう。「今にも消え入ろうとしている人間に対しても、自然はこんなにも惜しみなく美しい」もちろん小説的な文章も。
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読み終えて、まず、家族を大事にしなきゃと。そしてこの命を懸命にして生きなきゃと。
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初・平野啓一郎。たまたま家族が不在の時期に読み、子どもの学校の先生の突然の訃報が届いたりしたこともあって、いろいろ考えさせられた。「生きる」よりとにかく「死なない」ことが大切なんだなあ、と。自分の達成感とかそういうもののために「生きる」んじゃなく、家族や親しい人のために「死なない」こと。では、「死なない」ために、生きていくこのめんどくささ、むなしさをどう乗り越えていけばいいのか。そのあたりを平野さんには今後描いてもらいたいです。
「分人」という考え方自体は、私も普通に実践していたものと近かったため、とくに目新しさは感じなかったけれど、これを知り生きるのが楽になる読者がいるならば、それは素晴らしいことだと思う。
でも、なんといっても、本書でいちばん印象的だったのは劇画チックな文体。頻出する!マークとか、もう恐怖新聞?つのだじろう??っていう勢いで、しかし、そのまがまがしさがSF的な設定と妙にマッチして、いやいやこういのもありなんだろうなあと納得してしまう力わざ。他の作品を読んでいないから、メッセージを広く伝えるためにあえてこうしているのか、これが平野調なのかはわからないのだけれども。-
ちょっと興味はありながらも、この著者ってわたしも読んだことがないんですが、おもしろそうですね。でも、読んだら暗くなるかしら? meguyam...ちょっと興味はありながらも、この著者ってわたしも読んだことがないんですが、おもしろそうですね。でも、読んだら暗くなるかしら? meguyamaさんおっしゃる「今後書いてもらいたい」ものを、わたしも読みたいと思いました。2014/04/04
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ミステリみたいな要素もあって、なかなかおもしろかったです。暗くなるっていうより、考えさせられる感じかな?ミステリみたいな要素もあって、なかなかおもしろかったです。暗くなるっていうより、考えさせられる感じかな?2014/04/04
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