あなたにだけわかること

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 270
感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183383

感想・レビュー・書評

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  • 人生いろいろ

  • この物語は嫌いと答えるひとのが多いと思う。けど、わたしは始めから吸い込まれ、終わった時には好きだなって思った。

    なにもかもがスッキリしない物語。曖昧な。肝心な描写を避けていて、で、結局どうなったの? の連鎖的な。5歳のときに駿は母親に連れられ線路を超えた先にある夏の家を度々訪れることになる。駿の母は夏の父に猛烈に恋をしていた。夏の母は他界しており、駿の父は外科医だった。
    それから場面は小学生中学年になり、夏はすでに不良と呼ばれ大学生の彼氏がいた。駿はガリ勉的な子。
    さらに中学年になり、高校、大学、結婚…と進んで行くのだけど、どうもすべてが釈然としないのだ。それが嫌な感じではなく妙な心地よさがあるからまた厄介で。断言的なことがない。
    たとえば夏が小学生のときから付き合っていて、愛し合う行為をしていた相手の大学生との別れまでの詳細とか、処女喪失を捧げ愛しくてしかたなかった千秋に他ならぬ駿とセックスをしたと嘘を吐いてわざと恨まれるような別れ方をしたくせに、偶然、や、必然かもしれない再開時に婚約者を棄てて千秋にアプローチしたところ、そこから場面は一気に飛び結婚までこぎつけたその空白。さらには結婚生活を飛ばして娘がいてさらには千秋には他の女がいること、とか。
    その微妙に曖昧で、けど計算しつくされた完璧な曖昧加減が実にわたし好み。
    駿と夏の決して愛ではない、むしろ怯むくらいの繋がりが物悲しかったな。

  • 駿と夏。

    ごめんなさい。・・・誰に?

    期待値が大きかったという事もあるのだろうけれど、好きになれず。

    ただ、最近、読み終わって表紙を見た時に、
    「あゝ、この題名しかないよな。」という感動がある。
    この本もそうだった。救いだわ。

  • 交わるようで、交わらない。
    だけど、ほんのちょっとのかかわりが続いていく。
    昔の記憶、それが
    「あなたにだけわかること」となって
    二人をつないでいく。
    それは、わずらわしかったり、奇妙だったり、
    心の支えなんかじゃないのに、
    細々と繋がっている。

    現実的には、人のつながりってこんな程度かもしれない、
    華々しいドラマなんてなくて…
    淡々とただ過ぎていく昔の記憶なのかも。

    速読系ですが、じんわりと響いてくる設定です。

  • 何だか辛い話や、、、

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    「直木賞受賞作『切羽へ』をはじめ、大人の恋愛と一筋縄ではいかない関係を描いて独自の魅惑的な小説世界を展開する著者が、男と女の「愛ではないけれど、愛よりもかけがえのない関係」を描く長編小説。
    桐生駿と野田夏が初めて出会ったのは共に5歳のとき。夏の父に恋をした駿の母が、密会のため息子を連れて夏の家に通ったからだ。親同士の情事の間、それとは知らず階下で待っていた幼い二人は、やがて親たちの関係を知る。以来、別々の人生を歩み始めた二人は、互いに「できれば思い出したくない相手」と感じながらも、なぜか人生の曲がり角ごとに出会ってしまう。まるで、互いの恋愛の証言者のように・・・。それぞれおろかな恋愛を重ねながら、人生における愛のどうしようもなさを受け入れていく男女の関係を描く長編小説。 」

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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