- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062188043
作品紹介・あらすじ
これは作家としての遺言である――。創作歴60年の筒井康隆が満を持して執筆した、『文学部唯野教授』実践篇とも言うべき一冊。
作家の書くものに必ず生じる「凄味」とは? 「色気」の漂う作品、人物、文章とは? 作家が恐れてはならない「揺蕩」とは?
「小説」という形式の中で、読者の想像力を遥かに超える数々の手法と技術を試してきた筒井康隆だからこそ書ける、21世紀の“文章読本”。豊富な引用を元に、小説の書き方・読み方を直伝する贅沢な指南書です。
小説界の巨人・筒井康隆が初めて明かす、目から鱗の全く新しい小説作法!
感想・レビュー・書評
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小説を書く上の極意と掟の書。本書の極意と掟を読み込んだところで、身につくわけではないが、筒井康隆さんのような小説家に近づく手がかりにはなる。小説に限らず、言葉を使って表現する全ての人が読んでも損はしない。文学、哲学、科学などの知識が豊富で、幅広い分野の一般常識が頭の中にあるのだろう。本棚に置いておきたい本の一つ。
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“これは、作家としての遺言”
『時をかける少女』『家族八景』等で知られる日本屈指の文豪、筒井康隆が送る正しき文の書き方作法。小説とはいかにして成り立つのか。自身の経験談も含め、多岐に渡る項目に分けて丁寧に語られる珠玉の指南書。
・凄み
凄みがあってこその小説。それは、読み手と相容れないかもしれないという不安感が与えてくれるもの。不条理感をくすぐるような独特の感覚。作者自身から滲み出る唯一無二のその凄みを存分に示すこと。
・語尾
「です、ます」なのか、あるいは「である、だろう」。文章を構築する上で、全く同じ語尾を繰り返さないことは重要。ここを疎かにしてしまえば、その文は一挙に陳腐な、子供の作文の様になってしまう。
・羅列
名詞の羅列は状況を表現するポピュラーで効果的な描写法でありながら、一方で実験的な側面にも用いられる。人名の羅列のみで一篇の作品を書いたこともある筆者だから分かる、その苦労。取扱注意。
以上の他にも「表題」「視点」「諧謔」など、読んでいると当然のようで、でも目から鱗の創作技術も。場合によっては実際の文章を引き合いに出して説明してくれるという、実に分かりやすい説明。最後を締めくくる愚痴交じりの作家としての不幸も面白い。全ての作者と読者、読んで損なし。
そんな一冊。 -
唸ったり頷いたり呻いたりしながら読んでました。物書きをする人ももちろんですが、小説好きの人と筒井御大のファンの人はとても面白く読めそうです。小説ってすごい……、文章だけでこんなにも色んな表現を試した人がたくさんいたんだ……、と無知に打ちのめされながらも圧倒されました。読みたい本がまたたくさん増えてしまった。もっと色々読んで勉強せねばなぁ。
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二字熟語をキーワードに、筒井康隆氏が作家としての自身の心構えと掟を説く。本書を読むと彼が読書家で勉強家かが分かる。そして心から小説を愛し、作者として時には読者として作品へ遊び心や技法をふんだんに散りばめ、実験と試行錯誤を繰り返す様が伺える。
小説作品で見せる彼とはまた違う一面が見られる著書である。 -
小説にまつわるエッセイだが、学ぶことが多い一冊。
決してノウハウ本のように「こう書かねばならない」とは語られないので、型にはまらない自由さを教えられる。
私自身、小説とはかくも自由であったのか、と気が楽になった。
相性はあるだろうが、小説を書きたい人間にそっとお勧めしたい一冊。 -
筒井康隆さん。大変に失礼ですが、「おお、まだこの人、生きてるんだよな!」と、本屋さんで思いました。
何しろ、30年くらい前か、僕が筒井康隆さんをよく読んでいたころ。その頃にもうベテラン作家の雰囲気がありましたから。
「富豪刑事」「家族八景」「七瀬ふたたび」「霊長類南へ」「大いなる助走」「農協月へゆく」「ウィークエンド・シャッフル」「俗物図鑑」…
エグイけど、とにかく面白い。そんな印象。
1934年生まれの、79歳なんですね。久しぶりに新刊を読みました。気軽に楽しみました。
気軽に読める、エッセイみたいなものです。
題名の通り、「小説の書き方」という体裁を取ってはいます。
でも、受け取り側としては、「小説の愉しみ方」と捉えて問題ないエッセイ集です。
「序言」「凄味」「色気」「破綻」「表題」「会話」…などなど2文字の小題について、筒井康隆さんが思い浮かぶことを、「例えばこの人のこんな小説だと、こういう感じだよね」と、書き綴っています。
一章一章はとっても短くて、読み易い。
何かと合間合間に、ちょこちょこ読んでも大丈夫。
肩の凝らない楽しみ方ができる、コンセプト・エッセイ集だと言って良いと思います。
で、博学というか、よく小説読んでますよね。そりゃ。79歳、さすがです。面白かった。
何しろ、夏目漱石さんも池波正太郎さんも「悪の教典」もプルーストさんも川上弘美さんも。
カフカもガルシア=マルケスも村上春樹も、何故か映画監督のジャック・リヴェットもウディ・アレンも。
大江健三郎、ヘミングウェイ、宮本輝、町田康、ハメット、チャンドラーから阿部和重まで。
ごった煮、一律横並び。
「色んな小説あるよね、面白いよね、アレのあそこンところがね。それに比べてこっちでは…」
という、エッセイ。
くらくら目がくらむくらい、読んでみたくなるし、楽しくなってきます。
そして、ソコはソレ、筒井康隆さん。いちばん多く触れられている小説家は、ご本人さんですね。にやにやしちゃいます。自作解説。
「まだまだ読んでない本、読みたい本がいっぱいあるなあ」と、わくわくさせてくれる本。
丸谷才一さんの「快楽としてのミステリー」もそうでしたが、こんな味わいも、読書の愉しみだなあ、と。
するするするっと読了しました。
文章、ケレン、遊び。強烈さと真摯さ。傲慢な身振りと、垣間見える謙虚さ。肩の力の抜け具合。
79歳、まだまだ書いてほしいですね。 -
図書館で借りたが、購入しようと思う
知らないジャンルへの読書案内にもなりそう -
小説を書く上での極意をテーマ別に記したエッセイ。同時に小説をより深く楽しく読むことができる書。国内外の作家の代表例の幅広さと引用に懐の深さを感じる。単なるノウハウではなく文学評論の趣もある永遠の良書となるだろう。