なぜなら雨が降ったから

著者 :
  • 講談社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062191265

作品紹介・あらすじ

野崎は高校を卒業し、アパートの三○二号室で一人暮らしを始めた。ある雨の日、「Yuregi Detective Office」と看板がかけられた二〇二号室の前で女の人が一人で煙草を吸っていた。
〈探偵さんか? それとも、依頼人さん?〉
 野崎はつい一言、
「あの、もしかしてここの事務所の方ですか」
 と尋ねた。
「そうよ」
「探偵さん……ということですか?」
「そうなるわね」
「すごいですねえ」
 何がすごいのかは分からないが、珍しい職業というものは、その存在だけで何やらすごいように思えるものだ。
「あの。探偵さんってことは、推理とか、するんですか?」
 野崎は、冗談めいた質問を投げた。探偵ってどんなお仕事なんですか、という質問でもよかった。少々掘りさげたかったのである。
 問いを受けた彼女は、煙をくゆらせつつ、答えた。
「まあね」
 そして、なんでもない調子でつけ加えた。
「あなた、もしかして最近、新しく靴を買ったんじゃない?」

なんとゆかしき“ホームズ流!”
かくして大学生の野崎と、雨女探偵・揺木茶々子(ゆれぎちゃちゃこ)の探偵活動がはじまる。
読むと中毒になるモリカワミステリ、どうぞご堪能あれ。

感想・レビュー・書評

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  •  大学生の野崎と、同じアパートに住み事務所も構える揺木探偵が織りなす連作短編集。20代半ば(のようにみえる)の揺木探偵は雨女という設定なので、作中はほとんど雨模様。そしてどの事件でも雨が一役はたすことになります。陰惨な事件もあるのですが、筆致が軽やかなので、読んでいて暗い気分になりません。4つ目に収録されている『雪女探偵』が一番好きかも。

  • 大学入学のため一人暮らしを始めた野崎は同じ下宿先で探偵事務所を開く、揺木茶々子と出会う。
    彼女と出会うときはいつも雨天。
    彼女は雨女だったのだ。
    いつの間にか助手となった野崎。
    彼らの前に今日も雨の中、事件がおきる。

    真実はどうなの?というモヤモヤがダメで、しばらく放置してしまった。
    雨が降ったことで事件を解決する糸口が現れるのは面白いんだけど。
    今日は最後までいっきに読む。
    「なぜなら、雨が降ったから」
    新幹線も止まるような大雨だったね。

  • 一歩家を出ると、天気予報などガン無視して雨の降る雨女な探偵もの。
    ぜひ渇水地域の貯水池付近に行ってあげてください。

    明らかに客がこなさそうで大概暇してる気がするし、べつに依頼受けずに動いたりしてるので、どうやって稼いでいるのかわりと謎。
    ありがちな犬猫探しもできそうでもないし…

    面白かったです。
    バイトとして正式に雇ってあげてください、かわいそうなんで。

  • 《なぜなら、天才モリカワが書いたから》

    すべての事件で雨が降っている。
    もちろん、解決するのは探偵の仕事だ。
    彼女は天を指し言う。
    「なぜなら、雨が降ったから」

    このセリフがすごい。
    ミステリだったら、犯人の失言とか、失策とか、アリバイとか、暗号とか。
    とにかくいろいろなことから事件の解決を試みる探偵がすべて「雨が降った」ことを背景に論理を紡ぎ真実を明らかにしていく。

    「なんでわざわざ…」とか思ったり、結局探偵(一部助手)の推量で真実はどうだったのかと思ったりする部分もあったけど、そこらへんは死人に口無し、真実は誰にもわからない、ということで。
    これから雨の日には不思議な謎を探してしまいそうになりそう、そんな一冊。

  • 森川先生は”探偵”を書きたいんだろうなぁ

  • 「なぜなら、雨が降ったから」

    「ま、詩的にいうなら、宇宙のしわざね。私が探偵するときに雨が降るんじゃない。雨が降るときに私が探偵するんでもない。宇宙が雨を降らし、同時に、私に探偵させるのよ。突き詰めると、この世の中に許される主語はただ一つ、宇宙だけ。お分かり?」

    「…これもまた、宇宙のしわざなの。宇宙が一つの大きな主語となり、何かをどうかさせる。そして、別の何かをどうかさせる。結果、人が死ぬこともあるわ」

    「原因が同時に結果であり、結果が同時に原因。因果関係ではなく包括関係でもなく、相関関係ね。」

    「たとえば、イコールのキーというものがあるわね、野崎君。電卓で計算をするのなら、あのキーを押すのは結果を導くための手続きになるんだけど、本当は違う。なぜなら、イコールはそもそも、方程式の中枢だからよ。方程式の左辺と右辺は、この世界に同時に現れて、同時に消える。どうかな、分かるかな?」

    「それにしても、本当、子供は頭が柔らかいですね ー ぼくにはあんな方法、思いつきませんよ」
    「そうね。それに比べて、『子供は頭が柔らかいですね』というステレオタイプないい回しは、いかにも、頭カチコチって感じがするわね。どうかしら」

    「…雲から水滴が落ちるとき、人々は、雨だ雨だと騒ぐ。しかし水滴を落としている雲は、人々がうれしくて騒いでいるのか、悲しくて騒いでいるのか、分からないの。同じように人々は、水滴を落とすことが、雲にとってうれしいことなのか悲しいことなのか、どうやっても、分からないのね」

  • かなり強引な論法…。同じアパートに探偵がいるっておもしろそう。

  • 森川作品を立て続けに買ってしまった。
    買いすぎただけでなく、買いかぶり過ぎたかもしれない…
    キャラで押すミステリなはずで、押しも弱くはないが、ミステリとの互換性がそこまで高くないように感じた。
    少し無理している感が否めない。
    面白くないわけではないが、『キャットフード』シリーズくらいの改心の出来を求める。
    3-

  • 雨女で探偵の揺木茶々子が的確な推理を展開する物語だが、同じアパートに住む野崎圭人のからみか面白かった.「雨天決行」で連続放火事件現場に落ちていた口紅棒の意味を的確に推理する過程が良い.その他の4篇も、推理の展開が楽しめる.

  • 野崎くんの日常を見抜くところと雪女探偵の章は面白かったが、それ以外は可もなく不可もなくといった感じ。雨女探偵の設定は好きなので、上手いこと完成させて欲しかった。

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著者プロフィール

1984年、香川県生まれ。京都大学大学院理学研究科修士課程修了。京都大学推理小説研究会出身。2010年『キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人』(講談社BOX)でデビュー。〈名探偵三途川理〉シリーズは他に『スノーホワイト』『踊る人形』(以上、講談社文庫)、『ワスレロモノ』『トランプソルジャーズ』(講談社タイガ)。近著に『そのナイフでは殺せない』(光文社)。

「2020年 『死者と言葉を交わすなかれ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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