こぼれ落ちて季節は

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 294
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062191425

感想・レビュー・書評

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  • カンバラクニエさんの表紙に惹かれ、手に取ってみた。どんな内容かはよく知らず、でも加藤千恵さんなら間違いないだろうと思って読み始めたら、予想以上にハマった。彼女の作品はいつもそうなのだけど…やめられなくなり一気読み。
    連作短編集なのだけれど、それぞれの話に二人の語り手が存在する。後輩/先輩、姉/妹、高校時代の同級生の男/女、などなど。背中合わせのストーリーは、同じ場面でも語り手を変えるとこんなにも状況の捉え方が異なるのかとぎょっとする。相手への嫉妬。報われない恋心。諦め。虚栄心。裏切り。…こう並べてみるとマイナスの感情ばかりだけど、決して後ろ向きな内容というわけではない。連作短編という形式で、それぞれの登場人物がゆるやかにつながりながら、自分の足元を見据えていく。
    淡々とした文章の加藤作品の読みやすさは相変わらずなのだけど、作品を発表するほどにビターさが増していきますね。その苦さがクセになっています。短編のタイトル「この人かもしれない」、これは「運命の人に出会えたわ」的な恋愛ものなのかと思ったら、全然違いました(汗)自分の年齢的にも、一番この話がほろ苦くて共感できた。男女の関係、一筋縄じゃいかない感じが好きです。
    全体的に、男のたよりなさというかダメっぷりが際立ちました。特に、計算高い女子を「天然」と勘違いし(養殖女子ですか?)翻弄される長谷岡君に「あ~あ」だよ。
    若さゆえの、理想破れての躓きなんかがリアルで、いい年した自分でさえ「うう…」と呻きたくなる。でも、加藤作品のそんなところが好きなんだよね。不毛な恋愛から、何を学び、どう歩んでいくか。「こぼれ落ちて季節は」というタイトルも、うまいなと思いました。

  •  6話からなる連作群像劇。1話ごとに2人の視点別に語られるという手法で、若者たちの恋愛事情を鮮やかに描き出した作品。

          * * * * *

     同じ出来事を共有していても、感じ方はそれぞれ異なること。
     自分の言動に込めた気持ちを相手が正確に理解するのは意外に難しいこと。
     そして人から見た自分と本当の自分には大きな違いがあること。
     そんな、当然でありながら忘れていがちな事実が、この手法によってひときわ浮き彫りにされていました。

     それぞれの一人称で綴られる、個人レベルでは決して小さくない出来事についての気持ち。共感してしまうところが多い作品でした。

  • フリーペーパーを作るサークルに所属しているメンバー、その友人や周りの人たちなどの連作短編。

    一篇のなかに二人の語り手がいて
    同じ場面が別の視点で繰り返されたり、
    語りだしの言葉が同じだったりと、構成が凝っていました。


    加藤さんの描く世界は、やはりどことなく切ない。
    切ないだけで終わらず、
    冷静に真理をついている気がします。


    特に『向こう側で彼女は笑う』が女性としては
    かなり共感できた。


    いくら仲が良くても、友人と自分を比べてしまうこともあるし
    言えないこともたくさんある。


    なんだかやるせないけど女子の人間関係ってそういうところがあるのも現実。


    最初の『友達のふり』と最後の『波の中で』は
    愛と那美香という同じ人物が語り手なんだけど、
    いい意味でも悪い意味でも、大人になったなーと感じた。

    月日の長い間を感じる構成になっていました。



    他の短編でも、その後がちらちらとわかったり
    物切れじゃなく、続いてる感じがよかった。

  • 二人ずつの視点から進んでいく短編集。
    半日で一気読み。とても読みやすく、好きでした。

    大学メンバーより、大人メンバーのその後の方が気になってしまいましたが(笑)梓さんの旦那はどうなったのだろう…

    輝いていたあの頃も、あの頃に思い描いていた未来と違う今も、明るい未来を想像出来ない未来も、全部、今の積み重ねですね。
    全部全部愛しく思えたらいいなぁ。

  • こういう形式の小説は初めて。
    あるシーンについて登場人物2人のそれぞれの視点から描かれていて、次は繋がりのある人に次々に焦点がズレながら一周する。
    つながりを持った短編小説のようで長編小説。
    みんな他人に憧れを抱きながら逆に誰かから憧れられて、キラキラして見えるあの人にも見えないコンプレックスとか事情とかもがいてるところがあって、自分の身近でこの本を実話で描いてくれたら絶対に読みたい。
    他人から見たキラキラした部分を自分でも感じられたらいいのに。

  • それぞれの思いを抱えて、
    見えない相手の気持ちを想像して
    想像したって正解はないのに
    想って想って。

  • 忘れかけていた気持ちを、思い出させてもらいました。

  • 大好きな加藤千恵さんの小説。
    ひとつのお話から、また誰かのひとつのお話へ繋がっている連作形式。
    みんな心の中に色々な気持ちを持っている、
    何がしあわせなのかは、ひとそれぞれ。

著者プロフィール

1983年、北海道生まれ。歌人・小説家。立教大学文学部日本文学科卒業。2001年、短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビュー。2009年、『ハニー ビター ハニー』で小説家としてデビュー。その他、詩やエッセイなど様々な分野で活躍。著書に『あかねさす――新古今恋物語』『真夜中の果物』『こぼれ落ちて季節は』『この街でわたしたちは』『消えていく日に』『そして旅にいる』『マッチング!』などがある。

「2023年 『この場所であなたの名前を呼んだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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