- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062199650
感想・レビュー・書評
-
人間は結局何も学ばずに絶滅するという話をAIやクローンの視点で明るく語るSF。数千年という時間軸で物語が展開してゆくのだが、語り手が数百年も生きる神のような存在だったりするので、数年程度の感覚に陥る。感覚というのは相対的なものだと変なところに納得してしまった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
不思議な文体、世界観で読み手を惹きつける
-
きっとこの小説は、最初の一編「形見」が、最初はそれだけで完結するだったはずが、植物が枝葉を伸ばすように発展していったのだと思う。それがここまで壮大な世界観を持ち得たとは、、、まずそれに脱帽。
人工知能とクローン技術が作り出す、生々しい玩具のような、神話世界。 -
この物語はありとあらゆる角度、分野から考察することが出来る。人間を作る工場はかつての人間ではいられなくなった人間の試行錯誤の結果なのである。それは現実世界においてまったく有り得ないことではない。現に試験管ベビーや体外受精など、少しずつではあるが人間離れした業が繰り出されているのである。人間が生き残るための便宜的な措置。それが人間そのものの定義を覆してしまうという何とも皮肉な物語がそこにはあった。また、人工知能についても言及している。人間に気づかれないための思考をする人工知能、人間に寄生する人工知能とはすごい発想だなと思った。話が戻るが、この物語において登場する言葉は現実世界においての意味合いと少しずつズレている。母は人間であるが人間ではない。それは見守りをするためのプログラムと言えよう。大きな母は母の中の母。母を作る中で時たま現れる異種であるが、それが人間に好かれるのである。また物語の中で数千年前の人類について語られる描写があったがそれは正しく現代の私たちの目先にあるカタストロフの時代に当たるのではないかと思った。人間のこれからの末について考えさせられる物語だった。
-
わたしはわたしと異質なものを受け入れられるのか。
異質なものを受け入れ、平和に暮らすことは幸福なことなのか。
愛と憎しみは、人間を滅亡させるものか、生み出すものか。
いくつかの問いと答えが長い年月をかけて、たくさんの人々を廻り続ける物語。
行きつ戻りつしながらも、先が気になってどんどん読み進めてしまう。楽しかった! -
滅びつつある人類の世界にポンと放り込まれて、なんだろうなんだろうと混乱しつつも、それでもその世界を受け入れ始めたところで、母のことや、得意な人間のことや、大きな母のことや、見守りのことなどの種明かしが始まる。
手塚治虫の火の鳥ワールドを久しぶりに思い出せたのは良かった。
でも、なんだろう重要ではないのだけど、人の名前、リエンとかニーシャとかノアとかマリアとか誰が誰だか分からなくなって、前のページの方を探すのだが、そういう人物がいることもあれば、そもそも存在していないこともあり、えっつこの子誰だっけと迷子状態にちょくちょくなるのは気が散ってよろしくなかったな。 -
はじめの短編3つを読んで、話がよくわからず返却期限も近いし読むのをやめようかと思ったけど、4つ目あたりから世界観に慣れてきて、どんどん面白くなってきた。むしろ、好きな話だった。クローン、人工知能、神様、絶滅、哀しみ、愛、希望。
-
2回続けて読みました。
-
短編が地続きの物語になっている。
ものすごくよく考えられている。
登場人物たちのひとことが染みる。作者自身が普段思っていること、生きづらさのようなものを感じた。
一回読んだだけではまだ深く咀嚼できていないような感じがする。 -
バスの車内3時間半で読了。川上弘美ということで読んでみました。文章は平易で透明感あって美しい。だけど、事前情報ゼロだったからか、えー!こういう話?!ってびっくり。SFというかファンタジーというか、、人類というか物語に、なんだか傲慢さというか、怒りというか、諦めというか、虚しさを感じてしまいました。人間の想像力ってほんと凄いなぁ。不思議な物語。