罪の声

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199834

感想・レビュー・書評

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  • 多くの謎を残したまま未解決となった「グリコ・森永事件」モデルにしたフィクション。

    「グリコ・森永事件」を断片的にしか覚えていなかったので、どこまでが史実に基づいているのかわからなくなるくらい、よくもまあこんな着想を・・・と感嘆する。

    確かに、子供の声がこの犯罪に使用されていたし、こんなの言わされておかしいと思わないのかな?と話したような記憶がある。

    犯罪に加担させられた子供がそれを覚えていたら、この小説に書かれていたような人生だったかもと思うと、今さらながらゾッとする。

    30年以上経って、こんなにスルスルと新事実が出てくるわけがないと思いつつも、その年月を経てこそ、ずっと心のどこかにひっかかっていたことを取材などをきっかけに吐き出すということもあるかもしれないと思ったり。

    小説の最後の最後で、少しだけホッとできたが、京都でテーラーを営む曽根俊也のように平凡な人生を歩めることの方が稀な気がして、気持ちが沈む。

    世の中から、子供の尊厳が踏みにじられることだけはなくなって欲しいと、いつもながら願わずにはいられない。

  • 前半、イギリスでも「し乃」でも、わざわざ足を運んだにしてはたいした収穫がなく、なんだかなぁと乗らない気分で読んでいたが、中盤からだんだんとその辺りが深堀りとなり、すっかりやられた。

    ごく一般人の曽根俊也と、断られてなんぼの世界で取材をしている阿久津英士とでは、当然ながら関係者へのアプローチの仕方が全然違う。そんな二人が最終的には共に事件の真相へと迫り、立場の違いを越えて不幸や悲しみの向こうに希望を捉えようとしていく姿に涙してしまった。

    読みにくさはあったが、とても良かった。

  • 大きな事件の影で、こんな風に報道されることなく人生を狂わされている人たちがいるんだろう、と考えさせられました。
    ついに真相にたどり着いた記者が、その動機の陳腐さ、覚悟のなさに憤り、長いため息をつく。このシーンが1番印象的でした。言葉にすると道徳みたいになりますが、「なぜ悪いことをしちゃダメなのか」その一端がここにあるんじゃないだろうか、と。

  • グリコ・森永事件をモチーフにしたフィクション。当時学生だった私は『キツネ目の男』の似顔絵は今でも覚えている。毒を仕込んだお菓子の事は当時、世の中を震撼させていました。結局、迷宮入りになってしまったけど なぜ犯人を捕まえる事が出来なかったんだろう?とその後のニュースなどで思っていました。
    この小説を読み終えよく考えられてるなぁと もしかしたら...って気がしないでもないです。このテープの声の子供達は内容と同じように もしかしたら自分の声かと思いながら生きてゆくのはどんな思いなのか想像も出来ないが 巻き込んだ大人達の罪はとても大きいと思います。
    ラストは救われる思いがした。

  • 初読み作家。
    「グリコ・森永事件」をモデルとした作品。
    事件から31年経ち、新聞社の企画として事件の取材に当たる新聞記者の阿久津。身代金受渡しに使われた子供の声が、自分のものだと知ってしまった曽根。違う出発点からの目的、そしてスタートだったが、事件を追うほどに線が繋がっていく・・・
    次々と本当の事件の真実が明らかになっていくようで、どこまでが実話でどこからがフィクションなのかが分からなくなる。加害者側の親族という切り口も、複雑な感情を丁寧に描かれていて面白かった。
    実際のテープの子供はどうしているのだろうかと考えると、何も知らない方が幸せなのかなとも思ってしまう。

  • あの事件の子供の声にフォーカスした物語。

    確かに紐解かれはするんだけど、もう一つのキツネ目の男については触れるんだけどあくまで進行上って関わり方。

    あまり深くならないままエピローグが来て「ええっ!それだけ?」と。

    センセーショナルな事件でテープもモンタージュも有名ではあっただけになんか物足りなさはあったかな。

    グリコ・森永事件はフェイクな名前にするのにハイネケンはそのまま使うのね?

  • グリコ森永事件はあったのは知っているけど、内容はあまりよく知らなかったのですが、ネットで調べてみると、ほぼほぼこの物語と同じで、ゾッとしました。昭和後半に起こったなんとも言えない不思議でかつ恐るべき、そして劇場型犯罪と称される事件。現実として、テープの声の子供達は生きているとしたら、現在何を思って生きているのか。この物語では明と暗に分かれてはいるが、果たして…… 実在の事件を知れば知るほどこの物語がノンフィクションなのではと思ってしまいました。映画版がアマゾンのPrime Videoで配信されていたので早速、視聴しました。この小説を142分という時間内にうまくまとめていて、違和感なく見れました。

  • 記者の心情が転換しました。犯人を追うことから遺族を追うことへ。さらに遺族の未来を記事に記すことを宿命と定義します。それはただのエゴにも思えますが、心を打たれない人はいないでしょう。まあ、泣きますよね。
    不幸を詳細に描写することで、読み手の幸福を刺激します。普通とは? 家族とは? です。人生を振り返って、自身の幸福度を測ってしまいます。

  • 久しぶりに重厚な本格物を読んだ。
    グリコ・森永事件はよくは覚えていないが世間が大騒ぎになったのは印象にある。愉快犯という言葉を初めて聞いたのもその時だった。

    その実際の事件を軸に犯行に使われたテープの声の子供達という切り口で書かれている。
    確かに実際、テープに声を入れた子供達は実在した訳だし、その後その子供達がどういう人生を送ったかは興味深い。

    テーラーを営む曽根は父の遺品の中から幼ない自分の声が吹き込まれたテープを発見する。それがかつて「ギン萬事件」に使われたものと知り、ショックを受ける。
    大日新聞の記者阿久津は年末企画で過去の「ギン萬事件」を調査する事になりオランダでハイネケン社長が誘拐された事件との絡みを追い始める。

    この二人の視点が交互に書かれて次第に事件の全貌が明らかになって行く。

    犯人探しと言うより、テープの声の子供達がその後どうなったのかがメインに語られて行く。
    曽根自身は事件を全く覚えていず、普通に成人して父の後を継ぎ、結婚もして子供もいる。
    しかしこの事件に巻き込まれた他の子供達はどうしているのか?
    もう一つの家族の悲惨な状況には本当に胸が痛む。
    知らないうちに父の、夫の犯罪に巻き込まれ、仲間割れから夜逃げせざるを得なくなり、どんどん落ちて行く。
    将来の夢も希望も絶たれ殺されてしまった姉。母を捨てて逃げなければならなかった少年。

    事件の大掛かりで大騒ぎになった派手さとは裏腹な犯人達のどうしようもないいい加減さや分裂が明らかになって行く。

    最後少年と母が再会出来たのは本当に救いだった。
    そして曽根自身にも驚くべき事実が待っている。

    事実とフィクションを綺麗に織り上げた作者の力量に感服した。実際の「グリコ・森永事件」の犯人達や子供達はその後どうしているのだろうか?
    余韻も深い……

  • 有名なグリコ森永事件。
    キツネ目の男のイラストが怖かった記憶が。
    あの事件にこんな背景があったのかも知れないと想像してやりきれなくなった。

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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