罪の声

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199834

感想・レビュー・書評

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  • グリコ・森永事件がモデルになっている作品。自宅から事件で使用されたテープと関連のノートを発見し、自分と事件との関わりを調べ始める俊也と、文化部の記者でありながらひょんなことから事件を調べ始める阿久津。二人は徐々に事件の全貌を明らかにしていく。実際の事件のことはほとんど知らないが、まるでノンフィクションのようだった。子どもは、生まれてくる環境を選べない。加害者の関係者だったことで、将来を奪われた子ども、毒入りの菓子を手に取るかもしれなかった子ども。どちらも、だれかのかけがえのないものであり、憤りを感じずにはいられない。一方、犯人たちの衝動性や、時代背景による勢いみたいなものも、自分にはないもので、なんとはなしに、羨ましさみたいなものもあった。

  • 昭和を揺るがした劇場型犯罪・グリコ森永事件。

    かい人21面相を名乗る犯人グループは、手を替え品を替え、企業を脅し、警察を愚弄し、食の安全を人質に取り、そして闇に消えていった。

    数ある犯人たちの手法で、最も衝撃的だった一つに、子どもの声による恐喝テープがあった。

    父から引き継いだ「テーラー曽根」の看板を掲げる俊也は、父の遺品の中からカセットテープを見つける。
    再生するとそれは紛れもなく自分自身の子どもの頃の声。
    そして、あの事件で使われた、あの声だった。

    子どもの菓子を標的にするだけでなく、犯罪に子どもを利用した犯人たち。

    大日新聞文化部記者の阿久津英士は、イギリスにこの事件の取材で出張する。時効をとっくにすぎた難事件の前に、取材は空振りを繰り返し、デスクからの容赦のない叱責を浴びる日々。
    その中で、長い間闇に埋もれていた事実が少しづつたぐり寄せられる。

    これまでも、グリコ森永事件を題材にした作品があった。
    一橋文哉の「闇に消えた怪人」。
    髙村薫の「レディ・ジョーカー」。

    この複雑怪奇な未解決事件に、「加害者にさせられた子どものその後の人生」というテーマで挑んだ傑作。

    消えない闇、消してはいけない闇に光が当たる。

  • 昭和の未解決事件、グリコ森永事件を忠実になぞりながら、関係者と全貌を描くフィクション。
    読了して心に残るのは、犯罪の影響の大きさでもトリックでもなく、巻き込まれた家族の苦しみ、哀しみ、痛み。
    また、真実に至るまでの難しさ。
    今年最初の読了が、この本でよかった。
    「聡一郎」も「俊也」も、いる。彼らの立場に置かれた人々は現実に存在している。その人たちに、光や救い、温かいものか届いてほしいと思う。

  • 何よりも、ドラマの様なスピード感が印象に残る。
    実際にあったグリコ森永事件を題材としている為か、現在起きている事件を見ているかのような「どうなってしまうんだろう・・・」という好奇心をテンポ良く刺激し、読者の読む手を緩ませない。
    自分が子供の時の声が入ったテープが、過去の大事件の犯人の要求に使われていたらしいという導入が、なんとも現実的な気色悪さを伴っていて、僕は好き。
    万人に勧められる、ミステリーの良書だと思った。

  • 本当に罪を償わなければならない人が守られ、守られなければならない人がひたすら傷つけられる。
    犯罪小説とカテゴライズされるのかもしれないけど、その背景に描かれる理不尽があまりにも悲しくて、だからこそラストでひたすら傷つけられ続けてきた人が、痛みを分け合える人に出会えたことがとにかく嬉しかった。

  • 2017年6月24日読了。グリコ森永事件を題材とし、仮想の話に仕立てた本作はグリコ森永事件を知らなかった私には最初は何のことかわからなかったけど、Wikipediaでグリコ森永事件のことを調べながら読んだら、子どもを巻き込んだ卑劣な事件だったんだなと知った。グリコ森永事件の子どもたちも今もどこかで生きてるはずで、事件のことを知ってるのかわからないけど、出来れば幸せに過ごしていてほしいと願った。

  • 疲れた。テーマが重たいゴリゴリの社会派ミステリーだった。実際の事件だけに、それを物語にするのは大変難しかったと思うが、最後までしっかり読めた。

  • これは面白い!久々に心震える大作でした。事件は加害者や被害者だけでなく、その家族の人生も狂わしてしまう。真実を追求すべきか否か、自分ならどうするだろう?私は追求していくだろうなぁ。真実に背を向けて生きられない、真実を受け止め生きて行くことことが宿命なのだろう。

  • 実在する未解決事件『グリコ森永事件』の史実に沿って、事件の解決までを描いたフィクションの物語。

    世を混乱させた大事件の犯人-自分の身内かもしれない、、、そんな男と事件を追いかける記者。2人の視点から未解決事件が徐々に暴かれていく。

    加害者の家族の目線で色んな立場があり考えさせられる。
    普通に仕事をして普通に暮らしていける。それがどんなに幸せなことなのか胸に響いた。

  • 読みながら事件の真相を、この先を知りたいという気持ちと、悲しく居た堪れない気持ちになりそうだから読みたくないなぁという気持ちと。まぁ結局、前者の気持ちの方が大きいんで後半はあっという間に読んでしまいましたが。
    深く読むとツラくなりそうなので、若干斜め読みしてたかも。

    加害者親族の子供。
    事件に利用された子供。
    読み終わって…
    男の子2人のコントラストが切なく印象的に残ってます。

    最後には一筋の希望が…光が…
    なんてない。苦悩は一生続く。
    何よりも子供を巻き込むことが罪。

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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