- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062209724
作品紹介・あらすじ
10年後、100年後の世界と日本の未来を、ノーベル賞学者と国民栄誉賞棋士、最高の知性を持つ二人がとことん語り合う!
iPS細胞、将棋界とAIといった二人の専門分野に加えて、「ひらめき」「勘」の正体、世界で通用する人材をつくるにはどうするか、人間は不老不死になれるかといった、人類の普遍的なテーマについても熱く討論する。
感想・レビュー・書評
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本著は偉業を成し遂げた、将棋の羽生善治氏とips細胞の山中伸弥氏が、斬新な発想やアイデアといった独創性を生み出す「『無知』の強み」と「直感力」について説く。
山中氏は独創性を生み出す3つのパターンについて次のように述べている。1つ目はアインシュタインのようにもともと天才というパターン。2つ目は他の人も考えているようなことだが、一応自分で思いつく。実験等をしてみて予想していなかったことが起ったときに、それに食らいついていけるかどうか。3つ目は自分も他人も「これができたら素晴らしい」と考えているが、普通は「無理だろう」と諦めるところを誰もやっていないから敢えてチャレンジするというパターン。
重要なのは2つ目のパターンだが、iPS細胞を発見したのは、3つ目のパターンだそうだ。もしAIにips細胞が成功する確率は99.9%難しいと言われていたら、挑戦しなかっただろうと言っている。見えないからこそ人間は挑戦できるもののようだ。iPS細胞の研究に踏み込んだのも、整形外科医から研究に入ったため「無知さ」によって、ある意味怖いもの知らずでやっていたと振り返っている。
そして、3万ほどある遺伝子から24個の遺伝子に絞る過程で重要だったのが、勘だったと言っている。それは、くじ引きのような勘ではなく、過去の経験に基づく何らかの判断がモヤーッとしたものであったという。それに対して羽生氏は人工知能専門の松尾豊氏に「生物は目を進化させるために、他の器官を敢えて鈍くしている。だから勘というのは、その進化の過程で鈍らせてきた機能をもう一度、活性化するようなものではないか。」と聞いたことがあると言っている。そうならば、アイデアや発想、ひらめきを得るとはものすごく考えて考えてそこから生み出されるものもあれば、あるいは熟考から離れてぼんやりとしているとしているときにパッと思いつくこともあり、それは鈍らせていた機能が活性化された瞬間かもしれないと分析している。だから、ひらめきを得るためには、インプットばかりではなく、それを整理したり無駄なものをそぎ落としたりする時間が必要なのだろうとまとめている。
両氏の言っていることが凡人である私には本当かどうか分からない。しかし、そう考えて取り組めば斬新な発想やアイデアが必要なときに諦めず前向きに取り組めると思う。 -
トップランナー二人の対談、示唆に富むトピックばかり。印象に残ったのは、「人間にできてAIにできないこと」で、AIは数学的処理で言語を扱うためショートショートくらいの文章は書けても春樹の小説は書けないというところ。また、日本の教育は教科書に書いてあること、先生のいうことは正しくて、その通りに答えればマルをもらえる、ある意味子どもにとって「居心地のいい」環境で、それが危ない、といった山中氏の指摘。日本は直線型思考が主流で回旋型思考をしない、つまり回り道を恐れるし、失敗を貴重な経験と捉えない。たしかに。
おふたりとも「ナイストライ」をし続けていこうと。気持ちの若いふたりに勇気づけられた。 -
山中伸弥先生の名前につられて購入しましたが、予想外にも羽生さんの知識の深さに驚きました。
特にAIについてのお話は面白かったです。
確かに対人のみの練習よりも、自分の都合に合わせてくれるAIの方が数をこなすには適しています。
私は将棋は打てませんが、AIの棋譜には流動的な思考というものを感じにくいというのも、棋士ならではのご意見だと思いました。
人材育成についての考え方も、確かに日本の美意識のようなものが足を引っ張りがちなのかも知れないと、考えさせてもらいました。
非常に読みやすく勉強になりました。 -
2018年2月発売とそんなに古い本ではないけど、マーカーの書き込みがあるからかブックオフで安くなっていたので買って読んでみた(ただし、藤井聡太四段と書いてあって、逆にそんな前かとも思った)。
主に、iPS細胞等の最近の生命科学と将棋を含めたAIについての話だけれども、iPS細胞についてはちゃんと勉強したことがないので知らないことも多かった。
ミニ肝臓ってなんだそれという感じ。iPS細胞から作った肝臓の原基と呼ばれるものだそうだけど、それを患者に移植して体内で臓器を育てることを目指しているらしい。それって、患者に肝臓があるの?無いの? あるとすればどこにそのミニ肝臓をいれてるのと、逆に無いすれば無くて大丈夫なもんなのかと。生命科学に関することはまるっきり分かってないので、そこからよく分からなかった。
後、昔の生物は再生能力が強かったようで、原始的なプラナリアという生物は二等分すると二匹になって再生するらしい。なぜ人間にはそんな能力はないのかというと、がんが発生するリスクがあるからだとか。まあ、人間でも皮膚にケガをしてもいつのまにか再生していることはあるし、全くその能力が無くなったわけではないような気もする。
ちなみに、iPS細胞を初めて発見したとき、何かの間違いじゃないかと思ったらしい。そんな簡単に見つかるはずもないし、どこかでES細胞が混じった可能性が高いと思ったのだとか。そういや、STAP細胞も実は、ES細胞が混じっていたとかなんとか言われてたっけ。そういうこともやっぱりあるということなんだろうか。
それと、将棋のAIソフトはGitHubでソースが公開されているということを初めて知った。オープンソースになることでいろんな人がどんどん改良して強くなっているらしい。知らなかった。
逆に、生命科学分野は論文を発表するまでは誰にも知られずに隠すようにして、学会発表しても本当に大事なところは分からないようにするとかで、かなりクローズドな世界だそう。例えば、ゲノム解析である配列がある病気と関係があると分かって発表したとしても、それまでにどういう試行錯誤をしたかはいわないので、他の研究者がもっといい方法があるんじゃないかと同じ試行錯誤をしてしまうこともあるらしい。この本を読んで、生命科学も思ったより進んでるんだなと思ったけど、この問題をうまく解決できるともっと進歩が速くなるのかもしれない。
なお、山中先生によると、研究というのは今ある教科書を否定することだそう。確かに、教科書の内容って変わるそうだしね。数学はそうそう変わらないだろうけど、意外と歴史の内容が変わったりするそうだし。そういう意味では、今ある教科書は自分が習ってた時と違ったりするのだろうなと思う。
それと、オレキシンという覚醒作用をもつ物質を抑制する睡眠薬の副作用に「悪夢」とあるという話はちょっと面白かった。しかも、ホラー映画のような夢じゃなくて、身近な人に怒られたり遅刻したりという現実的な夢らしい。睡眠薬は使ったことがないけど、ちょっとだけ試してみたいと思った。 -
羽生先生は将棋とAIの専門家として、山中教授はiPS細胞の専門家としての対談。
どちらもそうなんだけど、相手が語っているの時にする質問が鋭く、例えがとてもわかりやすい。
「失敗を怖れずに」「なんでも挑戦を」とはよく言われ、実際間違いを恐れず新しいことに挑戦してきたから羽生さんは48歳でもトップ棋士なんだけど、本当に実践してきたことはすごく困難が伴うことだったと思います。
将棋の棋戦はほとんどトーナメントで、一回負ければもうタイトルには届かない中で、うまくいくかわからないけど試してみようと決断し続けるのは並大抵ではできないのではないでしょうか。 -
全くジャンルの違う2人でも、ここまで興味深い話ができるのだと感心した。特に相手の専門領域について質問する視点と予備知識のレベルが高い。テーマ自体も興味深いが2人の掛け合いだけで十分楽しめる。
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(失礼ながら)期待度がすごく高かったわけではなく図書館でたまたま手に取って借りたところ、スマッシュヒットでした。それぞれの専門分野の話を織り交ぜながらのお二人の対談は刺激的で面白い。山中さんの、研究の分野で常識を疑うみたいなことは、見習うべきことのように思う。
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山中教授と羽生さんが、IPS細胞や人工知能や、人類の今後について対談してる。
その2人である必要性はあまり感じなかったけど(特に羽生さん)、2人とも安易な言葉で説明していて、読みやすく面白かった。
人間の寿命は、心臓や関節などは代替できるようになるだろうから、結局は脳の寿命に帰着するだろうって話はなるほどなって思った。
こういう凄い方の話を読むと、自堕落な自分がホント嫌になる、、
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自分も天才になれた気になれる!お二人とも忙しい中どうやって、知識をインプットされているのだろう。