- Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062637701
感想・レビュー・書評
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再読です。
記憶喪失の男。美少女との出会い。無くした記憶の向こう側の復讐譚。
多分御手洗シリーズを読んでいる人はこのオチというか仕掛けは忘れないだろうけれど、それ以外の部分は新鮮に読めました。
とにかく、情熱的でセンチメンタルなミステリ。若い人に読んでほしいです。
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御手洗潔の最初の事件であり、島田荘司先生の処女作でもある作品。記憶を失った男が出会った女性・良子。幸せな共同生活の中で彼は愛する妻子の死の過去を知る。記憶の空白を満たすのは幸せか復讐か。
『占星術殺人事件』がトリックの傑作なら、これは人間を描いたミステリの傑作と言える。記憶喪失だった男の生活と心の動き、もたらされた過去の重み、読み進めるほどに自分の心も血を流していくようだった。感情の波に翻弄されて息を切らしながら駆け抜けた400ページ。島田先生の過去ともリンクしている部分も、物語の青く燃えさかるような痛みによく合っていたと感じる。
ミステリーとしてのどんでん返しも魅力ではあるけど、その作為から浮き彫りになった人の感情や生活こそ、心から流れる血を涙に変えるものなのだと。御手洗が言ったこの言葉が好き。
「たとえばこのオーディオセットだ。僕はこいつが一日中馬鹿でかい音で鳴っているのを聴いても愉快じゃない。こいつは日に二、三時間、本当に聴き手を感動させる音を出せればそれで満足なんです。そういう積み重ねが結局世界を変える力になる」
記憶を失った彼が御手洗や良子と過ごした日々こそがまさにこのことなんだと思う。そして、現実のぼくたちがこうして物語を読む時間も同じなのかもしれないね。
これを読むために一作目から順番に読んでくる価値がある作品。『浪漫の騎士』も興味がわいたので聴いてみたらすごい曲だった!ちなみにこれは『ブギーポップは笑わない』の1話目のサブタイトルの元ネタでもあるのかな?読んだ方はぜひその曲も聴いてみてほしい。 -
順番通りに読んで本当に良かったと思える作品。
1冊の本としても、御手洗シリーズとしてみても大好きです。 -
絶対に順番に読んでください…
裏表紙のあらすじでネタバレしすぎじゃないんですか?!って思って読み始めたけどまったくそんなことなかった
ラストまで読むとあ~っ!ってなること請け合い、こんなん愛じゃんね…
御手洗あなた…そんな… -
スピード感のある小説が読みたいと思い、久々に手に取った島田荘司作品。
「斜め屋敷の犯罪」、「占星術殺人事件」に続き読んだ本。
名探偵、御手洗潔シリーズの最初の事件を描いた作品。
主人公が記憶を無くした状態から冒頭のシーンがスタートする。
主人公は状況に戸惑いながらも、なりゆきで独り身の女性、石川良子と一緒に暮らすことになる。
彼女との生活の中で、新たな幸せを見つけていく主人公。
しかし主人公はある日、石川良子が押入れに隠していた自分の免許証を見つける。
「なぜ彼女が自分の免許証を持っているのか?」疑問を辿る中で、彼は少しづつ記憶を取り戻していく。
そして主人公は、前の妻と娘を自らの手で殺したような記憶が蘇ってくる。
その記憶が真実なのかを確かめるため、彼は自らが住んでいた場所に向かう。
果たして主人公の過去には、どんな秘密が隠されているのか…
先の展開が気になり、一気に読んでしまった。
いやー、もう圧倒的に面白い。
「さすが島田荘司だ」と納得せざるを得ない、これが約30年前に書かれたということが全くもって信じられない。
ミステリーというジャンルにも関わらず、ストーリーに古さを感じない、それどころか未だにここまで作り込まれた作品を自分は見たことがない。
主人公が日記を見て記憶を取り戻すシーン、同じ目線で完全に騙されました…
最後のオチまで、全く予想できず。
気持ちよく騙され、伏線もすべて気持ちよく回収され…
やはりミステリーでは最高峰だと思う。
とにかく、「よく出来ている」の一言に尽きる。
御手洗さんの登場シーンが少ないので、いつもほど御手洗節が炸裂しないのは少し残念…
<印象に残った言葉>
・ 名前というものは記号にすぎません!(P75 御手洗)
・クイズは、作るより解く方が何倍もやさしいんだ。作るよりも解き方が才能を要するなんてパズルはあり得ない。もしあったとすれば、それは偶然の産物、大いに偶然が手助けしているはずだ。だからね、古今東西、巧妙な犯罪や事件に真の芸術家がいるとすれば、それはホームズやポアロなんてやからじゃなく、その犯罪を計画し、実行した勇気ある犯人たちだよ。それなのに昔から、犯人の尻を追っかけてめいっぱいもたもたしたあげく、やっと謎を解いたような連中が天才だ偉人だともてはやされる。これが道徳的配慮でなくてなんなんだろう。(P152) -
御手洗潔、かっこいい!最高!
推理小説ではなかったけど、一つの小説としてとても面白くて、泣けた。
後書きを読んで知ったけど、作者の私小説的もあったとのこと。こんなにセンチメンタルな作品に仕上がっているのも納得という感じ。 -
面白かった!!レビューでよくある(必ず順番に読んでくださいね〜)の意図は途中で気づいてしまってニヤニヤ。著者の処女作とのことだが、トリックにおおきく振りかぶったこれまでのシリーズの流れからすると、かなり主人公の内面に焦点を当てたストーリー展開で、思わずこちらが感情移入してしまった。御手洗潔の人柄も伝わってくる。しかし病院のシーン(これ以上は控えます)はほんとにあれで良かったのか??と疑問符が消えないので星4つ。