密やかな結晶 (講談社文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 講談社 (1999年8月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645690

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密やかな結晶 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 消滅、秘密警察、記憶狩り…。自分もいつしか主人公のように、この不可思議を受け入れながら読んでいる。とてつもない表現力に圧倒された。
    本編と作中作。穏やかな日常と息苦しいほどの緊迫感。コントラストが効いた展開は400ページの長さを感じさせない。
    印象的だったのは、すでに消滅したある3つの品物が、R氏によって解き明かされる場面。小川さんの瑞々しい感受性に思わずうっとり。
    おじいさんと、犬のドンに癒やされたなぁ。

  • 小川さんの作品は博士の愛した数式以来二作目。
    読む前は筒井康隆さんの「残像に口紅を」みたいなものを想像していたけれど、印象は全然違う。
    とある島で暮らす小説家の女性が主人公。
    島ではある日突然消失がやってきて記憶が曖昧になり、やがて思い出も消えていく。。。
    全体的に漂う物悲しさ、独特の物だと思う。
    メタ小説でもあるのでそこも気になる要因。
    島以外の世界はどうなっているのだろう、sさんのその後、色々気になる終わり方なのでその後は想像でしかない。
    読んだ人それぞれ受け取る物が違って、その後も想像も違う。
    もっと他の作品も沢山読んでみたくなった。

  • 小川洋子の小説はやさしい時間が流れている。

  • 私、こういう話、こわくて苦手です。
    魂にざらっとくるこわさです。
    ゲシュタボを思わせる秘密警察もこわいけど、次々と何かが消滅していく-何かの持つ味わいが消滅していく世界やそれを受け入れて流れていく日常とか、どうしてもこわいです。

    私たちの属している世界も、別れや消滅は絶えずあるにしても・・・。

  • モノの記憶が日々無くなっていく現象が起き、ゲシュタポのような「記憶警察」が管理する不思議な島を舞台に、小説家の主人公「わたし」と懇意の仲の「おじいさん」、そしてふたりが、担当編集者で記憶を失わないでいる「R氏」を匿うことをきっかけにして、3人の共同生活の日々が描かれる。

    またわたしが書く物語内小説として、時計塔に閉じ込められた“おし”の女性と奇妙なタイプライター講師の物語が、本編の進行と合わせて綴られる。

    物語の設定も不思議だが、物語それ自体も「奇妙な」というべきか、 失われている世界に対して、主人公を含む島の住人たちは受動的で、抵抗しない。むしろその喪失に慣れていく。

    「モノの記憶が喪失」と書いたが、正確にいえば、モノの意味や手触りが喪失してしまう現象が起きる。あるモノが失われたとき、その時にはかつてそれに対して感じていたであろう情感は失われて、本文の比喩を用いれば、身体すら「石膏のように」感じなくなってしまう事態を指す。

    たんなるSFファンタジーの寓意に見えるかもしれないが、しかし同じ作者の『博士の愛した数式』を思えば、アルツハイマーの体感とはこういうものなのではないかと想起させられ、むしろリアル物語として立ち上がってくるのかもしれない。

    切ないのは、次第にモノを失っていく「わたし」に対して、「R氏」が彼女に記憶の底を思い出させようと過去のモノたちを触れさせるが、しかし彼女が訴えるように、ふたりのあいだには、その感覚にたいする絶対的な隔たりがどうしようもなく存在してしまうことだ。

    言葉が通じないだけでなく、ここにあるモノに対する感興それ自体が、共約不可能になってしまうこと。ノンバーバルなコミュニケーションすら届かないもどかしさ、その悲しさ。

    しかし一方で、記憶が失われたモノを描くときの、逆説的に得られるモノとの出会いーーたとえばラムネ菓子が失われた世界の、その味に対する感動ーーが、たしかにかつての情感は失ってしまったのだけれど、しかしモノはたしかにそこにあり(これはR氏が何度も繰り返す言葉だ)、むしろわたしたち読者が住む世界の、意味作用に満ちた体感世界の貧しさを照らしているかのようだ。

    物語はけっして明るくも前向きさもないけれども、ラストシーンの、失われた世界の極まったところで反転するべつの“世界”は、妙な希望の光が射している。

  • 静かだが、緊迫した物語だった。アンネの日記の設定を色濃く感じたが、伝わってきたものは、似ても似つかないものだった。消滅という名の老いや衰え。死へと進んでいくが、そこに生がある。死を思う自分にとっては痺れるお話でした。

  • 設定としては王道なディストピア風なんだけど、そこで「消失」に焦点を当てて書くのが小川氏流って感じでしょうか。タイプライターの話怖いなあ、と思ったら本編も怖かった。自分を食べる蛸、みたいな読後感。

  • 限りない消失の物語。最後には全て失うことをわかっていながらも、生きる希望(のようなもの)や、それを受け容れる心を持った主人公の感情の動きが描かれていて、哀しくも、そこから何かを学びとれるんじゃないか、と感じてしまうような希望を抱いてしまった。

  • (2008より転載)
    【再読】大好きな作品のひとつです。ドキドキするし、とても切ない。大事なものが"消滅"してもそれを受け入れてしまう。うーん、どうかな。
    2008/10/3読了

  • 読み始め...09.2.15
    読み終わり...09.4.25 

  • ひと、とは。
    どのような定義を持って構成されているものなのか。

  • さすがの完成度。失われていくことの止められなさ、恐ろしさ、切なさを静かに徹底的に描いている作品。ただ世界観は他の作品に比べると好みでは無かった

  • 帰郷時に買ってきた本。かなり好き。読み終わった後、現実世界に戻ってくるのに半日かかった…。恐るべし小川小説。ただ、R氏の奥さんと子供が可哀想過ぎる…。R氏も色々覚悟出来てたのに、あんな形になってむしろ残酷な気が。でもそこが小川さんぽくていい。

  • 2回読みました。不思議だけど切ない。夢中で読んでしまった本。

  • 今年の最後は小川作品にしようと決めていた。儚くも美しい物語でした。大満足!!
    あらすじ(背表紙より)
    記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、現代の消滅、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。

  • 私が今まで読んだ小川文学の中で「博士の愛した数式」かこの作品か。というくらい、どちらが良いかを迷う秀作です。

    もしかしたら、自分が人を助けようとしている事で、その人の良さを殺すような事をしているのかもしれない。とさえ、人との関わり方を改めて考えさせられた作品でもあります。

    また上品な感じの皮肉がある事も私がこの作品が好きな理由です。

    ただ一つ言えるのは、過去の事は忘れたとしても消せない。ということです。

  • 大人のための暗い童話。妖美的で、抽象的で、絶望的で、静謐的な喪失物語。

  • 江戸川乱歩の妖しさを思い出してしまいました。
    途中、
    タイプライターの小説の方がもしや現実なのかもしれない
    と推測してしまいました。


    違いました。

  • 初読。タイトル通り密やかで静かな物語。解説は結末に上昇という語を使ってるけど、自分には上昇よりも沈殿していくような下方向の印象が強い。タイピストの物語と「わたし」は途中までは対称的でも、最終的には男に女が閉じ込められるという同一方向になった。身近な部分はひどく濃やかな描写がある一方で、漠然とした感じもあった。個人的には消滅のメカニズムや秘密警察についてのもう少し詳細な説明が欲しかった。

  • 閉ざされた島を舞台に、あらゆるモノの存在や記憶が失われていく世界を描いた物語。

    秘密警察や記憶狩りという言葉が大戦当時のドイツを想起させる。

    記憶をなくさない人を匿う生活を中心に描きながら、次第に人の存在までも失われていく過程があまりにも切なくて悲しい。

    喪失が止まることなく救われることはないが、最後の結末はほんのちょっとの希望なのかもしれ無い。

    それが希望かはわからないが。

  • 小川洋子さんの小説は少し辛くて、不思議な読後感になる。
    あらすじを読んだ時は“消滅”をどのように描くのかわからなかったけれど、文体のなせる業なのか、見事に表現していたと思う。
    切ないラストもよかったと思います。

  • 『密やかな結晶』という小説の中の「私」も、作中で彼女が書いていた小説の中の「私」も、最後には閉じられた部屋の中で、静かに消えていく。
    どちらの「私」も自らの消滅を淡々と、抗うことなく受け止める。その、ため息が出るような物悲しさ。

    最後まで島で消滅という現象がおきる理由については明かされないままに終わることも合わさって、どうにもできない無力感のようなものが、心に張り付いた。

    ありふれていて、当たり前のように存在しているけれど尊い。そんなものたちが消滅してしまう切なさは、やはり小川さんの文章だからこそ、際立っているように思う。

    星は、4.5。じわじわと利いてくる小説なので、いずれ5になると思います。

  • 小川洋子さんらしい美しい文章です。
    結局、何一つ解決しなかったので少し悶々とした感情が残ります。
    作品中のもうひとつの物語も魅力的です。

  • ひっそりと仄暗くてかなしくて狂気じみててひんやりしてて、でも美しい

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密やかな結晶 (講談社文庫)の作品紹介

記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、現代の消滅、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。

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