密やかな結晶 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062645690

感想・レビュー・書評

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  • 忘れられないことは苦しいことだと思った。声だけになった彼女と声だけを喪った彼女

  • 今までで一番多く読み返した本。
    何に惹かれるのか自分でも分からないまま何度も読んでしまう。

  • 小川洋子版「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」だ。村上春樹はThe Oneを主人公にしているが、小川洋子はThe Otherを主人公にしているだけの違いかもしれない。と思えば非常に面白い。

  • なにかが生まれることよりも、なにかが消えていくことのほうが進んでいる世界。読んでいても常に虚無感が漂っていて、これほど漠然とした悲しい気持ちになりながら読むのもなかなかに辛い。

  • いろいろなものが消滅していく島。

  • 美しい。

  • 忘れる事と、消滅と、どっちがいいんだろう。
    どっちがいいなんて、ないのかもしれないけれど。

    大切な記憶が、ある日突然に奪われてしまうのは悲しい。
    だけど、少しずつ失われて行く事で生まれる、ふとした瞬間の
    『懐かしさ』という感情の暖かさは何だろう。

    物のひとつひとつに宿った記憶は、その物以上に意味をもって
    いつまでも残るものだと思う。

    大切な筈なのに、移ろい易く、失くし易いもの。
    不確かで、秘められた強い光を持つもの。

    これから先、長く生きて、何かを落としていってしまうかも。

    だけど、ある日、確かにあったもの。
    なくしても何かに触れて
    ふとした瞬間に拾い上げる事ができるといいな。


    懐かしい
    冷たさと、湿度と、閉塞感。
    そこに感じる安堵感。
    その記憶を掬い上げた。

  • 淡々と消滅していく世界。
    消えてしまったものたちには、もうなにも思うことが許されない。
    それを無情に見つめるだけで、悲しむことすらも出来ないことが、ただ悲しかった。

    世界観が独特で最初は戸惑ったけど、彼女の書く小説と最期の結末が奇妙にリンクしていく感じが綺麗でした。
    抑圧されることに反発して自分を保とうとするよりも、支配されることに安心を覚えて従順に成り下がっていく方がずっと楽だから。

  • 「記憶狩り」によって世界から一つずつモノが消えてゆく、という設定で、なんかハルキの『ハードボイルドワンダーランド』だなぁ、文体も風景が無国籍な感じも似てるし、とか思っていると、P357くらいから、あるモノが消え出して、その後とんでもない展開になる。最後は、加害者と被害者が反転するような感じで、「私の記憶を奪っていたのは実はあの・・・」と結構おそろしいことを暗示している。何も失わないで生きるというのは、それだけで一つの暴力のかたちなのかもしれない。おそるべし小川洋子。

  • 島からあらゆるものが次々と失われていく物語。

    その消滅を受け入れることで、消滅が起きたことから目を逸らし、その時はどうにかなるが、結局は島の破滅に繋がっていく。
    そして消滅を受け入れなかった者だけが、自由になることができる。

    何か、現実の世界と繋がるメッセージのようにも思える。

    西洋絵画では、画中画に意味が込められているというが、この作品には小説中小説がある。その小説もまた、消滅をキーとした物語で、2つの消滅の行方が気になる。

    味わい深い小説。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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