笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (486ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062646147

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  • 数学的な言葉たちが、事件のキーワードとしても人生・人間関係のキーワードとしても光る、犀川&萌絵シリーズ第3作!

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    天才数学者・天王寺翔蔵博士の住む三ツ星館。
    そこで開かれるパーティーに参加することになった犀川助教授とお嬢様大学生・萌絵。

    その席で天王寺博士は、館の庭にあるオリオン像を消してみせる。

    そして、再び出現したオリオン像の下には、死体が転がっていた…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    前作にあたるシリーズ第2作「冷たい密室と博士たち」は、ゆったりした話運びで、衝撃的なエピソードも少なめのお話だったため、正直なところ、失速気味のようにもうつりました。

    ところが、第3作「笑わない数学者」は、最初から最後までコンスタントに情報がもたらされたため、程よいスピード感がありました。
    またそれらの情報が、さらに読み手の推理をかきたててくれ、とても面白かったです。
    結局のところ、わたしが推理した内容はことごとく外れ(苦笑)、最後に「こ、これは当たってるだろう?!」と思った渾身の推理も、読み手に解釈を委ねられた形で物語は幕を閉じました。

    「定義があれば、存在する」(460ページ)
    「ねえ、どっちが中なの?」(中略)「君が決めるんだ」(479ページ)

    こうした数学的なセリフが、事件のからくりやラストシーンと絶妙に呼応していて、非常に気持ちよく読みきれました。
    最後に残った謎は、読み手の想像に任されたものの、それはけして後味の悪い任され方ではありませんでした。
    「定義すれば、存在する」という物語全体を貫くキーワードが、物語だけでなく人生を別の角度から考えるためのキーワードにも見え、おもしろい言葉に出会えたなと思いました。


    「これは最高に難問だ。
    (解けたことにしようか…、とけなかったかことにしようか…)」(474ページ)

    これだけ読むとなんてことはない文章かもしれませんが、この言葉が書かれているエピソードを読むと、犀川と萌絵の関係性をあらわす上で、この学問的な言葉がニクイ演出となっているのがわかります。
    数学的な言葉たちが、事件にも読み手の人生にも、こんなにも効いてくるなんて…驚きを通りこして悔しくなってしまうくらい、おもしろい物語でした。

  • 再読。

    今となっては、結構散見されるトリックたけれど初めて読んだときは思いもつかなかったことを思い出す。
    ただ、安定の面白さで飽きることなく読了。
    複雑な人間関係は事をややこしくする。人に言えない秘密は多く抱えるものではない。

  • 1999年作品
    トリックと犯人はわかりやすいかもしれない。(Mr.マリックの豪華トリック)
    存在しない人を存在されるようにするのは難しい。
    銃刀法で散弾銃は毎年、本人と散弾銃・球数・保管場所を警察が確認するので、10年前には没収されている。持っていなくなったら指名手配だしな。
    (ふと、親父の散弾銃で思い出した。いちゃもんをつけるつもりはないが)

    この物語の魅力的なところは犀川先生と萌絵のやりとりが笑える。
    モテない犀川先生34歳の今後が楽しみです。

  • 森ミステリィ第3弾!
    これまで読んできた中で1番好きかも……。

    偉大な数学者、天王寺博士の住む「三ツ星館」で起こる、"庭の大きなオリオン像が消える謎"と"殺人事件"を、犀川教授と萌絵の師弟コンビが解き明かしていくお話。

    星座×建築×ミステリー×心理……はい、私の好きなものがつまりにつまってました。笑

    今回は"問題に対する向き合い方"を学ばせて貰ったような気がします。
    ・問題には無意味なことも、些細だけど無視できないことも紛れこんでいる
    ・自由な発想のためには常識を捨て去る必要がある
    ・何をどう定義するかは自分で決めること

    萌絵ちゃんの恋(?)の駆け引きも面白かったです!頭の回転が早いと、計算だけじゃなくて、相手の行動の先の先のまで読んで、仕掛けられるようになるのかな笑しかも、それをちゃんと解釈して内心タジタジ(?)になりながらも大人な対応してる犀川先生も良い笑

    ……あれ?
    でも、地下室にいたのは誰だったんだろう…
    再読したくなる本でした

  • ミステリなんだけどもトリックとか犯人とかより二人の今後が気になって仕方がないから続きをまだまだ読み勧めます。

  • 結構ベタな館モノに見える。
    地下室に引き篭もる天才数学者、消えた建築家、12年前の事件、内と外の連続密室。複雑に入り組んだ家系図。
    オリオン像が消えるトリックについては、ミステリ読みならば、すぐ気づいてしまう。中学生の初読時の私も気づき、一見すると凡作に見える。
    ただ、天才である犀川が、こんな単純な謎に気付かないのは何故か?作者の森氏が本作について、インタビューで「逆トリック」と言っていたのは何故か?地下室にいたのは本当は誰なのか?
    改めて読むと、あえて答えを開示していない、アンチミステリのような作であったと気づく。考察も多数なされているが、このシリーズやはりめちゃくちゃ面白い。

  • ■帯
    消えたオリオン像、2つの殺人。
    部屋の中にいたはずの女性が庭で死んでいた。
    「この謎が解けるか?」
    ーー伝説の数学者が仕掛けた驚愕のトリック。

    ■感想、レビュー
    犀川先生、萌絵のS&Mシリーズ第3作。
    殺人事件の舞台になる「三ツ星館」の見取り図がわかりやすく、読み進めやすかったです。
    金田一少年の事件簿のイメージがなぜか消えませんでした。苦笑

    三ツ星館の主である、天才数学者 天王寺翔蔵。
    彼の身内が集まるパーティに招かれた、犀川と萌絵。
    館のシンボルである、庭のオリオン像が消えたとき、
    殺人事件が起こる。

    これも前作同様、萌絵が危険な目にあう場面があり、とても心臓に悪かったです。苦笑
    犀川先生、早く助けて~と思ってしまいました。

    狭い空間で、限られた登場人物たちから
    犯人とトリックを導き出す。

    事実が明らかになり、
    人間の業とか因縁のようなものが浮かび上がります。

    ただ、あくまでトリック解明が大きな部分を割くため、感情的なものをゆさぶってくる訳ではないから、
    ミステリーを純粋に楽しむことができます。
    なので、どんなに長くても読んでて疲れません。笑

  • シリーズ3作目
    まず目次見て、文字量にびっくりして笑った。

    トリックについては、こういうことかな~?となんとなく想像できたけど、
    犯人や詳しい部分まで考える暇もないほど、スイスイ読み進めることができた。

    読んでる途中で挫折しちゃったり、ということがよくある私だけど、このシリーズはどんどん読んでしまう。ほんとにおもしろいなー。
    世界観も、登場人物のやり取りも、読後の余韻も、なんだか心地いい。

    犀川先生が周りも見えなくなるほど自分の世界に入って、謎がとける場面が毎回ドキドキして好き。

  •  S&Mシリーズ第3作目。天才数学者、天才建築家、天才作家がいるなんかすごい一族内で起こるいざこざに巻き込まれた話。
     トリックに関しては、最初の方に館の図が出てきた時点で察していました。昔見たドラマに同じようなトリックがあったので、、、。
     一方で終わり方はいい感じでした。3人の天才の内生者が2人、死者が1人で誰が誰なのかは不定であるという読者に委ねられる形でした。
     最後に老人と話していた少女は西之園萌絵かなと思いました。中盤で唐突に出てきた、萌絵が塾に通わさせられた話がこの塾に向かう少女に繋がっていると感じたからです。
     徐々に周りから固められていく犀川助教授と西之園萌絵の関係に注目していきたいです。

  • 犀川助教授と萌絵がもう少し早く気づくのでは?と思ったトリックだった為この評価に

    今作の気に入ったセリフは
    素朴と単純って、どこが違うのかしら?
    現象としては同じだ。まぁ、違いといえば、観察者の先入観かな

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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