文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (984ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062649612

感想・レビュー・書評

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  • 三作目にして、少し京極さんの構成に慣れてきた気がします。
    今回の主役は悪夢と頭蓋骨。
    そして、お題は 狂骨ー今昔百拾遺・下之巻 からの展開。1枚が1,000ページです。
    狂骨は井の中の白骨なり。井戸の中をあの世とこの世の境界と考えているようです。村上春樹さんの小説の主人公達は井戸の中に入るイメージだけど、意識の境界に入る感じなのかな。
    最初は、無関係と思われていた、悪夢、頭蓋骨、首無し死体、集団自殺。それを京極堂の仲間たちが右往左往しながら、調べて、最後は京極堂が全てを一挙に絡めあげていく。

    すっごいと思います。今回は骨に関する蘊蓄と精神世界夢判断。解説のタイトルにもありますが、はなはだしいまでにリアル。ですから、読み飛ばせない。ついつい真偽を調べたくなる。そして、ストーリーを忘れがちになってしまう。予測では、3回読めば全体像をしっかり掴めると思いますが、先を急ぎますの。
    特に気になったのが、10月にお留守番する神様「鍵取神社」について。この地域は、神在月と呼ばれているそうです。
    そしてここがどこかと言えば、石川県羽咋なんです。白丘(牧師?)の出身地にもなっています。そして、羽咋は、松本清張のゼロの焦点の舞台になったところです。地名で、厳しい冬と断崖をイメージできます。当然、京極さんはわかっているはず、と思ったのですが、ふと逆に、松本清張もなかなかの歴史家だから、この留守番の神様に転勤先の愛人宅の設定を使ったのかなと思ったりしました。偶然なのかな。それにしては、マニアックなんだけど。

    さて、次作いきます。

    • 土瓶さん
      ( ̄▽ ̄)ナンノコトデショー?
      ( ̄▽ ̄)ナンノコトデショー?
      2023/08/20
    • bmakiさん
      (笑)
      土瓶さんの魔の手に囚われてしまったようです(笑)
      早速Amazonでポチってしまいました(^◇^;)

      京極堂も大好きなんで...
      (笑)
      土瓶さんの魔の手に囚われてしまったようです(笑)
      早速Amazonでポチってしまいました(^◇^;)

      京極堂も大好きなんですよね!
      シリーズ全て読んでいないですし、おびのりさんのレビュー見ながら、また私も読もうかなぁー(*^▽^*)

      おびのりさん、土瓶さん楽しいお話ありがとうございましたm(_ _)m
      2023/08/20
    • 土瓶さん
      bmakiさん。
      ご存じのこととは思いますが、来月の9月14日には17年振りとなる百鬼夜行シリーズの新作「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」がとう...
      bmakiさん。
      ご存じのこととは思いますが、来月の9月14日には17年振りとなる百鬼夜行シリーズの新作「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」がとうとう発売されます!!

      ですので京極堂を読み返す、読み始めるなら今が最適ですぞ。
      と、宣伝しておきます(笑)

      しつこくレスしてすまそm(__)m
      2023/08/20
  • 「歴史も真実もひとつじゃないんだよ関口君」

    あんなに様々に散りばめられた謎、不可思議、言動等が最終的にそういう事だったのかと読者の理解出来る形に収束するのは本当にお見事の一言

  • まさか京極堂シリーズに☆5つ以外の評価を付ける日が来るとは!
    なんというか、本作品はこれまで以上に緻密な事件で、決して物足りないとかそういうんじゃないんだけど、個人的にイマイチ乗り切れなかったのだ。

    理由はいくつか思い当たる。
    前作『魍魎の匣』では関連してそうな複数の事件がある部分でリンクしつつも別個の事件だったのが、今回は逆に全く無関係そうな複数の事件が実は一連のものだった、という趣向で、本作品でも京極堂の憑き物落としの儀式でその繋がりが明らかになるのだが、そのポイントとなる事項がかなり細かくて、「そうだったのか!」ってより「そうだったっけ?」という心境になってしまったのが、一番の要因である。
    要は、私が細かな伏線を覚えていられなかったんだな。
    結構良い環境で集中して読んだのだけど。

    じゃあなんで覚えていられなかったのかといえば、事件が主要人物に全く絡んでいなかったから、各エピソードに没入しきれなかったんだな。
    最初の『姑獲鳥の夏』から僅か半年足らずでそうそう何度も彼らの周辺で事件が起こったらそりゃ堪らないんだけどね。
    だから(なのか)今回事件に絡んだのは、いさま屋なのだった。
    しかし、私にとって伊佐間は、名前だけが出てくる京極堂サークルの知人だったので(『魍魎の匣』の最後にちょっと本人登場したけど)、まさか主要人物に昇格するなんて、かなり意外だったのだ。
    実は『魍魎の匣』の木場修ですでに同じような感覚を持ったんだけど、伊佐間はそれ以上だった。
    それに、木場修の時はあからさまに色恋沙汰だったけど、伊佐間は(絶対朱美に惚れてるけど)枯れてる(笑)からそういう気持ちを表に出さないので、なんか盛り上がりに欠けたのかな(下世話!)。
    まぁ、伊佐間のキャラは良かったけど。

    あと、それぞれの事件に同じようなモチーフが出てきて(髑髏とか神主とか)、頭の中で整理しきれなかったのも一因である。どのエピソードがどの事件のものだったか、途中で混乱してしまった。

    そんで、みんな大好き中禅寺は途中留守にしてるし、私が大好き榎木津はそんなに幻視しなかったし、レギュラーにもっと活躍してほしかったんだな。
    (いや二人とも充分活躍してるけど。榎木津は持ち前の天真爛漫さでまた人を救って素敵だったし)
    (京極堂が「そうだね」と言ってくれる時はなんか承認されたみたいで嬉しくなるなぁ。私に言ってるんじゃなくても)
    関口に至っては、今回は語り手としての役割さえも奪われてしまって、ホント存在感が薄かった。
    朱美のモノローグのみ一人称扱いにした作者の配慮だろうけど。

    事件そのものは、昭和27年という設定の時代性が活かされてて、史実なんかも踏まえられていて、とても奥行きがあった。ただ、真言立川流のことは全く知らなかったし、キリスト教にも日本神話にも疎いせいもあって、真相が刺さって来なかったんだよね。
    あぁ…「そうだったのか!」を味わいたかったなぁ。伊佐間が会った朱美と降旗が話した朱美が別人ぽいこととか、宇多川朱美が失顔症ぽいことまでは何となく気づいたんだけどなぁ…。


    あと本編と直接関係ないけど、中禅寺、関口、榎木津の年齢が分からなくなってしまって、すごくモヤモヤした。
    『姑獲鳥の夏』で関口が奥さんを「自分より2歳下だから28、29歳のはず」とか言ってたから、私の中では中禅寺と関口は31歳、1学年上の榎木津は32歳設定だった。木場修は35だけど、榎木津と木場修は幼なじみであって同級とは書いてないから、矛盾はないかと。
    でも今回降旗が木場と同級の35で、幼少時の回想での木場と榎木津は3歳も差があるようには思えず、なんだかよく分からなくなった。
    関口が胡乱なのか、私が胡乱なのか。何か見落としたかなぁ。


    胡乱と言えば、本作品でも関口はあらゆる友人から胡乱胡乱となじられてるけど、その胡乱な関口でさえ、宇多川から一度聞いただけの話を正確に再話するの、驚愕でしかない。
    ていうか、みんなの再話力、半端ない。子どもだった白丘が立ち聞きした神官達の会話を、神社の固有名詞に至るまで正確に覚えてるの、天才かよ。そしてそれを一度聞いただけの降旗もきっちり覚えてるってどういうことよ。
    私が京極堂の座敷に居合わせて、再話しなくちゃならない立場になったら、全くお役に立たないだろう…


    なんか自分がお馬鹿なことを露呈しただけになったけど。
    再読すればもう少しいろいろ入ってくるかもしれない。
    とりあえず一度目の読了の感想としては、上記の通りです。

  • 長い!長いよ!関口くんたちが出るまでが長いよ!!!!!
    とはいえ謎解きはボリュームたっぷりでちょっとややこしいけどまさかの真相だったし終わり方が好きなので大満足です

  •  伊佐間さんの見方がとても好き。
     視点が場面場面で変わるんだけど、木場さん視点になるとイライラして、降旗視点になるとなんかもう「これしかない」みたいな気分になって、伊佐間さん視点になるとみんなどこか可哀想だなっていうほんのり温かいような気持ちになるのがとても面白かった。
     関口君視点になるとなんだかみんなが優しいように感じられる。木場さんは「みんなの関口に対する言動が冷たすぎるように感じられるが自分もそうしてしまう」って思ってたけど関口君視点だとそうでもなくて、むしろ関口君視点で鬱陶しいのは関口君自身だった気がする。

  • 骨と夢のお話。
    一見関係なさそうな一つ一つの事件が、同じ事件の布石だった的な。
    ついでに神道、仏教、キリスト教も大集合でした。
    関口先生、コミュ障で他人とおしゃべりあんまりできないから、語り部じゃないと影薄くて寂しい。
    丁度京極堂が現れたところから最後まで一気読みしたので、読み終わったころにはほぼ朝でした。
    切り通しってやつがわからなくて、調べたけどどうもイメージし辛かったです。

  • 前二作は映画→原作の順で入ったので、本当の意味でのシリーズ初体験は本書になるのかもしれない。某登場人物の正体は大凡予想がつくが、そこに至る迄こうも複雑なプロットを経ようとは全く予想もつかなんだ。前作より物語のスケール感は落ち、代わりにミステリー要素は増したものの、それにより冗長さが際立ってしまった印象も。こうなると次作の頁数にゃ心根が怯むってもんです。従来の宗教的要素に加え、精神分析学も大きく絡む本書、狂信的になればなる程【信じる者は救われる】が、果たして其の信仰の頂に自我は欠片でも残存するのだろうか…?

  • 骨と夢をめぐる人々の執着を背景に、戦時中の兵役忌避者殺害と8年後の鎌倉・逗子で起こる事件の顛末を描く物語です。

    物語の展開はほとんど無く、問題と解答、その背景を埋める因果と蘊蓄のみという極端な構成でした。

    今回は妖怪の知識だけでなく、心理学や歴史、古典世界にまで手を広げているため、一層スケールが大きいものでした。

    このシリーズ読み続ける読者は当然蘊蓄を楽しめる人間だと思いますので、そういう意味では充実した作品だったと言えます。

    犠牲を厭わない、倫理や社会性を踏み越えた願望の恐ろしさを見せつけられると普通が一番と思ってしまいますが、そう思っている人間の自我まで不安定にさせるのが、このシリーズの一筋縄ではいかないところだと改めて認識させられました。

  • ★3.5
    再読。亡き夫の首を切り落とし続ける朱美、淫靡な夢とフロイトに悩まされる降旗、牧師だけれど信仰に自信が持てない白丘等、過去2作と比べると宗教的で精神的な描写が多め。が、相変わらず懇切丁寧に説明してくれるので、訳が分からなくなるということはほとんどなし。そして、8年前の殺人事件のみならず、朱美の家族焼死事件、山中での集団自殺、血塗れの神主等、全ての出来事を集約する京極堂の語りが圧巻。それにしても、世の中には色々な宗教があるんだなあ…。とりあえず、朱美さんは京極堂シリーズの中で一番“いい女”だと思う。

  • 途中空中分解しかけて、もう本当にどうしようかと思ったけど「著者の事だから最後にはなんやかんやで納得させられるはずだ」と思いながら読み進めると本当に最後にはストンとまとまって落ち着いたので安心して感心しました。
    読者と同じベクトルで京極堂以外の登場人物が「理解できていない」事が良かったです。ああ、ここはまだ分からなくていいんだなと思えるので置いてけぼりにならない。関口君にはいつも感謝してます。

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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