上の時の感想に書いたとおり、登場人物が覚えきれなくて話の流れがうまく理解できなかったんだけれど、物語自体は面白かった。
いろんな登場人物がそれぞれ考える、「自分とは何か」という問いに、それぞれの答えや悩み方があった。自分とは何か、どこまでが自分か、問い続けたラストがあれなのは結構放り出された感覚がある。でも長く存在してたらそうもなってしまうのかな。マリアのお母さんの考え方にはけっこう共感したし、自分を見失いたくなくて感情制御などを最小限にした人たち(名前忘れた)も見ていて好きだった。
いざ「コピー」できるようになったよ、って言われたら、わたしも拒んでしまうかもな。
2023年2月19日
登場人物が多いうえに生体とコピーがいるせいで頭がごちゃごちゃしすぎた。登場人物名をメモしながら読むべきだった……。
正確な物事の流れはもはやわからないけれど、世界観はとても面白かった。永久に続く世界に自分の「コピー」を存在させ続けるという、人間いちどは夢見てしまうような世界について、SFらしく、鋭く切り込んでる。
マリアとマリアのお母さんのやりとりが好きだったな。マリアのお母さんが三十三歳の時に「コピー」技術が完成したってことで、もう「コピーが自分として永遠に存在する」ということを喜ぶ価値観を得られなくなっている。マリアはその頃五歳だったから、「コピー」とともに育ったし、それが良いものだと信じ切っていて、母が「コピー」を拒むのは金銭的な理由だと思い込んでいる。そういう親子間の価値観の違いって今でも大いにあるだろうし、そんな二人が語り合う様子はとても読み応えがあった。
2023年2月19日
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モンテ・クリスト伯 7 (岩波文庫 赤 533-7)
- アレクサンドル・デュマ
- 岩波書店 / 1957年1月25日発売
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2021年10月30日
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モンテ・クリスト伯 6 (岩波文庫 赤 533-6)
- アレクサンドル・デュマ
- 岩波書店 / 1956年9月25日発売
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メルセデスおまえ……。
正直読んでる最中は、何も知ろうとしないでただ悲しんで生きてきた奴が、エドモン・ダンテス、モンテ・クリスト伯爵の大きな絶望や計り知れない覚悟を悟ろうともせずに自分の要求を通そうとする姿にすごく苛立ったし、これで折れてしまう伯爵に納得がいかなかった。結果色々あって丸く収まった風になるんだけど、その収まった状態も読んでるときのわたしには不満で、どうして殺すことが許されないんだろうと思っていた。
でも今改めて感想をまとめていると、こうなるしかなかったんだなあという気がする。伯爵は巨大な力を持って復讐劇を続けているけれど、その復讐劇は、マルセイユの朴訥な船乗り、エドモン・ダンテスのためのものだ。そして彼は神に遣わされたものであって、復讐の鬼ではないはずだ。
殺していたらシンプルにスカッとして、悲嘆に暮れるメルセデスを見て少し苦しんで、「あなたを一生お許しできない」とか言われちゃって、それでもまだ復讐を続ける、みたいな進行しかないと思うんだけれど、それだとモンテ・クリスト伯じゃないんだな、多分。
息子を思う尊き母と、何も知らなかった息子には、真実を知らせて悔い改めさせて、罪を隠して生きてきた張本人にはその重さを思い知らせる。これが神の摂理なんだ、わかんないけど。
2021年10月30日
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モンテ・クリスト伯 5 (岩波文庫 赤 533-5)
- アレクサンドル・デュマ
- 岩波書店 / 1956年8月25日発売
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ボーシャン回。
アルベールの回であってフェルナンの回なんだけど、なにしろアルベールと口でやりあってるときのボーシャンの言い回しが全部格好良い、最高。ずっと喋っててほしい。
モンテ・クリスト伯を疑うところまではさすがなのに、ブゾーニ司祭とウィルモア郷に話を聞いて安心しちゃう一枚下手ヴィルフォール面白かった。
一巻の頃からヴィルフォールの描写が色男だなあとは感じていたけど、高潔な検事長なのに女性関係だらしなすぎてひどいなこの人。
なんとなく気になっていたヴァランティーヌの悲観癖、伯爵がしっかり切り込んでいてスッとした。さすがだ。
2021年10月30日
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モンテ・クリスト伯 4 (岩波文庫 赤 533-4)
- アレクサンドル・デュマ
- 岩波書店 / 1956年7月5日発売
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エデがかわいい。素直でメロメロで美しいキャラはいつだってかわいく感じる。そんなエデを自分から離して自立させようという気配を見せる伯爵、なんとなくダンテスの頃の純朴さを感じるし、それもそれでかわいい。花丸。
モレル氏の最期の言葉もなんだか胸いっぱいになったな。善行を自分が為したものだと知られなくて良い、ただ助かればいいと思ってやったことでも、気付いて貰えたらそれはそれで嬉しいものだ。
ヴァランティーヌの悲劇のヒロインぶりっこ感はあまり好きではないのだけど、不快感を抱かせるためにああいうキャラなのか、それともかわいいと思いながら描かれているのかちょっと気になる。
相変わらず滅茶苦茶に金を使っているが、伯爵のお金はまだ尽きないらしい。
2021年10月30日
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モンテ・クリスト伯 3 (岩波文庫 赤 533-3)
- アレクサンドル・デュマ
- 岩波書店 / 1956年3月5日発売
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虎視眈々と復讐の準備を進めていく様子。
いろんな事が起こりすぎて頭が混乱しそうな巻だけど、ちょいちょい良いキャラがいて読んでて楽しかった。
ほんとにちょい役だけどボーシャン君が好きだ。台詞回しがおしゃれ。
アリの忠誠も、読んでて何やら心地よい。見ようによっては奴隷のアリは哀れなのかも知れないけれど、救ってくれた命は伯爵の物とすることにお互い不満や疑念を持って無くて、信じるとか真心だとか、救った側のおごりだとか、そういうものをあまり感じさせず当然に繋がっている関係性が不思議で面白いなと思う。
滅茶苦茶な金の使い方をするから破産しないか余計な心配をしちゃうけど、伯爵はそんなヘマしないのだ。
復讐相手との直接対話は、読んでて息苦しいものだった。
2021年10月30日
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モンテ・クリスト伯 2 (岩波文庫 赤 533-2)
- アレクサンドル・デュマ
- 岩波書店 / 1956年2月25日発売
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ついに復讐が始まるのか~? と思いながら読み始めたけどまだだった。
密輸船で過ごしているときのダンテスが、生来の魅力で人を引きつけながらも、その愛情を受け止めたり感謝したりしないで冷徹に対処しているところが、シャトー・ディフで変わってしまった人となりを強く感じさせてきた。
わざとケガして心配させながら、謙虚なふりでみんなを追い返した後、「誠実さとか犠牲的好意といったものが返ってああいった連中の中に見いだされるとは」とか思ってたシーンはとくにひどい奴だなと感じた。
故郷を見て自分の身に降りかかったことの理解を確実なものにして、復讐心を固めていく巻だったと思う。ダンテスの復讐はこれからだ。
2021年10月30日
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モンテ・クリスト伯 1 (岩波文庫)
- アレクサンドル・デュマ
- 岩波書店 / 1956年2月5日発売
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復讐の話だー! というテンションで読み始めたところ、復讐というのはまず絶望に突き落とされるところから始まるのだということを思い知らされ、順風満帆に過ごす好青年がこれから落ちていくのだという恐怖を味わいながら序盤のページをめくっていた。
いざ嵌められたところなんか泣きたくなるほど苦しくて、なお周囲を信じながら無実の罪にうろたえるダンテスが可哀想でならなかった。
監獄の中、ダンテスの愛すべき友人となった司祭が、知恵を授けたのち、ダンテスに復讐心を芽生えさせたことを謝るのが印象的。
2021年10月30日
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壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)
- 浅田次郎
- 文藝春秋 / 2002年9月3日発売
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本音と建前がいつも違って、でもそのどっちが本音なのか自分でも分からなくなってしまう。建前を経て本音も心から変わっていってしまう。
建前が格好良いし、そう生きたくて生きていた時代で、でもそんな生き方は歪んでいたし、死ぬ道なんか歩きたくはなかった。
そういう一言に言いきれない侍という化物たちの歪んだ生き様がとても胸に来た。
人を憎みながら、憎しみの対象が姿を得たような男を生かしたいと願って泣いた一さんがとても好き。
2016年6月19日
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壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)
- 浅田次郎
- 文藝春秋 / 2002年9月3日発売
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侍という化物の話。
2016年6月19日
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ドグラ・マグラ(下) (角川文庫 緑 366-4)
- 夢野久作
- KADOKAWA / 1976年10月13日発売
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まず何より技術がすごい。
なんだこの文体自由自在みたいなやりたい放題の構成。そのどの文体も読んでいて心地よくなる上品さがあってとても好き。
内容は理路整然としつつよく考えるとよくわからない。作中にあるドグラ・マグラと同じ印象。
読んでて胸に刺さるところが沢山あったんだけど、終わってから読み返すとどこが刺さっていたのか分からなくなる。とにかく良く出来た話だったと思う。また通しで読みたい。
2016年5月29日
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ドグラ・マグラ(上) (角川文庫 緑 366-3)
- 夢野久作
- KADOKAWA / 1976年10月13日発売
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脳髄で考えても分からぬ話。
2016年5月29日
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ドゥームズデイ・ブック(下) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-5)
- コニー・ウィリス
- 早川書房 / 2003年3月15日発売
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物語の収束していく感じに少し安心し、イメインへの感情は多少解消されたけれど、ギルクリストへのもどかしさは解消されていない気がする。
長引かせるために挿入されたままならなさというか。通信に関しては書かれた時代のこともあるのだろうけれど、どうも水増し感が払拭されない。訳者がこのプロットでこれだけの長さを書ける人はそういない、というような評価をしていたけれど、じれったさを感じながら読んだ身としてはそもそもこれだけの文量は要らなかったのではないか、という感想。シリーズものというので、続きを読んだら印象が変わるんだろうか。
ローシュ神父が好き。
2016年4月23日
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ドゥームズデイ・ブック(上) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-4) (ハヤカワ文庫SF)
- コニー・ウィリス
- 早川書房 / 2003年3月15日発売
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すごくじれったいというか、お話が進まなくてもどかしいなーと思うところが多かった。
2016年4月23日
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文庫版 今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2006年6月15日発売
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頑固+頑固で読むのが少ししんどかった。主観によってキャラクターの見え方が違うのは楽しいんだけど、この調子で続刊出たら読めるかなぁ……という感じ。もうすこし静かな目線からふたりを見てみたいなあと思った。
2016年4月23日
本編に対して薄味過ぎるというか、これを「本編の登場人物達は実はこんな人でした」という体で読むと行き届いていない感じがするので、独立した別物として読むのが私には丁度良いような気がした。
2016年3月21日
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百鬼夜行 陰 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2004年9月14日発売
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気楽に読めるシリーズだった。
本編で、平野さんの内面がわからないなーと感じていたので、ここで読めて楽しかった。
2016年3月21日
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文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2009年6月12日発売
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どう言ったらいいのかなー。
内容に対して文量が適切ではないような感触がした。特に大鷹くんに関する描写で。どういう行動原理で動いているものとしたいのか、それがどういう現象なのか、伝えたいことは分かるんだけれども、京極夏彦の精緻な文章で描写されるとどうもズレた感じがする。言葉が多すぎて逆に表現仕切れていないと思う。
馬鹿の考えていることって、多分そうなんだろうなとは思うけど、そうであるものとして表現したらやっぱりそれは別物なのではないかと思う。妖怪を科学で語るかのごとく、馬鹿を賢い文脈に落とし込もうとしていないか?
その大鷹くんの表現への違和感が勝って、物語全体もご都合主義味が強く感じられたのがとても惜しかった。
京極堂がめちゃくちゃ迂遠に関口君の作風を気に入ってる素振りを見せたところ好き。
2016年3月21日
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文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2006年9月16日発売
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伯爵の目から見た関口君がとても素敵な人に感じられたのが印象的というか、好きだとか好感だとかいう言葉をまあ偶には使うけどそれほど頻出させないでここまで「好意的な解釈」を表現、実践出来るのかと感心した。読んでてこちらが照れてしまう。書斎の対話がとても好き。
面白くない事態になって、あいつらがちゃんと依頼すればちゃんと出来たんだって拗ねる榎さんが、見ていてとても可哀想に感じた。目も見えないし、分かることは多いけど何をしたらいいのか分からないし、振る舞いはいつも通りでも大変だったんだろうなあと思う。
関口君がずっと言葉に出来なかったことを、みんなの前で言葉にさせてあげた京極堂の優しいとこ好き。
2016年2月21日
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文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2003年10月15日発売
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動きたくても動けない京極堂とか、それを唆す榎木津とか、独自の方法で進んでいく木場さんとか、何も言わないでも枝分かれして一本の毛先に向かっているのが大変ぐっときた。
関口君が壊れないことを祈るしかないって言う京極堂がいじらしい。あと京極堂がよく怒っていたのでそれもなんだか思い浮かべる度に胸がいっぱいになる。
覚悟を決めて啖呵を切る様子はとても格好良かったし、ただ突き出すのでなく本人に納得させたのは彼らしく上手いやり方だなあと思った。
京極堂にだって嫌なことはあるし嫌いな奴はいるんだ。始末が済んでとりあえずよかった。
関口君と京極堂がじゃれあってる様子をまた見たい。
2016年2月11日
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文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2003年9月12日発売
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どこかで大きく関わってくるんだろうなって思ったけどこんなに素早くフラグ回収することなくない?
前巻で得た感情がぷっつり切られて呆然としてしまった。とても悲しかったけど道の先に明るさがあるんだと思えていたし、出てきた彼女が凛としていて素敵だったのになんということでしょう……。
収まりが付かないので後編を急いで読むことにした。
2016年2月11日
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文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2002年9月5日発売
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ひとがいっぱい死んだのでとてもかなしい。
最後まで読んで本を閉じた瞬間がとても悲しくて、時間をおいてから最初の場面を読み直して少しだけほっとした。多分これもまた何処かで大きく関連してくるんだろうなあという気がするけれど、すくなくとも彼女主導ではもう連鎖しないんだ……。
誰もが登場人物になってしまう事件に関口君が関わらなかったの面白い。でも時々名前が挙がるので、彼らは繋がってるんだなーって感じられて嬉しかった。
最後の場面でじゃれ合ってる京極堂と関口はとてもかわいかった。悲しい気持ちはあったけど癒された。
仁吉さんが好き。おじいちゃんかわいい。
2016年1月30日
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文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)
- 京極夏彦
- 講談社 / 2001年9月6日発売
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ものすごく面白かった!
冒頭で昔を懐かしみながら楽しそうに旅行へ誘っていた京極堂が、最後には時を止めた人を豪く憎いとまで言ったのがなんだか胸に残る。
いろんな凝り固まった檻の、見出されて開かれていくのを読んでいるとスッとした。それぞれ克己していて嬉しくなる。
山下さんが好きだなあ。最初は大分苛立たしかったけど、ちゃんと物事を受け止めるようになって格好良かった。山下さんをそこへ導いたのが、ついその前まで悩んでいた常信さんだったのも良い。菅野に最後の一押しをしたのは榎木津だったけど、久遠寺さんも、久遠寺さんの立場から言葉を紡いでいて素敵だった。
榎木津さん今回特に優しかった気がする。ほんとにとても面白かった。
2016年1月20日