文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 624
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  • Amazon.co.jp ・本 (1376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062732475

感想・レビュー・書評

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  • ★4.0
    再読。初めて読んだ時は禅の何たるやが分からず、よく意味が分からなかった。が、何度となく読んでいるうちに、いつしか禅の魅力に取り憑かれてしまった。勿論それは、分かった気がする、というだけのものだけれど。箱根山で次々に起こる僧侶殺人事件、その背景には策略だったり煩悩だったりと僧にとってマイナスな部分が描かれるけれど、決して僧も禅も貶めることはない。加えて、またも過去の事件と現在が繋がる用意周到さ。それにしても、僧をも悟らせる榎木津のとんでもなさが凄く、惑わされてばかりの関口は意外に直感だけは鋭い。

  • 禅宗の宗派(っていう言い方は違うんだろうな多分。)のあたりはよくわからなかったが、ラストがよかったので読後感は悪くない。どこまで広がっていくのかと思ったが綺麗に畳まれていたと思う。
    しかし、長すぎて一気読みが難しいので、登場人物が多いと混乱してしまうなぁ。
    今回は榎さんの格好よさが目立つ。あとは、ある意味悟った山下警部補。今後に期待。

  • シリーズ第4作。
    ひと癖もふた癖もある主要キャラ達にもよく馴染み、いい感じで作品世界に嵌まり込めた。

    仏教という1mmも興味のない分野が舞台なため、今まで以上に読みにくかったが……うん、面白し!


    ★4つ、8ポイント。
    2016.07.22.古。



    それにしても……

    小児性愛に男色、おまけに近親相姦とは・・・ちょいとやり過ぎでしょ、京極さん。心が疲れたよ。

  • 僧、僧、僧。成長しない迷子、仏教、禅。変わらぬというか濃くなった世界観、厚さも進化したような…。良い意味でだらだらとしていて、こっちもついついだらだらと読んでしまいかなり時間を費やしました。前三作と比べるとぞわりとくる要素が弱めな印象も。京極堂の憑き物落としはこれまで通り「超すっきり!」といったのが感じられなかったなぁ…。気に入ってないというわけではなくて、これもこれで普通に好きなんですが。宗教という檻に囚われてしまった人ならではの動機は衝撃的。シリーズを通し読みしようと思っていたのですが、体力が^^;

  •  ものすごく面白かった!
     冒頭で昔を懐かしみながら楽しそうに旅行へ誘っていた京極堂が、最後には時を止めた人を豪く憎いとまで言ったのがなんだか胸に残る。
     いろんな凝り固まった檻の、見出されて開かれていくのを読んでいるとスッとした。それぞれ克己していて嬉しくなる。
     山下さんが好きだなあ。最初は大分苛立たしかったけど、ちゃんと物事を受け止めるようになって格好良かった。山下さんをそこへ導いたのが、ついその前まで悩んでいた常信さんだったのも良い。菅野に最後の一押しをしたのは榎木津だったけど、久遠寺さんも、久遠寺さんの立場から言葉を紡いでいて素敵だった。
     榎木津さん今回特に優しかった気がする。ほんとにとても面白かった。

  • 難しかった。一つだけ浮かんだ言葉は「思惑」。惑わされてはいけない、考えていることはみんな違うということ?
    重くて(実際の本の重量)て長くてまどろっこしくて集中力を終盤失ったので要再読。

  • 今回が一番面白く、読みやすかったです。
    いつも机上で事件が展開しているイメージがあったが、今回は箱根という舞台に移動していて、いつもよりも全体的に能動的な巻です。
    鳥口がよく頑張っていました。
    何を以て異常とするのか、自分の常識が本当に常識と言えるのか等、認識の相対が問われている作品であると感じました。
    禅宗や寺院経営などが詳細に書かれており、面白かったです。
    敦子や慈行の行動や描写で、伏線かなーと思った箇所があったのですが、回収されなかったので何でもなかったようです(笑)
    様々な人がかわるがわる憑物落としされていく箇所は『水戸黄門』が頭をよぎりました。

  • 読もう,読もうと思ってなかなか読み始めることができなかったが,夏休みの旅行のお供として持っていき,読み終わった。京極夏彦の作品は,読み始めると,一気に読み終えてしまうだけの中毒性がある。鉄鼠の檻は,禅宗をテーマとした作品だが,謎の作り方がとてもうまい。この作品における最大の謎は,連続殺人事件の犯人が誰かという点ではなく,中善寺秋彦ですら知らなかったという明慧寺という寺がどういった寺なのかという点である。「この明慧寺が真言宗の寺だったからですね。」という部分は,ミステリを読んでいて,久しぶりに心底驚いた。臨済宗,曹洞宗といった禅宗についての話が進めた上で,「真言宗の寺だった。」という真相は,ガツンとくる真相である。もっとも,この真相で驚くためには,ある程度禅宗についての知識が必要である。この作品では,761ページから40ページ程度を使って禅の歴史と禅についての解説がされており,この部分を読んで,受験勉強の際に覚えた日本の宗教史が整理され,復習できていたことが生きてくる。この作品には,明慧寺の正体以外にも,連続殺人の犯人は誰か,その動機は何か,見立ての真相,謎の少女の正体は何かなどの謎がある。真犯人は,ミステリを読みなれていると,「こいつは何者?犯人なんじゃないの?」と想定してしまう人物であり,意外性は少ない。しかし,「悟ったものを悟った順番に殺していた」という動機,鉄童という真犯人の育てている子が,禅の公案の見立てを行い,仏となった被害者を,いわば供養していたという部分は,十分な意外性だった。もっとも,動機・見立ては,力のない作家だとバカミスになってしまう程度のアイデアとお思えるが,筆力があるとそれ相応の意外性と読み応えになるということか。謎の少女である鈴の正体については物語内で合理的な解釈はされない。鈴子の子どもではなく,鈴子本人であったという描写だが,どうして鈴子が13歳の少女のままであったのかは謎のままである。また,最後の火事の際に,仁秀老人と鈴子の死体が出てこなかったという部分も謎のまま。もともと,榎木津という論理的には解明されないものが存在している世界観であり,割り切れない謎がのこってしまうのも仕方がないのだろう。禅というテーマで,知的好奇心を十分に満たすことができるうんちく,明慧寺の正体という意外性,割り切れない部分は残るが,それを十分にカバーできる作品全体の雰囲気。なかなか満足できる作品だった。

  • 白と黒の世界が目の前に現れるような描写に引き込まれます。

    何層ものベールを丁寧にはぎとって、核心に迫っていく、じわじわとした話の展開がもどかしくていいように作家さんの手のひらで転がされてるような。。。かなり分厚い本ですがどんどん読み進めてしまいます。

    このシリーズの中で一番好きの作品です。

  • 京極堂シリーズ。日本の宗教、特に禅宗について深く学べたようなよく分からないような。結果的によく分かってない。
    1300頁を越す文庫本はさすがに読み応えがあり、さらに宗教についてということで、沢山湧いて出てくる坊さんの名前も誰が誰か把握するのに一苦労。
    ミステリィとしては若干物足りないが、おどろおどろしい雰囲気の、雪の山中の禅寺での奇怪な事件は、非現実的で楽しめた。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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