- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062734240
感想・レビュー・書評
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ネフローゼで顔は青白くむくみ、ほっぺたも膨らんでいる。高熱も出て身体も動かなくなる。だが彼の純粋さの塊の様な生き方と将棋への情熱、それに掛ける鬼神の集中力と努力。そして"生きる"事に対する真摯な姿勢。天才・羽生善治が将棋界に革命を起こした同時期、もう1人の天才がいた。村山 聖8段。享年29歳。彼が"生きる"という事にもがき苦しみ、そして青春を謳歌した壮絶な人生がこの本にはある。彼に関わった全ての人々の愛が詰まっている。ただ泣けただけの本ではない。
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(さとしのせいしゅん)と読みます。将棋の小説です。
けっこう昔の小説ですが、とても良かったです。名作です。
みなさん羽生善治名人はご存知と思います。
この小説の主人公村山聖は、その羽生善治をすら凌駕するのでは、と恐れられた
天才棋士です。
ですが、そのそばには常に重病の影がありました。
死と常に隣り合わせで闘う村山は、いつしか「生きること=将棋を指すこと」となり、文字通り必死で名人を目指します。
この本を読んで考えさせられるのは、命を賭してまでやりたいこと、成し遂げたいことがある人はある意味とても幸せなのかもしれないということです。
村山は重病で苦しみながら闘い続けるわけですが、
そのそばには常に「名人」という希望もありました。
この村山の生きざまは、まさに真摯に生きるということだと思いました。
また、余談ですが
要所要所で棋譜が紹介されています。
これもまた、村山の天才的な強さ、また羽生名人の強さが現れていて
とても面白いです。 -
胸がいっぱい。
勇気をもらえる。もらわなければいけないとさえ思う。 -
将棋が強くなりたい、名人になりたい。幼くして腎臓病を発症し、文字通り死と隣合わせの生活を送りながらも「東の天才羽生」に対し「西の怪童村山」と並び評されるまでになった棋士の一生を描いたノンフィクション。生に対する真摯な姿勢が強く伝わってきた。彼に惹かれ支えた人達もまた素晴らしかった。特に冴えんなあとボヤキながらもその献身さでどちらが師匠か分からないと言われた森信雄。放埓だが自由で平等な彼が、村山に将棋だけでない生の彩りを育んだ。翻って私も給料を貰う以上はプロであるし、限りある人生を生きている。根本は同じ立場であることを肝に銘じておきたい。
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「東に天才羽生がいれば、西には怪童村山がいる」
そう囁かれ、かつて将棋界で名を馳せた若き棋士、村山聖(むらやまさとし)の激動の人生を描いた、ノンフィクション小説です。
幼少の頃に発症した腎臓病を抱えながら、病床で出会った将棋に広い世界を見出して没頭し、果ては名人まであと一歩というところまで上り詰める。まさに命を燃やすようにして生きたその生き様に心を打たれました。
将棋界に疎いとはいえ、こんな棋士がいたことをまるで知りませんでした。
著者は「将棋世界」の元編集長です。
兄と森を駆け抜ける幼い頃の様子から、最期のときまで、とても丁寧に愛情深く書かれています。作中には実際に著者も出てきたりして、生前から交流があったのが伺えます。
本書は直接の交流で知っていた部分もあるでしょうが、約8時間にもおよぶインタビューや、聖の父が「年と共に記憶は薄れてゆき、報道の方々に受け答えする聖の母とわたし(聖の父)との記憶がのずれが生じては困る」と思い、聖の妻の日記や家計簿等から作成した彼の履歴がもとになっています。
いかに聖が愛されていたかがわかりますよね。
ままならない体を抱えながら、どれほど悔しく、しんどい思いをしたでしょうか。それでも、後ろ向きにならずにいたのは、夢が、夢中になれるものがあったからなんですね。
「僕は負け犬にならない」
「僕には時間がないんだ。勝ちたい。そして早く名人になりたい」
急き立てられるように生きた聖を応援したい気持ちが募る一方で、小説終盤に向かうにつれて、結末を知っている分、読んでいて苦しくもなりました。
もし村山聖九段が生きていたら羽生名人の七冠は阻止されていたかもしれない、とも言わしめる彼が、こんなにも短くこの世を去ってしまうなんて、本当に人生何があるかわからない。
熊本の震災も突然のことでしたが、本書では阪神の震災の描写が少し出てきます。
将棋連盟で棋士から義援金を募ったそうですが、いち早く反応したのが羽生さんと村山さんだったそう。
知っていて読んだわけではないんですが、本書は映画化されて2016年の秋に公開されるそうですね。
村山聖役を演じるのは、松山ケンイチ。この役のために20キロの増量をして全身全霊をかけて挑んでいると知って、ものすごく見たくなりました。 -
享年29歳。
腎臓病に犯されたプロ将棋士・村山聖の一生。ノンフィクション。
ルールでさえ覚束無い将棋だが、羽生喜治が7冠を獲ったことは知っていた。その時代に羽生と肩を並べるほどの実力を持ち怪童と呼ばれていた村山聖。幼少時代からネフローゼという病と闘いながらプロ将棋士になり、A級リーグまで登り詰めた。最期は癌と闘い29歳の若さで他界してしまった。
聖の夢を全力でサポートする両親。親以上に面倒を見た師匠の森。常に死と向き合いながら全力で生きていたからこそ、こんなにも多くの暖かい人達に出会えたのだろうなと思った。
ドラマのような話だが実話。
小説と漫画本に囲まれたごみ山のような部屋、師匠にいつも髪を洗ってもらっていた、40℃の高熱が治まったその当日に名人戦などなど聖の生き様が十二分伝わってきた。 -
自分は最近読書をスタートしたが、文章もわかりやすくて、止まらなかったです。本を読んで初めて感動して少しうるっときました。
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5歳の頃からの病気で、いろんなことを諦めてきた少年。どうしても少年の母親の気持ちを思って涙してしまう。
聖少年は、将棋で名人になることを目標に前向きに生きていく。自分の死や病気のことも若いながらも客観的に冷静にみて判断していく。小さい頃から窮地に立たされ続けたことによって、あらゆる事の取捨選択が出来ているのだと思った。
私は、将棋の棋譜も全くわからないけれど、この本を通して、彼の純粋でまっすぐな29年間の生き方にすごく元気をもらったような気がします、 -
名前だけは存じ上げていたが、こんな興味深い方だったとは。
たらればの話をするのは意味がないが、もし彼が生きていたなら今頃はなんて想像するだけでゾクゾクする。