熊の敷石 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062739580

感想・レビュー・書評

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  • 【熊の敷石】
    上品で清潔で知性的でうっとりするような洗練された文体、かつリズムが良くて読みやすい、海外文学のような語り口。前半、崖からカマンベールを投げるシーンが印象的。巧みな描写によってとても綺麗な絵として浮かんできて感動した。
    後半は少しトーンが変わって、ヤンの撮った写真に関する二人の対話が続くがどこか悲しみの気配が漂っている。主人公はヤンから話したくもないことを引き出しているかもしれないが、決して内面へ深くは踏み込まない。殊更エモーショナルではなく、なんとなく分かり合えているような、いないような絶妙な二人の関係性の機微が切なさと暖かさをもって描かれているように感じた。あとは出てくる食べ物がとてもおいしそう。

  • さらさらと流れる、どこかはっきりしないけれど、魅力的な文章。とびきり肌触りのいい。読んですぐ彼の虜になった

  • タイトルと内容が一致しにくい
    なんだか寂しい話でした

  • なけなしの 世界史知識 総動員(詠み人知らず)
    って感じ。
    ゆるーくもったりと進んで、最後はすとんと落ちる感じ。

  • 文庫本の解説は川上弘美。彼女は気持ちがいいけれど不安と書いている、そうか、なんだか常にうっすら不吉なのだ、堀江くんが書くものって。よく晴れて見晴らしがよさそうな光景を書いていても、曇り気味でグレーなパリ、みたいな。
    そしてそれは決していやではないのだ。

    「熊の敷石」で、出だしの夢の場面が突然ぽん、と置かれて、物語が進んでラストに向かってパズルのピースが次々にはまって言って、最初の場面にも落ち着き場所が用意されているようなのはすごい、鮮やかだな。

  • トラウマを何に例えようかと考えたとき、僕の中に2つの案があって
    ひとつは「心につけられた傷口」
    もうひとつは「心に溜まった毒」なんであるが
    どちらに捉えるかで、その対処方法もぜんぜん違ってくるというのは
    やっかいなことである
    前者なら触らず放置
    後者なら公然に行われる排泄
    かような物事の捉え方・認識の違いというものが
    人間の分かり合えなさであり
    世界の不幸を生み出しているのである
    腹の痛みを我慢するうち、神経をおかしくして
    今度は歯が痛くなってくるような
    そういう類の不健康
    それを僕は、これらの小説に感じてしまったのですがね
    世界の不幸か…

  • まるで童話のような、難しくない単語、言葉づかい。それでも描写とともに世界が広がり、緑の匂いがしてくる。ところどころ熊やユダヤなどのドキッとするテーマが織り込まれていて、単純なストーリーではないので受け取る感想も人によって違うはず。終わったのか途中なのか曖昧な終わり方も余韻があって良いと思う。

    『雪沼とその周辺』に比べて、焦点がぼやけている気がしたのが残念です。この里山が日本なのかフランスなのか、結局何に心を動かされたのか、雰囲気としてイマイチ伝わって来ないような。

  • 2000年下期:第124回芥川賞受賞作品。
    なになになにこれ!たまらない。
    あっさりした繊細な文章で、心に迫る情景を軽くするっと描いてみせる。語り過ぎない絶妙さ。みなさんの感想を読んで、端正な文章、質感とはこういうことかと納得。
    読書の幸せを感じました。

  • 読んでいる時間がどこか特別なものになるような端正な文で、舞台はフランスだったり、海辺だったりするし…。好きなんだけど、突然終わってしまうので、何か写真の作品を見てるような気持ちに。

  • フランスには行ったことがないが、フランスの情景がありありと浮かんできた。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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