- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062739894
感想・レビュー・書評
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古き良き時代の自衛隊の話。古参の営内班長がいて、鬼より怖い服内務班長が部屋長の代わりに班員を躾けをする。そこには理不尽極まりない指導があるが一応そこには色々複雑な先輩の考え、想いがもある。だからこそそこには今にない精強な部隊が育つ。ただ現在の自衛隊はそれをやったら大問題になる、、、
この本は章毎に話が変わるが、違う話ででた人物がまた関わってくる点が面白い。話は9章ある
⚪︎特攻の生き残りの准尉の話からの真夜中の歩哨の話
⚪︎半長靴の片方を無くし員数合わせをしようとする新兵
⚪︎半殺しや理不尽極まりない指導、好きな女を取られて殺したいほど和田を憎む渡辺の話
⚪︎借金の利息を払い忘れた赤間、そんな出来事から実は自分の他の営内班の全員が借金していることを知った。そして借金の保証人で借金を背をわされた石川に営内班全員からの優しいプレゼント。
⚪︎地連に人さらいあった米山
⚪︎教育隊初個人外出でバディの佐々木と今野の切ない話
⚪︎体力も頭も足らない佐藤四郎とそれを支えるバディの高津の話。不条理の自衛隊生活の中で自衛隊の存在を見出せない高津が脱柵を考える。
⚪︎年末の年越しに勤務を付けられ納得のいかない赤間
⚪︎任期満了を迎え退職する隊員の話
昔の自衛隊では良くあるような苦悩と笑いと青春の物語詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦争を放棄しながら軍隊を持つ日本。国民から拒絶反応を起こされる高度成長期の「自衛隊」に入隊した若者を描く短編連作集。
自衛隊への就職を選択するような奴は変わり者か事情のある者。屁理屈と鉄拳の軍隊生活と人間模様を描く。 -
unbelievable short stories of SDF soldiers' daily life based on the author's firsthand experiences. I have no idea about how to respond: harbor resentment as a taxpayer?, criticize lawless violences?, feel sorry for the soldiers who aren't respected by people and have no freedom?
But what I was moved most by was that they are foolishly-honest and naive.
it makes sense that military forces never produce "drop-outs" because they will expose whole troop to danger.
若鷲の歌/小村二等兵の憂鬱/門前金融/入営/シンデレラ・リバティ/脱柵者/越年歩哨/歩兵の本領 -
自ら経験している筆者ならではの視点で、その内部事情や自衛隊員の気持ちを代弁した作品。
いろいろな登場人物が出てきて、自衛隊の矛盾や存在意義、誇りや人情味が描かれるが、経験に基づいたリアルな筆者の気持ちなのだろう。
ちょっと時代が古く感じるが… -
「君、いい体してるね。自衛隊入らない?」
この言葉が流行ってたのはいつだろう。アイドルタレントじゃあるまいし、自衛官を街頭でスカウトするのかよって笑っていたけど、どうやらホントにこの言葉で自衛官を集めていた時代があったらしい。
バブル時代よりも前の高度成長期、日本は超売り手市場で就職内定なんていくらでも稼げる時代だった。そんな時代に低賃金で長時間拘束、その上、国民から信頼されない組織である自衛隊はいわゆるブラック企業だった。
そんな自衛隊の面々が繰り広げる理不尽な体育会系社会を描いたオムニバス短編小説集。それにしても、浅田次郎って元自衛官だったんだ。 -
70年代の自衛隊内の人間ドラマ。
理不尽、とか体育会系(レベルが違うが)、とか思ってしまうんだけど、そうじゃないんだよな、違うのよな、その中に血潮が流れているんだよな。
軍隊という非個性の中だけど、一人一人、人間が息づいている。輝いている。非個性に反発しているとかそういうことではなく。
もしかして、社会ってこゆこと?
自衛隊っていう面白さだけではなく、今に無い何かを感じさせてくれる作品。 -
1970年頃の若き自衛隊員の人生模様を描いた短編集。うかがい知れぬ内幕を鮮やかに描いている。笑えるようで笑えないほろ苦さと誠実さが印象に残った。昭和のニオイを感じた。
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読書期間: 1/14-1/23(10日くらい)
感想: 浅田次郎さんの体験をもとに綴られた、1970年代の自衛隊内部の人間模様。浅田次郎さんの短編は好きです。この本も期待通り面白く満足でした。
「解説」にもあるように、1970年代の自衛隊と今の自衛隊では、だいぶその生活・訓練も違っているらしいので、現代の自衛隊の方のエピソードも知りたくなってきました。 -
oyajisanお勧めの一冊。9つの短編集・・・う~ん、どれも涙と笑いで読み進める。理不尽だけれども温かい世界・・これを”昭和”と呼ぶのでしょうか。
訳ありで連れてこられて、たとえ最初は殺意を覚えるほど反発しても、いつしかそこに居場所を見つけてなじんでいく。体力的にどうしてもついていけず、そのせいで連帯責任(なんて懐かしい響き!)を取らされて。でも、誰も咎めず見捨てず、さりげない優しさで包んでくれる・・浅田次郎さんの自衛隊への愛情がなせる世界なのかも。好きだな~こんな男くさい世界。
熱発就寝と称して、訓練にもほとんど参加せずベッドに寝ている最古参の神様・・・そんな存在を飲み込む懐の深さに、どこかホッとする。
いつからか、そんな存在を許さない、ギシギシと音が聞こえてくるような社会になってしまったような気がする。何かしでかしたら、メディアに一斉に叩かれ、追いつめられる。どこかおかしいと思う今日この頃。
決して、「虫の居所が悪いから殴られる」社会を容認しないけど、その裏にある愛情だったり優しさだったりに、救われる思いがした。
「門前金融」の言葉遊びに笑い、「バトル・ライン」の男気にしびれ、「シンデレラ・リバティー」にほろりとし、「脱柵者」でじぃーーんときて、最終章「歩兵の本領」でガツンとやられました。
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高度経済成長期の自衛隊の話。
理不尽な暴力がまかり通る狭い世界で、しかしその裏側にある人間の温かみが描かれている。
世界にぐいぐい引き込まれ、一気に読み切ってしまった。