新装版 苦海浄土 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062748155

感想・レビュー・書評

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  • 聞き書だと思って読んでいたら、解説に「あの人が心の中で言っていることを文字にすると、ああなるんだもの」とあり、驚愕した。水俣病患者たちの悲痛な心の声と、それに対比しているかのような美しい自然の海の描写が残酷に思えた。

  • ものすごい本を読んだ、という感想。
    「魂の文学」とはよく言ったものだ。
    渡辺京二が書いた解説の熱もすごい。

  • 水俣病患者の苦悩を追ったルポ調の一冊。
    水俣病患者たちは、水俣市や熊本大学や国やチッソに、どのような扱いを受け、何を抱いて時間を過ごしてきたのかを刻んでいる。

  • 椿の海◆不知火海沿岸漁民◆ゆき女きき書◆天の魚◆地の魚◆とんとん村◆昭和四十三年

    第1回大宅壮一賞(辞退)
    著者:石牟礼道子、1927天草市生、作家、水俣実務学校卒
    解説:渡辺京二、1930京都府生、思想史家・歴史家・評論家、法政大学社会学部卒、熊本大学大学院社会文化科学研究科客員教授
    解説:原田正純、1934鹿児島県さつま町-2012、医師、熊本大学医学部卒

  • ☆何個とかもようわからん。読んでただ気分が重くなったでは、本当に読んだということにはならない気がする。上っ面をなぞっただけ。これからいろいろ石牟礼作品を追ってみたい、その上でまた読み返してみたいと思う。

  • この手の話はどこまでリアルに感じられるかっことだけど、シリアで大変だって言われてもピンとこないし、まぁニュースじゃ大変そうね、くらいの。
    でも今回はみょうにリアル。なんでかって考えるに、これ方言パワーじゃないか。なんでだろうね、言ってることはすこぶる理解しがたいけど、勢いだけは伝わってくる。これが標準語でですます調だったらまるで違うわよ。方言恐るべし。
    でもこれが50年前っていうんだから、前向きに考えれば、50年後もすごいことになってそうじゃね?
    ともあれ気になって調べた今の水俣は、すっかり立ち直ってて何より。忘れることも大事って部分もあるさね。

  • 十日付の新聞で、石牟礼道子さんが亡くなつて一年、との記事が載りました。さうか、もう一年かと思ひ、代表作たる『苦海浄土』の登場となりました。

    水俣市は代々続く漁業の町。その町で魚が獲れなくなり、人も不思議な奇病にかかる。水俣病であります。
    いはゆる公害病で、原因も特定できず(後に有機水銀が原因とされる)、治療法も無いに等しいのです。
    最初に紹介される「山中九平」少年が、熊大の先生が診てくれるといつても拒否し、「いやばい、殺さるるもね」と言ひ放つのも、病院で治療しても甲斐なく死亡する奇病であることを知つてゐたからでせう。

    海に毒を流し続けた「チッソ」。結局この会社はカネは出したが、自分の会社が原因かどうかの因果関係は証明されてゐないとして、現在に至るまで誠意ある謝罪はありません。
    そして行政や国も役に立たず、最初の水俣病患者発生の昭和28年以来、未だに解決を見ないのであります。
    長引く訴訟に、原告側の一人は、「もうチッソを許す」と意外な発言をしたといふ記事を見ました。その真意は、もうこれ以上続けても悲しい記憶が消える訳でもなく、早く終らせたい、水俣病を忘れたい、とのやうです。もう原告側も疲弊してゐるのでせう。

    著者の石牟礼道子さんは、まさに水俣で育つた人。それだけに地元の患者たちに警戒感をもたれることなく、患者や家族の本音を聞き出せたのでせう。その思ひがサブタイトルの「わが水俣病」に現れてゐると申せませう。
    初読の時は、怒りと涙なくしては読めませんでした。公害病はなくなつても、結局政府が大企業には甘いといふ体質は変ってゐないのではないでせうか。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-782.html

  • 【2018年度「教職員から本学学生に推薦する図書」による紹介】
    松本 ますみ先生の推薦図書です。

    <推薦理由>
    水俣・不知火海の自然の美しさと伝統的な漁民文化を背景にしつつも、その中で水俣病に襲われた人々の苦難を描いた本です。
    自然に寄り添って生きる「弱者」=漁民が、近代化、高度産業化、効率化の副産物である公害に直撃されることで、いかに分断され、苦難の人生を歩むことになったのか、被害者に寄り添った視点で描かれています。人間の尊厳はどう守られるべきなのか、自然をどのように保全するのか、深く考えさせられる本です。同時に、公害は過去のことでなく、現在も場所と形を越えて進行中であるという想像力もこの本を読む場合には必要とされるでしょう。


    図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
    http://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00353750

  • なんということがこの日本で起きていたのだ。
    知ってるつもりで、実はなんにも、ほんとに何一つ、知らなかった。
    熊本の話し言葉にはなじみがなく、書かれていることやその時の感情をきちんと理解できたかどうかわからないところもあるけど、この文体は本当に魅力的。

  • シスターにおススメされた一冊。水俣病は社会で習ってはいたが、こんなに悲惨で被害が公的に認められるまで長い年月がかかったことは知らなかった。被害者に寄り添いながらの文才、目の前で見たような気がした。私の生まれる数年前のことだということにも驚いた。

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著者プロフィール

1927年、熊本県天草郡(現天草市)生まれ。
1969年、『苦海浄土―わが水俣病』(講談社)の刊行により注目される。
1973年、季刊誌「暗河」を渡辺京二、松浦豊敏らと創刊。マグサイサイ賞受賞。
1993年、『十六夜橋』(径書房)で紫式部賞受賞。
1996年、第一回水俣・東京展で、緒方正人が回航した打瀬船日月丸を舞台とした「出魂儀」が感動を呼んだ。
2001年、朝日賞受賞。2003年、『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』(石風社)で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2014年、『石牟礼道子全集』全十七巻・別巻一(藤原書店)が完結。2018年二月、死去。

「2023年 『新装版 ヤポネシアの海辺から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石牟礼道子の作品

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