- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062749985
感想・レビュー・書評
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あっという間に読み終えた。"死んじゃってもいいかな、もう…" と絶望の淵にいる主人公ほどではないけれど、私も少々落ち込んでいてすぐに物語に引き込まれた。
内容は設定からして、ものすごくフィクションで作り話。けれど、その設定を使って筆者が描こうとしていることは現実の親子問題そのもの。
私達は、自分と同じ歳の親には絶対に会えない。でももし会えたら、その人についていったいどれだけの発見や驚きがあるだろうか。友達として普通に話せたら、今よりどれくらいお互いの気持ちを伝えあう事が出来るだろうか。そして何より、親と子は家族であっても、自分とは全く別の人間なのだと気付くだろう。学校で出会ったクラスメイトと同じように、自分とは全く異なる性格で全く別の人生を歩んでいく生き物だと分かるだろう。
その時、親に対して抱いていた反発心や抵抗、お互いに理解し合えないことに対する苛立ちなどの感情はきっと柔らかく変化するように思う。
それほど簡単な事ではないかもしれない。けれどこの本を読むと、親や子どもに対する心の何かがきっと変化して、自分の毎日の行動も少し変わる。そんな本だった。
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人生には大切な分かれ道がたくさんある。その時は大切と気づかない事もあり、私達は後になって色々悔やむ事も多い。
分かれ道も何が悪かったのかもわからない一雄の家庭は崩壊してしまった。投げやりな一雄にオデッセイと橋本親子が魔法をかける。大切な分かれ道へと彼を導く。一雄と朋輩チュウさんのドライブの結末は…。
3組の不器用な親子に私は自分を重ねる。良かれと思って言った言葉でも、相手を追い詰めたり、不快にしたり、傷つけたりする事もある。親子の場合は特に。「頑張れ」の気持ちをうまく届けたいし、受け止めたい、そう思えた作品でした。
奥さんだけはちょっと理解に苦しむ。 -
家族の狂った歯車を過去に戻り直すのではなく、狂った原因を知り、未来を受け入れ、新たに歩む。不思議と暖かく、心が優しくなる傑作です。
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時空を超える不思議なワゴンに乗り、38歳自分と同い年の頃の父親と人生の岐路となった場所へ旅する。重松清さんの描く父親にはとても親しみと共感が持てます。不器用だけども子ども思いな父親。
ドラマでは親父を香川照之さん、主人公を西島秀俊さんが演じたそうですが、その2人を想像しながら読むことでより一層楽しむことができました。
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市民を描く描写がリアルでしたが、悔いのないように過ごさないと、自分自身だけでなく、一緒に暮らす人との関係までもが変わってゆくことにも少し怖さを感じました。 妻の不倫って知ったまま過ごさないといけない状況ってすごく辛いな。。
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昔、ドラマを見たけれどうろ覚えだったので読んでみました。
チュウさんが出てきたとたん、ドラマを思い出しました。香川照之恐るべし。
時間の流れにのってしまうと現状を変えるなんて無理だと思ってしまうよね、でも本当はいつだって変えれるんだぜ、
という前向きなお話。
私も寝坊助改善に何か小さな1つを変えてみようかな。 -
哀しいのと淋しいが入り混じった作品が第一印象。
作中の将来を知ってるのに変えられない現実に居合わせるのは、辛いの一言。
死んでもいいかなぁ…から少しづつ前向きに生きて行こうとする変化が応援したくなる。 -
息子は受験に失敗し家庭内暴力をするように、、、妻には離婚を切り出され。
会社にはリストラされ、病床の父親を見舞う振りをして御車代を貰わないと生活に困窮する。
もう死んでもいいかなぁと思った時、5年前に交通事故で命を落とした父子が乗るワゴンに出会う。
これまで読んだ重松先生のお話の中では一番好きな作品。
徹底的なハッピーエンドが待っているわけではないが、ほんのり優しい気持ちになれる。
やり直しの現実で人生が変わるわけではないが、やり直しの世界を体験したことで、主人公自身が少しずつ変わっていった。
少しずつ変わっていくことで、本当の世界、この本の終わりのその先は、きっと明るい未来が待ってるんじゃないかな?と勝手にほほえましく思いながら本を閉じた。 -
本当に大事な分かれ道って、後になってみないと分からないんだよね。「戻れるならあの時に戻りたい」と願わずにいられないのが人間だけど。
筆者が伝えたかったのは「後悔しない生き方をして欲しい」ではなく、「後悔してもいいから懸命に生きよう」ってことなのかなと思った。 -
強くオススメしたい作品。
涙がポロポロと出ました。
会社にリストラされ、妻に離婚を突きつけられ、家庭内暴力を振るう引きこもりの息子を持つ38歳の主人公。
ふと「死んじゃってもいいかなぁ」と思った時に5年前の交通事故で命を失った父子が運転するワゴンに乗せられ、主人公の運命を決めた過去に戻る。
そこで主人公が目にしたもの、出会った人を通しながら不器用な親子3組の愛が描かれています。
文中に
“どんなに辞書をめくっても、自分の心を表す言葉が見つからない”
といった表現がありました。
子供の頃だけでなく、誰もが1度は感じるもどかしさ。
お互いに思い合いながらも、すれ違う父子。
子供の視点では気付かなかった父の弱さ、小ささ。
その全てが大変切なく表現されていてクライマックスに到達する前に泣き出してしまいました。
言葉数の少ない父と息子だからこそ、成立する物語。
過去に戻っても、現実は大きく変わっていないところも好きです。
とにかく、おすすめです。