白洲次郎 占領を背負った男(上) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762199

感想・レビュー・書評

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  • 彼のことを記した書物はずいぶん沢山あるけれど、これは順を追って、その時、その時の政治状況なども比較的丁寧に説明してあって分かりやすい。白洲次郎という人の、そもそもの家柄や周囲の人々の生い立ちに至るまで丁寧に記されている。
    上下巻のうち上巻にあたるこちらは、1902年に彼が誕生してから、敗戦しGHQと憲法についてすったもんだのやりとりをするところまでが取り上げられている。白洲次郎という人物の数々のエピソードもさることながら、現在進行形で問題になっている政治のさまざまなことの事情が改めて理解できて面白い。
    別に文部省のせいにするつもりはないが、普通に公立の学校の義務教育で歴史の授業を受けていると、小、中、高校といつも原始人からスタートして、江戸時代か、せいぜい明治にかかったあたりで卒業してしまうのだ。私が社会科の嫌いな生徒だったせいもあるけれど、近代史は未だに特に苦手で、疎い。でも、こういう歴史を知らずに選挙権を持っているというのは本当は大問題だと改めて痛感。選挙に行かない無関心さは勿論けしからんと思うけれど、これまでの日本の生い立ちや経緯を知らずに闇雲に投票する人が増えても、それはそれで、その場だけクチの巧いスタンドプレーに騙される人が増えるような気がして恐ろしい。
    ・・・もしや、近代史を学校で教えないのは、ワザとだったりして。

  • 戦後の日本を支えた人物、白洲次郎。
    戦後の日本を彼の生まれと軌跡を絡めて、物語のように見れる。

    特に、GHQとの闘争には文面からだけでも凄まじ闘気と、無念の想いを感じる。
    日本の先人達が、後世の私達にとっても、出来るだけ良い形で、日本有史以来初めての敗戦国となり、他国の占領下となる日本を、残そうとしたことが、この軌跡を通じて感じることができる。

    マッカーサーを筆頭としたGHQ側の首脳陣に対し、白洲次郎を筆頭に善戦してくれたことがよく分かる。


  • 敗戦という国としての逆境から、如何にして再び復活するかを自らの使命とした男、白州次郎。時に荒々しく、時に強引でありながらも、いつも格好良くあり続ける魅力は何か。
    やはりそれは本文でも繰り返し述べられている「プリンシプル」なのだろう。周囲からは突拍子がないように見える態度や行動も、実は彼が貫く筋、信念があるからこそであり、GHQとも対等に渡り合える強さであると感じた。
    同調圧力の強い日本において、その存在の大きさや果たした役割を知ることができるいい機会となった。
    自分のプリンシプルは何か?を考えるきっかけにもしたい。

  • 長谷部の『心を整える』に出てきてて、本田も読んでいたということで興味が湧いて読んでみた。
    マッカーサーを怒鳴りつけたエピソードが一番印象に残った。
    誇りを持ち、自分の考えをはっきり伝えられるところが凄い。
    憲法が駆け引きでこんなドタバタして創られたものとは知らず、敗北を感じた。

  • 白洲次郎という人のことを知ったのはいつだったのかな。

    政治やビジネスで具体的に何をしていたかはよく知らず、「お金持ち」で、日本がまだまだ田舎だった時代に「おしゃれに生きる」「ライフスタイル」という概念を持って生きた洒落人である、ということだけ印象にあって。

    この本を読んで、ずいぶん日本の近代史に関わってきた人なのだな、それをまったく知らなかったなんてと驚いた。

    明治、大正、昭和と大きな時代の変わり目に時代の最前線に立っていたのに、その功績が周知されていないのは、表舞台に立つことよりサポート役として立ち回ることを好んだ人だからか。

    自分の正義や主義をまげることなく最後までかっこよく生きた人。

  • 次郎さんかっこよすぎです。

  • とにかくカッコいい
    有名な逸話は虚偽だと言う意見もあるけれど、うーん…

  • 北康利による白洲次郎の伝記。次郎の幼少期から戦後GHQ統治時代の憲法改正プロジェクトへの関わりまでを描き、サイドストーリーとして妻の正子や父の文平、祖父の退蔵、また友人となった近衛文麿や福沢諭吉など著名な人物たちの背景まで語られる。戦争に向かってゆく・敗戦後処理を行う日本における重要人物が白州次郎のストーリーを軸にしながらこれでもかというほど登場するため、歴史の勉強になる。また、白洲次郎に期待される豪快なエピソードも多く登場するため、面白い。

    超上流階級・大金持ちの生まれで、留学などもしながらのびのびとした生活を送る中で育まれたのが、「プリンシプル」と考えると、この人が「プリンシプルのない日本」とか言ってるのはいただけない。ただ、なにが彼の優れた人間性を形作っていたかといえば、真っ直ぐ・素直で、情に厚く、信念のためには地位も気にせずに自由闊達であったということは疑いなく、こういう心持ちは持っていたいと思った。また、とはいっても、上流階級のなかでのびのびと、媚びへつらったりもせずに過ごしていたのはレアなのかもしれないが、そこそこ空気も読んだり、謝る時は謝ったりと、単なる傍若無人であればいいというわけでもないので、バランス感覚を学ぶのはなかなか難しい。

    思い出すと、こういう「プリンシプル」というのは、彼なりのモラル、教養のことであって、自分なりに高潔に振る舞おうというプライドや意識が高かったことの表れなのではないかと思う。そういう意味では自律の人であったのだと思う。

  • 今の自分の境遇に照らしたく読了

  • 面白かった。信念•意志の強さですね。
    モチベーションあげるためにビジネス本の間に挟みましたが、こういった本のジャンルは初めてでした。
    下巻読みます。

著者プロフィール

昭和35年12月24日愛知県名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家として富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長等を歴任。平成20年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。
著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞受賞)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』『吉田茂 ポピュリズムに背を向けて』『佐治敬三と開高健 最強のふたり』(以上、講談社)、『陰徳を積む―銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)、『西郷隆盛 命もいらず名もいらず』(WAC)、『胆斗の人 太田垣士郎―黒四(クロヨン)で龍になった男』(文藝春秋)、『乃公出でずんば 渋沢栄一伝』(KADOKAWA)、『本多静六―若者よ、人生に投資せよ』(実業之日本社)などがある。

「2022年 『稲盛和夫伝 利他の心を永久に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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