愛でもない青春でもない旅立たない (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764926

感想・レビュー・書評

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  • 夢もなく目標もなく確固たる趣味も主張もない。そんなとっても「今風」な大学生の独白。いわゆる「意識の流れ」で読ませる小説。

    内面描写はとても上手。実に臨場感がある。
    主人公が見た、感じたとおり、読み手にも感じさせる文章力には感嘆させられる。
    ふと目にしたものから、考えが飛びに飛んでいつの間にか妙に壮大なことを考えていたり、結局結論が出なかったりするような物思いって、よくあるよなあ。と同感できる。

    さてじゃあ、話が面白かったかというと微妙。
    これは年代が近い自分からすると、実に「ふつう」な日常すぎて・・・。
    いや、最後の美術館のくだりはあり得ないけど、それ以外は実にふつう。

    ふつう、ふつうで来て、最後に美術館は意味がよく分からないし、夢に出てくる少女にも答えはない。

    何か隠されているのかどうか。ただ読書体験としては面白かった。

  • 「僕は変わる。僕を貫いている確固たるものはなんだ。刹那刹那の僕を数珠のようにつなぐ糸はなんだ。記憶だろうか。人格なんてものが便宜上の言葉に過ぎないことはとうの昔に知っている。(略)僕はあの時元宮ユキとセックスをした自分と、今こうしてセックスをしたときのことを考えている自分が同じ人間だとは思えない。単に数珠をつないでいた糸がぶつぶつと切れて、刹那刹那の僕がころころと分離したにすぎないのかもしれない、いやもとから数珠をつなぐ糸などないのだ。きっと。」

    みずからの無意識の世界までさらけ出して、自我の同一性や存在理由についての懊悩とそんな思弁を圧倒してしまう身体的な欲動とのたたかいが生々しく言語化されている。

    そして、おのれ自身は変わっていなくても、世界のほうはすっかり変わっていたり、自分が思い描いていたものとは異なっていたりするかもしれない、という無気味さ。

    「清潔で落ち着ける場所だと思っていた部屋のじゅうたんをめくって見たら裏にびっしり小さい虫がいたような、それまで何も気付かずに暮らしていただけで、この世界のじゅうたんの下にはびっしり小さな虫がいて、それを知る前も知った後も状況にはなんら変化がないのに、世界は無気味に変わってしまったように見える。」

    ビジュアルイメージをまざまざと追体験させる描写力と、そのイメージと欲望との連想がすばらしく、圧巻のラストまで一挙に読み切ってしまった。

  • 前田さんの処女作。結末ぶっとんでます。好き。

  • 鳩々って言い方は真似していきたい。

    斜に構えることが前提となっちゃったような世の中で、自意識のいざこざをちゃんと書こうとすると幽玄になるのかな。幽玄っぷりに美化と憧れが無いところが素敵でした。

  • 前田司郎のデビュー作。現実と夢が入り交じった圧倒的な世界観の中で、くだらなくも切ない青春が繰り広げられる。最初から最後まで衝撃でした。

  • チラシの裏にでも書いてろって思った。

  • 表現方法が豊か。心理描写とか、独特で面白い。何より文章の流れが心地良い。あー、こんなこと思ったりするよね!という頭の中のくだらないことが沢山で共感できる。

  • 元宮ユキと主人公の性交シーンが面白くて何回も読み返してしまった。

  • 意味はよく分からんけど嫌いじゃない。
    大学生のうちに読んどいて良かったかなと思う。
    学内の様子とか和光生にとってはほんともう眼に浮かぶようなので不思議な気分です。

  • 小説なんかによく出てくる、どこにも行き場のないような閉塞感のある学生生活を描いた作品。文体は結構好き。何でもかんでもエロに紐づけて考えてしまう主人公にも結構共感が持てたりして。もうちょっとボリュームがあればなぁ。

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著者プロフィール

1977年生まれ。劇作家、演出家、俳優、小説家。和光大学人文学部文学科在学中に劇団「五反田団」を旗揚げ。2005年『愛でもない青春でもない旅立たない』(講談社)で小説家デビュー。同作が野間文芸新人賞候補となる。2006年、『恋愛の解体と北区の滅亡』(講談社)が野間文芸新人賞、三島由紀夫賞候補、2007年、『グレート生活アドベンチャー』(新潮社)が芥川賞候補に。2008年には、戯曲「生きてるものはいないのか」で岸田國士戯曲賞受賞。同年、『誰かが手を、握っているような気がしてならない』(講談社)で三島由紀夫賞候補。『夏の水の半魚人』(扶桑社)で第22回三島賞。その他の著書に、『逆に14歳』(新潮社)などがある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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