さようなら窓 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.68
  • (25)
  • (34)
  • (35)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 335
感想 : 49
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062771665

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ふわふわときゅんとする、感じが好きです。
    ゆうちゃんはすてき男子。こんな人いたら甘え過ぎてしまいそう。

    不安定な人ってすごくいるけど、ただ甘えてるんじゃなくって、心が弱いんじゃなくって、難しいところにいるんだと思う。
    きいちゃんのように、何かのタイミングで気づいたり変われたりするといいな、って思う。

  • ひらがな多めの童話タッチのトーンで、全体の雰囲気も、ひとつひとつのエピソードも嫌いではないんですが、個人的には主人公「きいちゃん」のキャラが最大の難点でした。申し訳ないけど全く共感できない。

    他人と上手くまじわれないのは感受性が強いから、不幸な生い立ちだから変わった子に育っても仕方ないみたいな、自分を甘やかしてる感じがとても苦手です。結局そういうのって、弱い自分、繊細で傷つき易い自分が大好きで自己陶酔してるとしか思えない。不思議ちゃん、と括ってしまえばそれまでだけど、この子の言動があまりにも幼稚でイライラしすぎて、途中何度も本を投げそうになりました(こらこら)。「サイレントきつねさん」とか、素直な人はほのぼのするかもしれない場面で、「しばいたろか!」と思う私が心の汚れた大人なだけでしょうか。

    一方彼氏の「ゆうちゃん」は、基本的にはすごく良い子で、彼が「きいちゃん」に語って聞かせるエピソードはどれも一つの物語として成立していて、その部分はとても魅力的でした。ただあまりにも良い子すぎて、もういっそドリームっていうか、逆に都合の良いだけの男っていうか、あるいは逆に病んでる子しか好きになれない彼もまた病んでるのかなって思ってしまう(後者はある意味正解)。そういう意味ではラストだけは正解だと思うし、最終的にヒロインが成長するためにはスタート地点では未熟であることは必然なのかもしれないけれど、これはもう個人の感じ方ですよね。私は本当にこの主人公の性格は受け付けなかったし、絶対友達にもなりたくないし、結局最後まで拒否反応しか出なかった。心のきれいな人だけ読むがいいよ。

  • 帯タイトルは、
    「西加奈子さん推薦!
     ‘ふわふわしている癖に、
     どうしたって胸を掴んで離さない’」

    「眠れないなら、またなにか話をしてあげようか」
     眠る前に一編ずつ味わいたい、現代の「千夜一夜物語」



    文章の感じが小説っぽくないなーと思っていたら、
    歌人の方だったんですね。

    ゆうちゃんときいちゃん。

    気弱で生真面目で甘えん坊。
    たぶん、苛々する人もいるんでは。
    私は好きです。
    こーゆー、淡い感じの本。

    文章がまぁるい感じです。
    本当物語というか絵本というか、
    小説!って感じがしない一冊です。

    外では居場所を見つけられずに
    唯一自分でいられる場所が
    恋人である美容師ゆうちゃんの住むアパート。

    眠れないきいちゃんのために、
    ゆうちゃんが話す不思議な物語が主軸で
    展開していきます。

    ゆうちゃんが話す物語が
    きいちゃんの現実に少しずつ影響していき
    不思議な出来事も起こります。

    最後、
    きいちゃんも
    ゆうちゃんも
    自分自身や相手を見つめて
    動き出すように
    切なくて優しいハッピーエンドでした。

    最初の一編が「青鬼」でしたが、
    最後まで読むと、
    すごく納得なんです。

    一冊全部読み切って
    青鬼を読み返すと、
    そーなのかあ、最初が青鬼だったのって
    意味があったのかな、って。

    やさしくて綺麗で愛しいだけではなくて、
    どこか終わりや最後を感じさせてくれるスパイスが入っています。

    「どっかにぶつかってもさあ、
     気がつかなくて、
     どんどん当たっちゃって、
     こうなっちゃうんだよね。
     痛くなさすぎて、
     生きてるかどうかも分かんないって感じ。
     もう人生そのものがわけ分かんない」


    愛しく不器用な人ばかり。
    優しくて不器用な人ばかり。
    自分勝手でワガママで憎めない人たち。

    青鬼はどうなったんだろう。
    どんな気持ちだったんだろう。

  • ゆうちゃんときいちゃんの幸せな生活。幸せな生活がなぜか悲しいのはそれがいつか終わるから。

    それにしてもピョートル大帝はその後どうなったのでしょう。

  • 反則だ、と思う。説明したくないな、と思う。ただ一つ言えるのは、わたしはきいちゃんではないのに、どうしようもない気持ちになったということ。

  • 歌人の著者。
    小説は初めて読んだ。
    雰囲気がすごく好き。
    なんだろ、色で言ったら、薄い水色か緑色な
    さやさや~とした感じの文章がとてもここちよかった。
    登場人物がみんなどこか不思議だけど優しくて、好きです

    引用。

    「仕方のないことって、どうしてこう、人生にまとわりついてくるんだろう、とため息をつきそうになった。」

    「あたしとゆうちゃんも、の続きは『ジャムみたいだね』だった。
     でも、そう言ったとたん、今のできごとが全部ジャムみたいにかたまって、
     思い出にかわってしまいそうでこわくなったのだ。だから、言わなかった。
     あたしとゆうちゃんの時間は、小さな炎で煮続けていくんだ。
     ずっとずっと、どんなに小さな炎でも、かまわないから。」

    「あたしの中に、『加減のわかる装置』のようなものがあればいいのに。
     いろいろなことの加減ができる装置。とくに心の加減の。」

    「おれは、男のストーカーなんかじゃなくて、この世でたった一人の、
     ずっとそばにいてくれる女の子が欲しいんだよ」

    「ゆうちゃんがあたし一人のものじゃないってこと、分かってる。
     よく分かってる。でも、今はここにいてほしい」

    「ゆうちゃん、好き。大好き。ゆうちゃんも、あたしのこと、ずっと好きでいてね。ウソでもいいから」

  • 登場人物の頼りなさも優しさも強さも、ひとつひとつの台詞も、全部まるごと大事にしたくなる。ここまで感覚的に読める小説もなかなかない。ふわっとしていながらもしっかりと着地するような、不思議な言葉の魅力がある。ひとりの目線から見る世界がふたり、その周りへと広がっていく過程がとても心地よく、儚くも何かが残る物語。

  • 2008年3月にマガジンハウス社から単行本として出版されたものを文庫化。

    メンタルに問題を抱えた20歳の娘・築(きずき)が、再生の道を歩みはじめるまでの12編の物語。きずきを支える心優しき美容師のゆうちゃんとの同棲生活が、いかにも現代的。でも、こんなに優しき男の子がいるかよと突っ込みたくなる内容。

    時系列に沿った12編の短編が一つの物語を構成するのだが、短いタイトルからなる各短編が独立した物語としても読める。次第に明らかになる、きずきの複雑な家庭環境。眠れぬきずきに聞かせる、ゆうちゃんの寝物語が実にユニーク。

  • こんなのには年を取りすぎてしまった。
    主人公中学生にしたらいいんじゃないか。
    精神年齢は小学生。

  • ちょっとワケありな家族と離れ、美容師をしている恋人の部屋に居候している女子大生が主人公です。彼女は少しばかり心のバランスを崩していて、大学も休学中。何をするでもなく、ただただ日々をやり過ごしています。そんな彼女が眠れない夜は、恋人がお話を聴かせてくれます。それは、子供の頃の友人の話であったり、むかし近所に住んでいた人の話であったり、アルバイトをしていた頃の同僚の話であったりです。著者は歌人でもありますから、言葉の使い方がとても巧みです。どれも取り留めのないお話のようですが、なんだか妙に心に引っ掛かります。
    ときには、なんだかおかしな人と関わりを持ったりしながら、少しずつ前に歩み始める主人公なのですが、得てしてこの世に命を繋ぎとめるもととなっているのは、取るに足りない日常的なことなのかもしれませんネ。

全49件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

歌人、作家。第7回歌壇賞、第31回坪田譲治文学賞(『いとの森の家』)を受賞。歌集に『春原さんのリコーダー』『青卵』、小説に『とりつくしま』『ひとっこひとり』、エッセイ集に『一緒に生きる』『レモン石鹼泡立てる』、歌書に『短歌の時間』『現代短歌版百人一首』、絵本に『わたしのマントはぼうしつき』(絵・町田尚子)などがある。「東京新聞」などの選歌欄担当。近刊にくどうれいんとの共著『水歌通信』がある。鳥好き。

「2023年 『朝、空が見えます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

東直子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×