「あなた」の哲学 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880329

作品紹介・あらすじ

「わたし」と「他者」だけで世界はできてはいない!思想史上の重大な欠落を問う。

感想・レビュー・書評

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  • 大衆は「あなた」を歌い、知識人は「他者」を論じてきた。という問題提起から論考を進めていく観点には興味深いものがある。が、内容的には書名とは違って哲学というよりは、「あなた」に纏わる日本語論・日本文化論になってしまっている。ただし、日本語における「人称の不安定さ」によって日本文化が形成されているという視点はこれまでなかったので新鮮であったし、今後留意したい点ではある。

  • 目次

    序章「あなた」と「他者」

    第一章 "三世代存在"としての「あなた」
    1 ある違和感―上野千鶴子『おひとりさまの老後』を読んで
    2 「あなた」を見つける―森崎和江の軌跡
    3 存在の三重性
    4 「すがた」への敬意
    5 『ツァラトゥストラ』における「あなた」

    第二章 「人称」の世界へ
    1 「あなた」は単なる二人称なのか
    2 日本語の「人称」
    3 『坊ちゃん』を読みなおすと
    4 「格付け」のなかで
    5 こころの傷と「あなた」

    第三章 飢えと老いのなかの「あなた」
    1 千二百年の時空を超えて
    2 『池袋・母子 餓死日記』考
    3 「そうかもしれない」の光景
    4 「小さな神さま」の発見

    第四章 ブーバー、レヴィナス、そして西田
    1 『我と汝』をめぐって―「汝」はなぜ「あなた」と訳されないのか
    2 レヴィナスのブーバー批判
    3 「きみ」と「あなた」のあいだ
    4 西田幾多郎の「私と汝」

    終章 「あなた」の方へ

    あとがき

  • 難しく、かつおもしろい。

  • 本書は、児童文化を専門とし

    現在は、同志社女子大学教授であるである著者が

    「あなた」という概念について論じる著作です。


    筆者は「おひとりさま」ブームなどに疑問を呈した上で、

    それらが前提とする哲学的な「他者」概念とは異なる

    日常の感覚に根ざす「あなた」概念の重要性を解説します。


    「あなた」概念が、「怪物」としての「他者」とは対極に位置するという指摘や

    フーバーやニーチェの訳をめぐる考察など

    興味深い記述は多くありました。

    なかでも、個人的に印象深かったのは、

    認知症の妻との生活を描いた、

    耕治人の小説『そうかもしれない』に関する箇所です。


    著者は「あなた」という観点から、

    当事者に寄り添うような、温かみのある「読み」を展開しますが

    そうした解釈とは異なる「読み」も紹介されています。

    私はその作品を読んだことがなかったので、

    この機会に読み、自分がどの解釈をとるのか決めようと思います。


    「あなた」概念を通じ、人と人とのつながり説きつつも、

    家族は大切という安易な一般論に帰着しない本書。


    いわゆる「哲学」的な議論に疑問を持つ方はもちろん

    多くの方におススメしたい著作です。

  • 「人称が人びとを格付けする機能を持っている」とする議論は新鮮に感じた。
    しかし、「あなた」と「わたし」の関係性、「あなた」と「他者」の関係性に関する議論の展開がいささか性急で、読者の理解を得られない可能性がある。そのため、後段の事例を絡めた展開が浮いてしまい、結果的に筆者の意識が迷走しているように受け取られる。
    提起するテーマは非常に興味深いものであるので、やや期待外れになってしまっているのが残念である。

  • 上野女史と中島先生についての人格的洞察が面白かった。で、内容は?

  • おお、わが図上の天空よ、清浄そのものよ!深いものよ!光の深淵を眺めると神々しい欲望のために、私は身ぶるいする。あなたの高みの中に、この身を投げ込む、これが私の深みだ。あなたの清浄さの中に、この身を隠す。これが私の無罪過にかえった姿だ。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ、評論家。
著書『初期心的現象の世界』『「いのち」論のはじまり』『「あなた」の哲学』『徹底検証 古事記』『古事記の根源へ』『『君たちはどういきるか』に異論あり』『いじめの解決 教室に広場を』『吉本隆明 忘れられた「詩的大陸」へ』ほか、多数

「2023年 『詩文集 織姫 千手のあやとり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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