原発社会からの離脱――自然エネルギーと共同体自治に向けて (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881128

感想・レビュー・書評

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  • 机上のシミュレーションでは当然負けるはずだった日米開戦になぜ突き進んだのか、なぜ私たちは原発を「選んだ」のか。ショッキングな冒頭の文章から一気に読んでしまいました。小さい頃、親につきあって原発反対のデモ行進につきあったことがあります。あのときはすごくざわざわした感覚がありましたが、たしかにいつのまにか私たちは原発の現実を見ないようにしてきましたから「選んだ」といえるのでしょう。飯田哲也さんという人の本を初めて読んだけど、もっと読んでみよう。

  •  2011年3月11日の大震災で福島第一原子力発電所が再起不能の大事故を起こしたのを契機として原発の存続の是非が議論されている。いまや日本の電力の2割強を閉める原子力発電が今回の事故で閉鎖もしくは縮小の道が模索され、日本全体が節電や自粛の渦中から抜け出せない。
     原子力の穴を何かで埋めなくてはならない。不足する電力をいかに補うのかは焦眉の急だ。しかし、次のエネルギーをどうするかという議論にはなかなか進まない。それは我が国の構造的な問題がある。本書はまさにそうした現体制への批判書として読むことができる。
     飯田哲也氏は原子力発電の技術者出身で、その内情を知り原子力の欠点と将来性のなさを悟って自然エネルギーへの転換を主張する科学者であり、実践者である。内情を知るだけにその言葉の重みはあり、関係者の名前を明記したかなり生臭い話まで登場する。それは本書が対談という形式をとっているからこその特徴だろう。
     本書には大企業によるエネルギーの独占状況に関しての強い批判がある。確かに日本人にとっては電気はその地域を広域で取り仕切る電力会社から買うものというのが常識化しており、その大規模な電力事業を確保するために、供給地から遠くはなれた過疎地に発電所を造るというのが無批判に受け入れられている。福島や柏崎、さらには東通までが「東京電力」であることを知らずにいた関東の住人が大多数だろう。
     今回の震災で原子力発電は現況のまま継続することはきわめて危険であることは分かった。震災がなくても核サイクルの技術的破綻でやがて行き詰ることは目に見えていたのである。反原発の動きは今までもあったが「非現実的」の名のもとに抹殺されてきた。それが逆に原発を使えず困窮する現実に結びついたのはなんとも皮肉なことであった。
     本書には原発なきあとの日本のエネルギー事情についての提言が少しだけある。例えば、自然エネルギーへの転換を進めるとともに、小規模な発電設備を増やしエネルギーの自治やネットーワーク状に電気をやりとりできる方法を模索するべきだとある。しかし、この点に対する言及は極めて少なく、私のような門外漢が具体的なイメージを構築するにはいかにも物足りない。つまり本書は現状への批判の書としては一定の役割があるが、将来への提言としてはかなり物足りない。対談集という形でまとめた限界といえるのだろうか。
     エネルギー問題に関するリテラシーはもっと高めなくてはならない。本書のような啓蒙書でさえ、意味不通の文言が数多く出ている。それは私の勉強不足が最大の要因ではあるのだが。

  • 社会学者である宮台真司氏と、環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長の飯田哲也氏が、3・11後の超多忙のなか、2日間をどうにか絞り出して行われた長時間にわたる対談をまとめた一冊。

  • この本は、冒頭から最後まで、目の覚めるような指摘、論点に満ちています。「環境・エネルギでは欧州に対して30年遅れている」、「原発推進・反対の2項対立は不毛」、「新エネルギー=コスト高、のうそ」、「中央から地方役人に権限を渡してもダメ」など。もちろん対談なので正確な理論展開はしていません。むしろ大事なのは、読者が政府発表、世の中の雰囲気、俗論に惑わされずに、「自分で確認し、考え抜くこと」態度のほうでしょう。お2人が説く「共同体自治」というのはそういう社会の姿なのだと思います。

  • 原発事故後,より注目されている飯田哲也氏と宮台真司氏との対談本.前半は宮台真司氏の独演傾向あり(宮台真司氏がダメな人には不向き).後半になり飯田氏が前面に出てきて,私が勉強不足で知らない情報や氏の考えを示してくれる.東京都が先進的な環境政策を実行していることは初めて知った.東京電力と株主を守ろうとしていることに違和感を持っていたが,「東京電力が全ての財産を出す.次に株主で,それに融資した銀行.それでも賠償に足りなかったら,原発埋蔵金 再処理等積立金を使う」とコメントしていることには溜飲が下がった.

  • 緊急出版!!
    「環境エネルギー政策研究所ISEP」飯田哲也所長http://www.isep.or.jp/

    宮台真司教授http://www.miyadai.com/
    による共著です。

    表紙やまえがきの
    ☆これからのエネルギーとこれからの政治を語ろう
    ☆「原発をどうするか」から「原発をやめられない社会をどうするか」へ
    に象徴☆

    イデオロギーやら反社会的?やらな内容ではなくて、
    東日本大震災を機に私たちが気付いた、
    生活に密着した疑問や違和感に寄り添う情報だと思います。

    ぜひ皆さん、一読を!

  • 宮崎氏の堅苦しい話が展開すると思いきや、飯田氏の熱くクールな話で向かうべき方向性は示してもらったように思う。
    あとは誰がやるかだが、一人一人が空気に流されず自覚を持って主張し行動するという、世界の中では至極当たり前のことが日本人に、私自身に求められている。

  • 読了。原発推進を止められなかったのは、組織とか構造の問題。原発のみならず、未来のためよりも自分の組織のため、変えることに対する許容が少ない、この考え方を変えなければならない。

  • こういうのはタイムリーに読んでおかないと、と思って他の積読に優先して読んでみた。

    こういう対談本は議論の展開が速くて、理解が浅くなっちゃうけど、キーワードはたくさん盛り込んであるから、それをもとにわからなかったことを他の本とかで調べるといいかも。

    知識はたくさん仕入れることができたんだけど、なんとも救いがなく、読んでてちょっと凹んでくる内容だった。

  • 久しぶりに発売日前に予約して、急ぎ読んだ本。ここでいま形にしようという意気込みもきっとあったはず。

    素晴らしいのだけど、これをどう広めたらいいのかとひたすら思う。

    真新しいことより既にあったことのが多い内容で、だからこそ。そうなったらいいな、こうできたらいいな、こうしたいな、は確かに頷き意気込むばかりなんだけど、じゃあさあ今日明日どうする、という課題は、わたしごとき一人じゃあんまりにも実践的でなく思いつかない。何ができる気もしない。砂漠に一滴の水。だからこそ。

    南は今回の件で助かったのではなく置いていかれた結果になりはしないかという予感が日に日に強くなっている。意識や文化のレベルで。それこそ、空気が。

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著者プロフィール

宮台真司:1959年宮城県生まれ。社会学者、映画評論家。東京都立大学教授。1993年からブルセラ、援助交際、オウム真理教などを論じる。著書に『まちづくりの哲学』(共著、2016年、ミネルヴァ書房)、『制服少女たちの選択』(1994年、講談社)、『終わりなき日常を生きろ』(1996年、筑摩書房)、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(2014年、幻冬舎)など。インターネット放送局ビデオニュース・ドットコムでは、神保哲生とともに「マル激トーク・オン・ディマンド」のホストを務めている。

「2024年 『ルポ 日本異界地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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