- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062882101
感想・レビュー・書評
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予想通りの内容ではあったものの、☆は1つ。
(後日加筆)制裁点数0点は今年も。この点と書内の考え方はなんといってもほめられるべきもの。捉え方では交通事故にも共通するものがあり、リスクとの関連を考えているコアの部分は重要。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
藤田騎手は、競馬ファンから「番長」と言われているくらい個性の強い騎手だが、この本を読むと渾名とは違って至って真面目な感じを受けた。毎年のようにフェアプレイで表彰され、重賞もデビューから20年も継続して勝っており、騎乗技術もモラルも実績にも自信があるから、このような本が書けるし、競馬ファンの間で評判になるのだろう。
この本では、競馬システムの紹介、現在の競馬興行の傾向、騎手仲間のことや騎乗技術のことを思いつくままに?褒めたり批判したりしているけれど、総じて批判の矛先はJRAの不合理な制度に向けられているようだ。
JRAの制度批判は、馬主からも競馬記者からもあるが、所属する当事者もいろいろな問題を抱えながら騎乗を行っているようだ。騎手減少の問題、若手騎手育成の問題、乗り替わりの多さ、エージェント制度、調整部屋の問題など、将来の競馬興行に関わる懸案について、自身の見解や不満を述べている。
率直な感想として、彼の不満もよく判るし、競馬をより良くしたい気持ちもよく判る。でも本文中に何度も書いているが、「俺はいつでも辞められる」というスタンスで物を言っても、何も変わらないような気もする。もし競馬興行が利益を求めないボランティア事業であれば、彼の意見を取り入れた制度にできるかもしれないが、ギャンブルでは、誰もが利益重視であり、興行主のルールに従うしかない。もし彼が本気でJRAの制度を変えたいのなら、JRA組織の頂点に立って提言するしかないのでは、と思った。
それはともかく、騎手の裏事情がよく判って、一競馬ファンとしては面白く読めました。 -
競馬がつまらなくなった―大手クラブや外国人騎手がGIレースを総ナメするようになって、レース自体も凡庸なものが多くなっている。薄々感じていたことが、ジョッキーの目線からも明らかにされていて、これはJRAを覆う構造的なデフレスパイラルなのだと理解した。
藤田伸二といえば、武豊と並んで関西のトップジョッキーとして1990年代から2010年代まで活躍してきた超一流だが、彼の2013年の勝ち鞍は50勝足らず、あの武豊ですら100勝に届いていないという有り様だ。
彼らが衰えたのかといえば、そうではない。武豊の日本ダービーやマイルCSでの騎乗はまさに豊マジックの真骨頂だし、むしろ近年の乗り方は年間200勝していた頃よりも凄みを増しているように思える。
http://number.bunshun.jp/articles/-/764085
問題は、田原成貴の不祥事などで競馬界が萎縮して、これまでの徒弟制度や義理人情で動いていた騎乗依頼をエージェント方式にして、官僚的なマネジメント構造を導入していったJRAにある。
結果として若手騎手を育てようといった余裕のある調教師や個人馬主は減っていき、システマチックに強い馬を効率よく勝たせるレースが増えてきた。つまり、大穴もあり得るようなギャンブルとしての競馬の麻薬的な魅力が薄れ、体系化されたスポーツとしての純化を図っていった結果、今の競馬界の低迷が起こっているのだ。
果たして競馬が再び人気を取り戻すのかどうか、それは分からない。極論してしまえば、今やコンピューターゲームの中でもある程度の操作を加えれば、システマチックに競馬を運用できてしまう現実がある。
それでも競馬を観たい、と思わせるようなめちゃくちゃ強い馬の登場だったり、個性的なジョッキーの活躍を、我々競馬ファンはまだまだ望んでいるのだ。 -
なるほどー。
競馬の世界も商業主義、効率主義が蔓延っているということですね。
と、納得してしまうところ、自分も歳を取ったということでしょうか。 -
ここまで書いても大丈夫なのか?と少し心配になるくらい、はっきりモノを言う藤田騎手らしい本。
引退までに一度、自分の馬に乗ってもらいたいと願う。 -
自分にとっては、いろいろな意味で身近な存在な「競馬」、
馬券はあまり買わなくなりましたが、春秋のG1はチェックしています。
ちなみに一番力を入れて観ていたのは大学生の頃、
エアグルーヴやグランワンダーの全盛期の時代でした。
確か、著者・藤田さんがデビューされたのもその頃で、
世代的にはほぼ同世代なんですね、、ふーむ。
こちらは、そんな藤田さんが、今の競馬界、、
特に“JRA”に対してモノ申した一冊となります。
“JRAが「国際化」の意味を履き違えた結果が、こんな事態を招いている”
売上ベースで言えば、オグリキャップの頃がピークで、
その後はほぼ前年比マイナスで推移しているそうです。
その後、ディープインパクトの頃にやや復調しましたが、
あくまで一過性のもので、、状況はあまり変わらずのようで。
“職業としての騎手の魅力が失われかけてきている”
昔と比べて選択肢が劇的に増えているのも理由としてはあるでしょうが、
もっと根源的なところで間違っているのではないか、と。
“エージェント制度の導入や外国人騎手の多用によって、
長期的な視野で騎手を育てようとする風潮がなくなっているけど、
このままでいいとJRAは本気で思っているのだろうか”
騎手は、大けがをするリスクも高く、下手をすると命にも影響します。
そのリスクをとってまで、なりたいと思う職業ではないのは、、
国内の若い世代を育てようとする気概が失われているから、
また、今の若い世代にとっての憧れとなる騎手がいないから、なのでしょうか。
私たちの世代は、武豊騎手や岡部騎手、柴田騎手に憧れて、
藤田騎手や武幸四郎騎手、横山騎手にシンパシーを感じた覚えがあります。
また、以前は1000勝で調教師試験免除だったそうですが、
その仕組みもなくなって、現場の騎手にとってはそれも厳しいようです。
ここ数年、ルールメイカーとしてのJRAの姿勢が問われていると思います。
競馬を盛り上げたいのか、既得権益の塊にしたいのか、の岐路に立っているかと。
そして、ここ数年の競馬学校の入学者の減り具合が壊滅的でもあるようで、
近々、久々に女性ジョッキーが誕生するそうですが、活性化の一つになってほしいですね。
世代を問わず、同世代のヒーローがいなければ、共感は厳しいかなと。
“人馬一体”の美しさは、競馬の醍醐味の一つと思うのですけどね。。
そして、その“一体”は場外でのつながりも決して無縁ではない、、と感じています。 -
口述筆記だろうが、とても読み易い。
その上に、ここまで言っちゃうのか、と少々感嘆するほど、競馬界の内幕を赤裸々に明かしてしまっているから、読み物として実に面白い。
決して素行が真面目とはいえないが、男気を備え筋は通す藤田伸二という男が、恐らくは熟慮の末に辿り着いてしまったJRAに対する底なしの諦念が、一冊を通じて貫かれているのが、ちょっと物哀しくもある。
言っていることは至極真っ当なんだが、真っ当なことが必ずしも罷り通るわけではない現代社会の一つの標本が、普遍的な例として示されているだけ、と受け取ることもできる。
不良のイメージが強い藤田伸二騎手だが、特別模範騎手賞を2回、フェアプレー賞を17回獲得していて、どちらも歴代1位だとは恥ずかしながら知らなかった。 -
もっと精神論的な本かと思ったが、競馬と競馬業界の話らしい。
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時代の変化を許すことができなかった頑固な騎士が、『おれらが若い頃は良かったのに』と昔を懐かしみつつJRAへの不満を言う。
現状を変える為になんかする気がないのに愚痴ばかり。騎士の一分なんてどこにあるんだ?