げんきな日本論 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883917

感想・レビュー・書評

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  • この書名の「元気な」は「日本」ではなく「論」にかかる言葉。日本史の18の質問を社会学的観点から語り合う。まずはなぜ日本は土器が発展したのか?から。なぜ日本で大きな古墳が発達したのか。なぜ日本は貴族階級、そして武士階級が生まれたのか、天皇を超える存在になろうとした信長を象徴する安土城など、興味深い根源から考えさせてくれるテーマが多い。貴族の代表格でもある藤原氏は爵位を継承していたわけではない、その権力の根源がどこにあったのか。武士の存在は日本にしかない!などは全く考えたこともなかったが、実にスッキリとした感じ!幕府と天皇の関係を巡る微妙な力関係が、北条義時の承久の乱の戦後処理、後醍醐天皇の失敗などから解き明かされる。天皇制が残る謎の解明でもある。平安時代の女流文学から発展した平仮名・片仮名論議も面白い。片仮名は最もプリミティブな感覚の層を表現する文字だとの説明は全くその通り!「常備軍がなく、国税も徴収しない徳川幕府がなぜあれほど強力だったのか。それは誰もが、幕府は強いと思っていたその意識にあった」とは皮肉ではなく、それでこそ幕末に急に幕府が弱まっていく謎が解けるように思った。

  • 年末年始に何読もうかと書店を物色して目に留まった本。
    「元気な日本論」というタイトルと橋爪大三郎さんに魅かれた。413ページと新書にしては大部だけど、対談形式なので苦にならず読めた。
    「なぜ日本には、天皇がいるのか」、「なぜ日本には、幕府なるものが存在するのか」、「なぜ信長は、安土城を造ったのか」などの興味深い問について、日本史の授業では教わらない-主に社会学の-観点から学べた。
    ただ、古代からはじまった対談が明治で終わってしまうのは日本史の授業と同じか…。

  • 2016/12/28

  • とてつもなく賢いおっさん二人の話を立ち聞きしたら、ちょっとは分かる部分もあったし、分からない部分は分からないなりに面白かった。
    そんな感じ。
    全部理解しようと思わなくていいし、どんどん読み飛ばしたっていい本だと思います。

    何しろ、「一人で考えていたら悶々としちゃいそうな話も、二人で話したら膨らむんでないの」という気楽なスタンスに救われた。

  • 橋爪氏と大澤氏の日本史に関する対談。
    古代から幕末までですが、もう少し近代史も範囲として
    話をしていったほうが、と思います。
    なんとなく日本史って幕末。もしくは明治・大正までで
    終わってしまう傾向にあるので。
    日本の特殊性やその必然性など、中国やヨーロッパと
    比べて日本の武士や封建制の特殊さなど。
    なかなか面白い内容だったと思います。

  • 「不思議なキリスト教」の橋爪氏と大澤氏が、日本史をテーマにした対談本。
    欧州や中国と比較しながら縦横無尽に議論を展開し、日本史のユニークさを浮き彫りにする。
    ご両人とも社会学者だが、溢れんばかりの歴史の知識に驚愕した。
    本書のタイトルは「げんきな日本論」。最近のTV番組のような日本礼賛の色彩が強いのかと警戒していたが、当然のことながらそんなことはなく、府に落ちながら読み進めることができた。

  • 不思議なキリスト教と同じようなスタイルの本。正統性の確保にいかに腐心してきたかという観点が一貫して底流に流れている。基本的には長く続いているものに依拠するのが日本で、唯一その文脈から外れるのが織田信長。信長が天下をとった日本をみてみたい。

  • 『ふしぎなキリスト教』でおなじみの橋爪氏・大澤氏の対談。古代から幕末に至る日本史の特色を語りつくす。
    興味深い内容が多いが、僕が特に印象に残った点をいくつか列挙したい。

    1、武士とは馬を飼い、操る技術に習熟した人々であったという事。そのような人々が荷役や商人の護衛をしつつ実力をつけていった、という説。「馬」という動物を中心にす据えて武士を論じるというのは新しい視点だと感じた。

    2、藤原薬子の乱は貴族が武器を取って戦った最後の戦いであること。承久の乱は天皇と武士が真っ向からぶつかった初めての戦いで、武士が勝利したという意味で画期的だった・・・等々。歴史に関する知識を増やすことができた。

    3、信長のこと。安土城のデザインから、信長は天皇を安土に招くことを構想していたらしい。「招く」というのは目上のものが自分より下の者に対して行う事。つまり信長は天皇を下に見ていた、という事。信長の天皇観は大いに議論されているが、この考えは面白い。

    4、秀吉については、「いつ信長が死んでもいいように準備していた。だからあんなに早く動けた」と書いている。常にあらゆる場面を想定していた、ということは信孝や柴田勝家は秀吉の中では常に「敵」だったのか。そう考えると秀吉は恐ろしい男だ。

    5、江戸時代は流動性のある社会だった?武士から商人、、商人から武士という階級を超えた移行はできなかっただ、同じ階級内の流動性はあったという。大抵の農民が一生に一度は江戸に行ったことがある、というのも驚きの説。

    『ふしぎなキリスト教』もそうだが、この二人の対談は非常にわかりやすい。読みかけて挫折した『おどろきの中国』にももう一度挑戦しようかと検討している。

  • グローバル化が進む世の中で、日本ってそもそもどういうものか?を考えた時に参考になると思います。
    縄文~明治維新まで、日本のガラパゴスっぷりがよくわかる対談でした。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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