あなたは、誰かの大切な人 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936606

感想・レビュー・書評

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  • 大人の独身女性を主人公とした6つの短編を収録。単行本は2014年刊行。

    「最後の伝言 Save the last dance for me」、「月夜のアボガド A gift from Ester's Kitchen」、「無用の人 Birthday surprise」、「緑陰のマナ Manna in the Green Shadow」、「波打ち際のふたり A day on the Spring Beach」、「皿の上の孤独 Barragan's Solitude」

    「波打ち際のふたり」(母親の介護に直面した悩める女性のお話)は、「ハグとナガラ」にも入ってた(本書に先に収録されてたんだな)。

    経済的にはそれなりに安定した独身仕事女性たちの様々な人生の断片。6作品の中では、何といっても「最後の伝言」が印象的。父親がイケメンの遊び人、いわゆる"髪結いの亭主" というヤツで、母親の葬儀にも遅参して呆れられる(でもちょっとホロッとする)、という強烈な話だった。

  • 心が疲れた時にちょいちょい読み返している。
    みんな色々あるよね…みたいな感じに癒される。

  • 「おもしろくて、残りのページが減っていくのがさみしい」という感覚を初めて味わった気がする。

    元々そこまで長文を読むのが得意ではないから、本を読むこと自体は好きではあるけど、それより読み終わった時の達成感やストーリーが完結したときの満足感を楽しみにしてるところがあって。

    でも、この作品は読んでいる"その時間"が本当に充実してました。

    本作のような作品を書きつつ、「旅屋おかえり」みたいなアットホームで陽な雰囲気な作品も書けちゃうんだから、マハさんすごいなぁ。

    本作は大人の女性たちの6話短編集。生きてりゃ色んなことがあって、歳を重ねるほど、過ごした月日の分だけ人間関係も深くなったり、複雑になったり、それに伴う感情もまたしかり。頭じゃ分かってるけど、白黒つけられないこともある。案外グレーのままでいいときもある。ポジティブもネガティブもまるっと受け止めるしかないことを経験で学んだような大人の女性たち。そんな女性たちの大切なひととの関わり。

    社会人2年目の頃。求人広告の新規営業で、目標売上に追われて、毎日当たり前に残業続きだった。年末の最終日、旅行の準備を駅前のコインロッカーに忍ばせて、就業時間になるやいなや同期の女の子と飛び出して、越後湯沢へスノボ旅行に行ったの思い出した。
    数時間前まで銀座でスーツで仕事してたのが嘘のような雪景色と露天風呂。露天風呂の入り口に「雪が多いときにご利用ください」って笠地蔵みたいな藁の笠が置いてあって、24歳の女子2人、全裸に笠だけかぶって笑いながら露天風呂入ったのは本当にいい思い出。

    あれから15年。娘が産まれて2年8ヶ月、いろんなことへの不安、不満、イライラ、焦り、悲しみ、疲労。もちろん娘の成長の喜びや可愛さなどポジティブなこともあるけど、圧倒的にネガティブな感情に覆われてる毎日。もっと大変なママはもちろんたくさんいるだろうけど、娘の健やかな毎日のための健康管理や、笑顔で接すること、おどけること、娘のイヤイヤに冷静に対応すること、自分の感情を殺して褒めたり叱ったりすること。言葉にすれば当たり前のことだけど、陽キャもどきの根暗な私にはソウルジェム( )が曇るように自分でも自覚がないうちに溜まっているのだなぁと思う。
    爆発してヒステリックになったり、溜め込んで育児ノイローゼになったりって聞くけど、そりゃあるよなぁと思う。

    そういう今までの日々の頑張りを肯定されるような時間を過ごせました。




    子育てママならみんな同じしんどさ、なんなら私はお金に困らない専業主婦をやらせてもらってる分、幸せなはずなのに何がしんどいのかなって答えが出なくてしんどかった。

    専業主婦だから職場もない、旦那の転勤についてきてるから近くに友達どころか知り合いもいない、そういった社会的欲求の不満。
    上記のことが無いので承認欲求も満たされない。そして自己実現の欲求も満たされない。

    マズローの五段階欲求でいうところの生理的欲求と安全欲求が人一倍満たされたところで、それ以上のことが満たされてないことには変わりがないのだなと気付いた。

    仕事がしんどくて鬱病になったこともあったけど、今のように社会人としても女としても市場価値が下がっていく事実と、それに対して努力もできない状態がしんどいのだなと思った。

    なので、ボクシングジムに入会した(唐突)
    ジムに"所属"して、頑張りと上達を"承認"され、目標は妊娠前の体重(約20kg!)を戻すことで市場価値を上げるという"自己実現"!www

    自分の人生を充実させるのは、頑張ることも諦めることも自分の腹落ち感ひとつ。できる範囲でできることをしていこうと思いました。




    ◆内容(BOOK データベースより)
    勤務先の美術館に宅配便が届く。差出人はひと月前、孤独の内に他界した父。つまらない人間と妻には疎まれても、娘の進路を密かに理解していた父の最後のメッセージとは…(「無用の人」)。歳を重ねて寂しさと不安を感じる独身女性が、かけがえのない人の存在に気が付いた時の温かい気持ちを描く珠玉の六編。

  • 最近はできるだけ英語に力を入れていて本もYouTubeも日本語のものはできるだけ控えていたけど、最近疲れてしまい久しぶりに大好きな作家、原田マハさんの「あなたは、誰かの大切な人」を読みした。やっぱりこの人の描く物語が好きということ、読書は私の生活の一部で必要なんだとということを再確認しました。まだまだ寒い冬が続きそうですが、皆様も温かくして元気でいてください(^_^)v

  • 6人の女性の6人の物語。

    著者の言葉はいつも、
    優しい気持ちにさせてくれる。

    本のタイトルから、
    とても素敵じゃない?

  • それぞれの物語の主人公が全員アラフォーやアラフィフの大人の女性。
    そして全員過去に結婚歴があっても現在は独身。

    自分はもう少し下の年齢で、既婚だし、ここに出てくるような誇らしい仕事にも就いてないし、全然違う境遇だけど、それでも引き込まれてしまう文章のあたたかさがとても良かった。
    【最後の伝言】なんかはすごい泣けた。

    小さい頃からの友達じゃなくても、大人になってから出来た友達だとしても、それが異性だとしても大事にできる友情って宝物だなと思う。
    それが【あなたは誰かの大切な人】ってことなんだと思う。

    友人でも家族でも、私にとって大切な誰かをこれからも大切にしたい。
    私も誰かにとっての大切な人になれますように

  • 独身女性6人を主人公にした短編集。なのだが、男性目線で読んでしまった。「最後の伝言」「無用の人」「皿の上の孤独」あたりが好み。家族という幸福追求の最小集団を様々な角度から捉え、「こんな生き方もありだよね」と包み込んでくれる感じかな。あと、メキシコ料理が食べたくなった!

  • 短編集。
    中でも、『月夜のアボカド』が良かった。

    私にとって料理は面倒なことのひとつだけど、もしかしたらかけがえのない時間なのかもしれないと気づかせてくれる物語だった。
    エスターのようなお母さんになりたい。

  • 自分の死に際を想像したことがありますか?

    読んでいて何度も出てきた人の"死に際"。
    それは母や父だったりする。
    後悔して思い出して、自分のかけがえのない大切な人だったと改めて気付く。

    私は今のところ幸運なことに、肉親や近しい人を亡くしたことがない。
    そしてこちらは私よりも少し歳上の女性の話だったことから、感情移入出来ぬまま終わってしまった。残念。
    もう少し大人になっても読めば感じるものが違うだろうか。

    ただ、今日を大切に生きること。
    それから自分を大切に思ってくれる人を大切にすること。を改めて学んだ。
    私が逝くとき、周りに人はいるだろうか。それは誰だろう。

    好きだった章だけ残しておく。
    【緑陰のマナ】
    マナとは旧約聖書に登場する、奇跡の食べ物。飢えに苦しむ人々を救いたまえとの預言者モーセの祈りを聞き入れて、神が天から降らせた、霜のように薄く、白く、甘い食物。
    この食物のおかげで人々を40年間飢えることがなかったそう。
    主人公にとってのマナは、母の漬けた梅干しだった。いつも旅先に持っていくお守りのようなもの。
    しかし母は去年末に亡くなり、もう梅干しを作ってもらうことは出来ない。
    そんな大切な梅干しを大切な人と食べることを選んだ主人公。
    私にとってのマナはなんだろうか。やはり母の味だろうか。

    月夜のアボカドのアマンダが最終章の皿の上の孤独で出すのずるいなぁ。綺麗にまとめられた感じ。

  • どれもそれぞれ良くて、2回ずつ読み返した。特に②と③は、優しそうだったり気弱そうだったりする登場人物の内なる情熱に圧倒される。

    何かを主人公に決意させる、「大切な人」の後押し、言葉、そして、遺したモノ。

    ①最後の伝言
    逝った母が、最後に男前だけが取り柄の父に遺したもの。
    ②月夜のアボカド
    40も年上の友達エスターがマナミにくれたのは美味しい料理とレシピと・・・。
    ③無用の人
    母に見限られ、孤独に死んで行った父から私の誕生日を指定して封筒が届いた。
    ④緑陰のマナ
    私を2度目のイスタンブールに誘ってくれたエミネさん。私が母親の梅干しの話をすると彼女にも物語が。
    ⑤波打ち際のふたり
    忙しい「旅友」にランチの誘いを送ったら一泊二日近場で、と嬉しい返事。
    ⑥皿の上の孤独
    ワールドカップで無人の通り。咲子は、バラガン邸の写メをかつての同僚、青柳に送る。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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