我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)
- 講談社 (2017年12月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065020371
感想・レビュー・書評
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2018.01―読了
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川端裕人さんの読みやすい文と、海部陽介さんの新知見を盛り込んだ内容が面白くて、一日で一気読みした。
文句なしの星5つ。
序盤の化石についての概説は、退屈かもしれないが後半の理解には必要な情報であり、川端氏の『現地』描写を交えた筆致は決して飽きさせない。
そして怒涛の後半、第四の原人や、デニソワ人についての新たな提案。
この時、整理された理解の生じる快感、そこが面白い。
分からないことは、何が分かってないからなのか。
どこまでなら、コンセンサスがある話なのか。
この整理が、理科や歴史でざっくり
「アウストラロピテクス」とか「北京原人」なら知ってた
レベルの一般人にも伝わってくる。
小難しい数式とか一か所しか出てこないし、それもちゃんと図で示されてるから、根っからの文系でも問題なし。
そして、サイエンス系の本にはつきものの、『執筆時点では』という注釈。
それは、新たな化石の発見や詳細な研究によって、また仮説が更新される可能性があるということ。
本書を読んだ者は、その新たな仮説に対し、既存の議論を踏まえた解像度で食いつける、ということ。
知的興奮に動悸が高まるのを感じる。
かつて評論社から抄訳版が、後に集英社ホーム社から完訳版のでた、ジーン・アウルの『始原への旅立ち』シリーズは、素晴らしい小説だった。しかし、科学的知見としては当時の限界もあり、生活描写に関してはネイティブアメリカンやイヌイットの文化で大きく補綴された、ネアンデルタールとクロマニヨンズの物語であった。
しかし、本書にあるようなアジア原人、ひいては旧人と現生人類の研究が進めば、科学的知見でよりしっかり裏打ちされた、『東アジアの物語』がつづられる可能性もでてくる。
なんと胸躍ることだろう。
ぜひ手に取ってご一読あれ。 -
現在世界に生存している人間は我々ホモ・サピエンスだけ
だが、その前には種々様々な旧人・原人達が暮らしていた。
その中でこのアジアに的を絞り、我々の前に生活していた
我々以外の原人について現在わかっている最新の研究結果を
まとめた本。科学ライターが書いた本らしく、非常に楽しく
わかりやすい上に、専門の科学者がきちんと名前を出して
監修しているのでポイントはきちんと押さえている。結論も
多分に情緒的ではあるが、この手の本としては許容範囲で
あり、またらしくもある。今後の発掘・研究が楽しみになる
良書である。 -
久しぶりのノンフィクション
「ミッシングリンク」といわれる、ホモ・サピエンス登場の謎を「説く」
人類の進化は、猿人から現代人まで左から右へ歩いて進化している絵のような順番では無いんですね。
「進化」とはある意味で「淘汰」と「混血」なんだなと、感じた本でした。
突然ですが『星を継ぐ者』を思い出しました。 -
ジャワ原人と北京原人の存在は知っていたけど、原人といえどもバリエーションは広く、どのようにホモサピエンスだけが生き残ったかを考えると、ロマンを感じる。
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⭐️4つに近い3つ。
大変な知的興奮や価値観の転換を迫るような何かがあるわけではないけれど、よくまとまっていて分かりやすい。人類学に興味のある人の入門書に最適だと思う。 -
アジア地域にかつて生息していた原人についての最新の発掘成果を綴った書。
アジアには、「ジャワ原人」(旧名ピテカントロプス・エレクトス)、「北京原人」(旧名シナントロプス・ペキネンシス)の他に、インドネのシアフローレス島で発掘された身長1メートル足らずの「フローレス原人」、そして台湾の海底から発掘された「澎湖人」の四原人いたことが分かってきたという。そして、ホモ・サピエンスとこれらの原人が混血していて、アボリジニ等のDNAにその痕跡が残されているかもしれないという。
今後も新たな発見が次々に起こる可能性があり、我々アジア人のルーツが徐々に明らかになっていくというから、ちょっとワクワクする。 -
「人類学系の読み物として最高の一冊」
第2章の中盤からは次のページをめくる指が止まらない。それくらいに私たちの祖先への興味が1ページ毎にかき立てられる一冊。他のブルーバックスのように「専門を学ぶ入門書」というものよりは、「専門を旅する読み物」といった感覚の1冊。
私たちを私たちたらしめているのはテクノロジーであって、テクノロジーの進化によって種としての進化を代替している訳でもある。そしてそのテクノロジーは、世界をひとつにし、世界からガラパゴスをなくし、均質なものとすることで、種としての進化のストッパーにもなっている。
著者も問題提起していた現代の我々の大きな命題である「ダイバーシティ・アンド・インクルージョン」。果たして我々は「生物」として、この命題に取り組む必要はあるのだろうか?もしかすると1万年後、我々は全員が同じ感覚を持つ種となっているかも知れない。