- Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065118634
作品紹介・あらすじ
希望を祈るな。立ち上がり、掴み取れ。愛は囁くな。大声で叫び、歌い上げろ。信じよう。仲間との絆を、恋人との愛を。美しい海を、熱を、人間の力を。【あらすじ】英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染みーーグスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり――同じ夢に向かった。
感想・レビュー・書評
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父とは読書の趣味があわないが、こちらは以前帰省時に夢中になっているのを気にはなっていた。称賛か憐憫か表面的なものかもしれないと敬遠していた。おびのりさんのレビューで読むことができました。ありがとうございます!
こちらは7年もの取材を重ねたとのことで、おじいやおばあの生の声が聞こえてくるようで、寄り添うように代弁している。私の知らない方言もあった。馴染みのある今は新興住宅街化した場所にそんな酷い事件があったとはと愕然とした。父によると基地からの窃盗行為を行い地元民に配る戦果アギヤーは本当にいたとのこと。沖縄の英雄、瀬長亀次郎や、沖縄の校長先生、屋良朝苗も登場。戦後復帰前の米軍統治下の沖縄の状況を、戦争体験に裏打ちされた死生観が織り込まれ、疾走感交えて展開される混沌とした物語。共存することの難しさと諦めに似た受容と沖縄人のへこたれない力強さを描いている。
「この島にかぎっては、だれにでも大事な人を奪われた過去がある。消えかけた希望を、離散や死別を、失った過去をひきずりながら。それでもたいていの島民が、きちんきちんと日々の暮らしを営んでいる。」
戦時中グスクもレイもヤマコもオンちゃんも十四歳になってなくて、「鉄血勤皇隊にもひめゆり学徒隊にも徴集されなかった」おそらく地上戦で十四歳も徴集されたのは沖縄だけでは。
海兵隊について「素朴な田舎者をためらいもなく敵を殺せる機械に変えるのが軍隊」
一度島から出て帰郷した人を「島の外からの目線を持ったぶんだけ、愛郷心や民族主義をだれよりも研ぎ澄ませてきた」
沖縄の午前二時は「ひそやかな予感が張りつめた沖縄特有の夜の気配は、レイたちを惹きつけてやまない島の魅力のひとつだった。」「コザという街はいまもどこかで、英雄がいたころの宇宙にとどまっているふしがある。」
「アメリカから日本に施政権が移ったところで、大事なことはかわらないんじゃないかな。」「さんざん日本のふるまいに落胆や幻滅を覚えてそれでも運動をやめんものは正真正銘の愛郷者さ。」
「恨みや憎しみで目を曇らせたらならんよ。」照喜名のおばあの微笑みが染みる。
あきさみよう!が何度もこだまする(私はあぎじゃびようと言います)。ニライカナイ、青い水平線の向こうを見つめて祈る(うーとうとうする)気分になった。 -
2019.2.24 辺野古埋め立ての是非を問う県民投票と同時に読み始めた。
戦後の沖縄。
”米国の統治下におかれ、72年に本土に復帰した”
これが学校で習う知識。
その つるりとした表記の向こうにいた人々を、いったいどれだけ身近に想像してみたことがあるだろうか?
凄惨な沖縄戦の中で、爆撃や殺戮、あるいは自害で親を失った子供たち。住むところはもちろん、着るものも食べるものもない。今日、今、食べるものがないと死んでしまう!
有るところからいただくしかない、と米軍基地から物資をくすねる ”戦果アギヤー”たちの疾走で この長い叙事詩の幕は開く。
過剰なまでに詰め込んだ修辞(カッコだらけ!)と逐一ふられる沖縄言葉のルビ。チム・ドンドン!
もちろんフィクションだ。
そんなことはわかっていてもなお、独特の文面が、重たい・重すぎる現実と常に向き合いながらも豊穣で明るささえ湛える沖縄の空気を醸し出す。
戦果アギヤーの"英雄"オンちゃんは、嘉手納襲撃の最中に姿を消し、その姿を追いながらも、レイ・グスク・ヤマコがそれぞれの道を生き抜く。
その人生は時に交差し、労わりあったり傷つけたり傷つけられたりする。
簡単に答えを出せない事情があり、それゆえに当たり前に守られるべき事が守られず、弱い者たちが踏みにじられる。
フィクションであると同時に、現実なんだよね。。
なんということでしょうか。。。
残虐な描写もあるので、ティーンエイジャーにはちょっと早いだろう。もうちょっと上の世代には考える材料をたっぷりくれる作品だと思う。
しかも 宝島 だ。
宝は たしかに 存在する。
"英雄”もおったのさ。
それらは 決して ”ひとつ” ではないと、思う。-
沖縄県民ですが、自分の周りにも
色々なら考えの方がいっぱいいます。
それでも、この本を読んだら、なにか思うところがあるのでは?って作品ですよ...沖縄県民ですが、自分の周りにも
色々なら考えの方がいっぱいいます。
それでも、この本を読んだら、なにか思うところがあるのでは?って作品ですよね。
すいません、本棚を拝見させて頂きました!
映画とか、本とかの観てるジャンルが、
凄い近くて、フォローしちゃいました。2019/03/01 -
シュンさん、コメントありがとうございます!ほんと、おっしゃるとおりだと思います。
ちょうどラジオで真藤さんの話をきいたところ、やはり賛否両...シュンさん、コメントありがとうございます!ほんと、おっしゃるとおりだと思います。
ちょうどラジオで真藤さんの話をきいたところ、やはり賛否両論ておっしゃってました。
https://www.tbsradio.jp/346002
真藤さんご自身は 戦果アギヤーの存在を知ったときに ”あっ!”と思ったのが作品につながったそうです。
その ”あっ!” が120%伝わってくる作品だと思いました。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。2019/03/02
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戦後すぐの沖縄が舞台。
戦果アギヤーとしてオンちゃんは英雄だった。
オンちゃんを大好きな親友グスク、恋人ヤマコ、弟レイ。
戦果アギヤーの大きな仕事(キャンプ・カデナからの物資強奪)の途中はぐれて、
オンちゃんは行方不明。
レイは捕まって刑務所へ。
ヤマコはグスクとひたすらオンちゃんの行方を探し歩いた。
グスクは自首して刑務所へ。
刑務所内でグスクとレイは様々な人と出会う。
ヤマコは教師になり、返還運動の活動家に、
グスクは刑事になり、さらに諜報員としても仕事をさせられる。
レイは沖縄のややこしいヤクザの世界へ。
それでも3人の心の中には英雄オンちゃんがいた。
どこかで生きていますように。
何か小さな手がかりがあればそれぞれに探していた。
3人はそれぞれに一人の少年ウタに出会う。
顔立ちが混血で、自ずと出自も想像されるが
みすぼらしい格好をしていたためにヤマコはほっとけない。
彼の成長も物語を読み進めていくうちに
すごく気になってくる。
出会った頃は6歳くらいで言葉もろくに喋れなかったけれど
施設で成長し、読み聞かせで言葉を教えてくれたヤマコを
母のように慕い続けるんだ。
戦後から返還までの沖縄の20数年の若者たちの物語。
この時代の沖縄は日本であって日本じゃない。
アメリカに統治され、庶民は貧困を極め、
泥棒する(米軍から)のをやめたら生きていけないくらい。
米軍から受ける暴力に抗うこともできない。
それでも立ち上がり、声を上げ、前を向いて生き抜く人々。
沖縄のアツい空気が満ちみちてます。
3人が生きていないと思うけど、もしかして生きていたら、
という微かな希望のオンちゃんの生きた経緯について
後半にコザの暴動のさなかに
3人が再開し、持ち寄った手掛かりによって
明らかになっていく場面は
涙、涙で読みづらくなってくるほど。
実在の人物も登場し、
いくつかの事件やデモなども丁寧に描かれて
その中に主人公たちが自然な役割を果たして
時代の流れと人々の願いがリアルに迫って来て
感動の波が押し寄せる大作になってると思います。
語り部の口から語られてるって形なのですが
それが時々お茶目で楽しい。
(Myブログ【よくばりアンテナ】から抜粋)
2024.3.10 -
沖縄の語り部(ユンター)によって語られる形を借りて、戦後の沖縄の光と闇の歴史を描いたまるでドキュメンタリーのような小説。
沖縄の方言で書かれた文章は読んでいてまるでユンターのオバァの声が聞こえるよう。オーディオブックで実際に聞いてみたいな。
たった70〜50年近く前の話。今と地続きの問題がそこにあるのに、沖縄以外の都道府県ではあまり知られていない歴史。こんな日本があったんだ。沖縄に行ってみたくなったな。観光地としてではない沖縄の姿を見てみたい。 -
必死にもがいた軌跡は誰かの胸に残り続ける。
この作家さんとはあまり相性が良くないかも
エンタメでは片付けられない重さのある小説 -
こんな小説があったのですね!まさに遠い他人事みたいに眺め感じ上っ面しか知らなかった沖縄が眼前に突き付けられた本でした。ふんだんに使われている沖縄言葉にも読み進むうちにあまり抵抗なくなり不明ながらも邪魔しないで読了。のっけからラストまで熱く熱く走り抜けて行った物語。そして かの地の人々に申し訳ない気持ちが沸いてくるのでした....
540頁を越える大作にも拘わらず版をかさねる理由が分かります。 -
読みながら血が沸騰するのを感じた。ページをめくる指先からその、沸騰した血が滲むような。
これは、ずっとずっと私が知りたかった世界で、ずっとずっと探していた言葉で、ずっとずっと読みたかった小説。
あぁ、もうほんとにすごい。
500余ページの間、私は確かにあの時代のあの沖縄に生きていた。血を吐きながら明日を探して今日を必死に生きていた。
生きている、私の中にも、この血が流れてる。そんなはずないさ、と言われても、そう思いたい。
歴史の教科書では数行で語られる本土復帰の日。あの日までの長い時間の中でどれだけの血と涙が流され、どれ
だけの苦しみと悲しみがあの地を覆い、どれだけの命が奪われてきたか。
私たちは、知ることから始めなきゃならない。まず、あの日、いやあの日の前から、あの日の後から、どこで何が行われていたのか。それは誰が、ということにもつながる。
知らなきゃ。知らなきゃ。
あぁ、ほんと、誰かに伝えたい、語りたい、この物語を。 -
読者にとって、賛否がはっきりする内容だった。
反米主義?女性蔑視?と本書の内容を捉える人がいることも頷ける。
ただ、本書は、読者に、沖縄県民の複雑な感情を鮮明に抱かせる内容であることは間違いない。
全体を俯瞰して見れば、沖縄の人と本土の人とで、戦争で大きな傷を負ったことに違いはない。
けれども、住民も巻き込んだ大規模な地上戦が行われた事実・米軍基地の7割が存在している事実から目を逸らしてはならない。
ただ、今後も厳しい国際情勢が予想されるため、日米の戦略上、沖縄は重要な場所であることは依然として変わらないだろう。
だからこそ、私達は、米軍絡みの事件には、厳しい態度で臨むことが重要であり、防ぐシステムを構築(官僚となる人材育成も含め)することが必要だ。
個人的には、米軍基地の駐留を条件に、県民の子供の学費無償・助成の実施・教育施設の拡充が望ましい。
最後に、人は共感するからこそ、他者のために行動できると思う。
この「宝島」が、読者の心を揺さぶり、県民感情に寄り添って発言・行動できる人物になるきっかけとなることを切に願う。 -
本土復帰50年を迎え、改めて知った様々な歴史を、小説という形で、再び学ばせてもらった。
素敵なレビューです。
私には読みきれなかった沖縄です。
やはり、かなりが事実なんでしょうね。敗戦後の沖縄の貴重な小説ですね。
素敵なレビューです。
私には読みきれなかった沖縄です。
やはり、かなりが事実なんでしょうね。敗戦後の沖縄の貴重な小説ですね。
まとまらないレビューで覚書が多くなりました。知らない事件も幾つかありいたたたまれない気持ちに...
まとまらないレビューで覚書が多くなりました。知らない事件も幾つかありいたたたまれない気持ちになりました。私でも読みにくかったので沖縄言葉になじみのない方はもっと読み辛いのではとも思いました。
ご指摘の通り、俯瞰で沖縄を見るために客観的な視点で描きつつ、寄り添い代弁してくれている貴重な小説だと思います。