富士山噴火と南海トラフ 海が揺さぶる陸のマグマ (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065160435

感想・レビュー・書評

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  • 自然の恵み豊かな日本列島をかたちづくったプレートテクトニクスや火山は一方では甚大な災害をもらたす。富士山が大噴火を起こせば都市機能は全面的にマヒをする。火山灰が舞うと外出が危険になる。神奈川県に住んでいる私も被災者になる。正しく知って備えたいです。

  • 第1部 富士山噴火で起こること(火山灰―都市を麻痺させるガラスのかけら;溶岩流―断ち切られる日本の大動脈;噴石と火山弾―登山者を突然襲う重爆撃;火砕流と火砕サージ―山麓を焼き尽くす高速の熱雲;泥流―数十年間も続く氾濫と破壊)
    第2部 南海トラフと富士山噴火(地理と歴史からみた富士山噴火;「3・11」は日本列島をどう変えたか;南海トラフ巨大地震との連動はあるか;山体崩壊のおそるべきリスク;富士山の噴火予知はどこまで可能か;活火山の大いなる「恵み」)

    著者:鎌田浩毅(1955-、東京都、地球科学)

  • 前半は火山噴火の種類と起こる被害の解説。
    火山灰で電力系統とコンピュータが故障する可能性がある。
    後半はお待ちかね、タイトル通りの南海トラフ地震と富士山噴火の連動の可能性。被害額は200兆円越え。2030年代にも起こるかも?

  • 富士山が噴火したら?その影響を淡々と予想していく。富士山噴火は単体では起きず、その前後に南海トラフ地震も起きる、という認識から富士山噴火が起きたら、という内容にもなかかわらずこのタイトルになっている。

    【火山灰】富士山が吹き上げる火山灰は風に乗り遠くまで届く。成層圏まで達すれば偏西風に乗り地球を一周する。灰と名がついているので誤解されるが火山灰は灰ではない。軽石などが砕かれた、細かいガラスのかけら、が実態。このため人間の肺に入れば呼吸障害を起こす。目に入れば炎症を起こす。マスクやゴーグルが必須となる。
    パソコンなど精密機器に入れば故障の原因となる。車両や航空機も火山灰の中では動けなくなる。工場の機械類、電力会社の発電機なども動かせなくなる。
    火山灰がつもり固まるとコンクリートのように硬くなる。また水で流そうとしてもドロドロになるだけで流れていかない。屋根に火山灰が積もると重みで家屋は倒壊する。これに雨が降り、水の重さが加わるとほとんどの家屋はひとたまりもない。
    火山灰や泥流、などで高速道路や新幹線が分断される可能性も高い。
    富士山が噴火すれば相当期間に渡り首都圏は機能を失う。

    【溶岩流】富士山から流れ出す溶岩流の範囲は比較的狭いが、流出してから数ヶ月から1年は熱が冷めない。噴出したてであればほとんどのものを発火させる温度がある。狙ったところに流す、という制御は非常に難しい。

    【噴石と火山弾】噴火の形態(ボルカノ式、ストロンボリ式、プリニー式)により飛距離が変わってくるが予測が難しい。火口付近にいた場合避けるは困難である。

    【火砕流、火砕サージ】形成原因はいくつかあるが高温の火山ガス、火山灰が時速100キロ高速で山肌を下っていく、というのが特徴。富士山山頂を中心とする半径7ー8キロのほぼ円形の範囲が被害を受ける可能性がある。

    【泥流】一旦火口付近に堆積した火山灰などが雨や噴火の熱で溶けた氷雪を伴い斜面を下るのが泥流。これは噴火後数十年もリスクが続く。これが到達する可能性のある範囲は富士山の裾野を超え、富士吉田市、富士宮市、御殿場市などにもかかる。

    【噴火予測】噴火の前には火山性微動や山体の変化(マグマが吹き上がってくるときに山を押し拡げるため傾斜が変わる)、水蒸気が漏れ出すなどの前兆が必ずあり、それは観測できる。

    【富士山が特異な理由】
    世界でも珍しい、3枚の大陸プレートが重なるところに位置している。このため、平坦な場所がひらけ、そこに地下からふんだんにマグマが供給されることであの山体ができた。

    【地震と噴火】地震で火山直下のマグマだまりに水が入ったりマグマに溶け込んだ二酸化炭素が気泡化することで火山噴火が誘発される。富士山もその法則が当てはまる。宝永の富士山噴火は2週間続き江戸に5ー10センチの火山灰を降らせたが噴火の数十日前に宝永の大地震があった。地震で倒壊した家の立て直しをしようとしていた矢先に富士山噴火があったということになる。この関連は現在にも当てはまる。南海トラフ自身は2030年代までには必ず起こる、と言われている。それが高い確率で富士山噴火を引き起こすことになる。

    【短期の災いと長期の恵み】このように富士山噴火は日本に甚大な被害を与える。しかし、最後の噴火から300年、我々が富士山から受けていた恵み、も厳然としてある。癒しのある美しい外観。火山性の細かい穴の空いた地層を年月をかけて通ってくる澄んだ水。泥流も厄介だが扇状地を形成し農業の発展に寄与した、という側面もある。被害を恐れるだけではなく長い目で自然と付き合うという目線も必要である。

  • 富士山の噴火で何が起きるのか、背筋が寒くなる内容。

  • 火山噴火災害についてのアウトリーチ(研究成果を広く一般に告知すること)に取り組んでおられる鎌田氏による、富士山噴火の可能性と南海トラフ地震の関係について解説している本です。
    前半部分は火山灰、溶岩流や火砕流といった火山災害の例を富士山が噴火したケースを想定して解説しています。
    そして後半部分では富士山の噴火と、近い将来に発生が予想されている南海トラフ地震との関係について触れています。海溝型地震とその震源近傍に位置する火山の噴火とは極めて連動性があるというのが結論で、その理由について最新の研究成果を紹介しています。
    富士山というと美しい稜線と日本を象徴するような存在として「静」のイメージでとらえがちです。しかし地質学的には非常に若い火山であり、今の富士山の姿に至るまでには日本全域に影響を与えるほどの爆発的噴火や山体崩壊といった非常に激しい噴火を起こしており、いつ激しい噴火が起こっても不思議ではない「動」の火山であることなど、興味深い切り口が満載です。本書でも言及されていますが、あの美しい稜線の姿は富士山の生涯のうちでも限られた期間でしか見られない貴重な姿なのです。
    津波などの南海トラフ地震に関わる被害想定がマスコミでは頻繁に言及されていますが、実は富士山の大規模噴火はそれに匹敵するほどの被害が出る自然災害であることを読者に強く訴える1冊です。

  • 富士山に喜んで登っている場合ではない。5000年に一度の災害も視野に入れなければならない。

  • 南海トラフについて知りたかったんだけど、
    やっぱ 富士山!ほとんど富士山!

    やがて霊峰 が荒ぶる時が来るのかと思うと、怖い。
    世界の活火山に被災した街がどうしたか教えてくれる。
    来るとわかっているなら備えないと。


  • 南海トラフ地震と富士山噴火は連動する
    可能性が大きいらしい。
    経済にしても自然にしても、僕らは極めてリスキーな
    稀有な時代に生きているんだな‥

  • あの富士山が活火山であり、いつ噴火してもおかしくない状態であることは、いまや広く知られるところになった。しかし火山学の碩学による専門的な知見と、富士山だけではない世界の火山の過去の噴火の豊富な記録に基づいて書かれたこの本を読むと、予測される被害の甚大さに暗然とさせられる。知りたくないが我々全員が知っておかなければならない霊峰のダークサイドだ。

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著者プロフィール

鎌田 浩毅(かまた・ひろき)
1955年東京生まれ。筑波大学附属駒場中・高等学校卒業。東京大学理学部地学科卒業。通産省、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・同名誉教授。専門は火山学、地球科学、科学教育。「京大人気No.1教授」の「科学の伝道師」。著書は『新版 一生モノの勉強法』『座右の古典』(ちくま文庫)、『やりなおし高校地学』(ちくま新書)、『地学のツボ』(ちくまプリマー新書)など。

「2021年 『100年無敵の勉強法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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