時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」 (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065184639

感想・レビュー・書評

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  • 素粒子の専門家による時間の話。過去は過ぎ去ったもの、未来はまだ見ぬもの、現在だけが存在しその瞬間はすべての場所で同一時刻というのは、ニュートン力学の世界の話であって、現代物理学では、時間はすべての場所毎で異なるものと理解されている。Blue Backsらしく論理的にかつ明快に、時間について説明している。もちろんすべてが理解できたわけではないが、勉強になった。

    「(5台の原子時計による実験)5台の時計のどれもが、標高が低いほどゆっくりと、高くなるにつれて早く進んだ。セシウム原子から放出される電磁波の振動回数で言うと、小金井本部に対する変化の割合は、おおたかどや山送信所で100兆分の8、はがね山送信所で100兆分の13だった」p22
    「かつては太陽の動きを利用した日時計や、振り子の等時性を使った振り子時計を使っていた。だが、近代以降に利用される正確な時計の大半は、金属製バネの振動を利用した機械式時計も含めると、原子スケールで起きる周期的な振動現象を利用している」p38
    「媒質中を伝わる光の速度は、真空中に比べてn分の1に低下する(電磁気学の法則によって、屈折率は必ず1より大きくなる)。例えば、水の屈折率は1.333であり、水中では、光は真空中の4分の3の速度で進む」p41
    「「未来」はまだ実現されず「過去」はすでに過ぎ去ったのだから、どちらもリアルではなく、ただ「現在」だけがリアルだ。こうした常識的な見方を支持する物理学的な根拠はない。相対性原理が成り立つならば、「同じ時刻」を一つに決められず、したがって「現在」という「それだけがリアルな瞬間」が実在することはない。過去・現在・未来という区分は、物理的に無意味である。「ここ」以外にさまざまな場所が存在するのと同じように、「いま」以外にもさまざまな時刻がリアルに存在する」p50
    「素粒子論によると、光以外にも、時間と空間の界面に沿って進み、速度が1(ないし1に極めて近い値)になる素粒子がいくつかある。ただし、その大部分は、原子スケールよりも遥かに短い距離しか進めないので、実際に観測するのは難しい。例外的に長距離を進むことができるのは、光以外には、ニュートリノだけである」p102
    「大マゼラン雲は、地球から16万光年の距離にある。16万年前にここで生じた超新星爆発で、さまざまの放射や物質が放出されたが、そのうち地球に到達できたのは、光とニュートリノだけである。観測結果によれば、爆発によって放出された光とニュートリノは、宇宙空間を16万年にわたって飛び続けた後、どちらも1987年2月23日に地球に到達した。最初に観測に掛かった光とニュートリノの到達時間差は、わずか3時間しかない。ニュートリノは、16万年もの間、ほとんど光と並んできたことを意味する」p103
    「互いに運動するアリスとボブが、手元に時計を持っていることを考えよう。このとき、アリスとボブの時間軸は互いに傾いているので、斜めになった2つの物差しと同じように、相手の時計の進み方が自分の時計と異なるように観測される。これが「動く時計は遅れる」という現象である。この遅れは、互いに斜めになった物差しのケースと同様に、あくまで見かけのものであり、現実に時間の尺度が変化したわけではない。アリスからするとボブの時計が遅れるのだが、ボブの目にはアリスの時計が遅れるように見える。実際には、どちらの時計も同じように時を刻んでおり、天体近くで重力作用を受ける時計のように、現実に遅れるわけではない」p106
    「空間内部での回り道は、直線ルートに比べて必ず道のりが長くなるのに対して、時間と空間を併せた世界では、回り道をした方が経過時間が短くなる。これは、ミンコフスキーの幾何学では、長さを定義するのに時間部分と空間部分の差を取るせいである。空間で遠回りをすると、道のりはかえって短くなる」p109
    「宇宙背景放射は、1964年に衛星通信用に地上に設置されたアンテナで初めて観測された。宇宙からの背景放射は、温度がほぼ零下270℃(零下273.15℃を零度とする絶対温度で表すと、2.725度)の物体の放射と等しい。この温度が場所によってわずかに異なっており、その揺らぎが10万分の1程度であることを明らかにした(2006年ノーベル物理学賞受賞)」p124
    「揺らぎがわずか10万分の1しかなかった点こそが重大である。10万分の1の揺らぎとは、どんなものなのか。容器に、小麦粉を10㎝の厚さに敷き詰める場合を考えよう。小麦粉粒子の大きさは数十分の1㎜なので、場所による厚さの違いが10万分の1とは、小麦粉1粒の何十分の1かのデコボコしかないことを意味し、見た目には完璧なまでに平坦な状態である。同じ厚さの金属ならば、表面に髪の毛一筋(0.05~0.08㎜)ほどの傷もなく、鏡のように光を反射するだろう」p125
    「(時間の方向性)「なぜ過去から未来へという方向性があるのか」という謎に対しては、「宇宙の始まりが整然としたビッグバンだったため、この完璧な状態が崩れていくという形で、時間の方向性が生まれた」と答えることができる」p126
    「ビッグバンが整然としておらず、エネルギーの揺らぎが大きいと、宇宙空間のあちこちに巨大なブラックホールが形成されてしまう」p129
    「気体では分子同士の接触が稀となり、固体では動けないため、いずれも化学反応が進まない。熱の流入に応じて化学反応が進行するためには、分子が液体の中を動き回れなければならない」p138
    「地球は、太陽光線を浴びる地表でエントロピーの減少を実現し、生命にあふれた惑星になれたのである」p140
    「惑星上で活動する生物の姿だけを見ると、宇宙とは無縁の時を刻んでいるように感じられよう。しかし、実際には、生化学反応は太陽からの光の流れに駆動されて進行する。あらゆる出来事が、ビッグバンの整然とした状態が崩れていく過程の一部であり、「ビッグバンから遠ざかる向き」に進行する不可逆変化なのである」p141
    「ヒットを打った後のインタビューでは、球種を見極めてからバットを振る決断をしたと答えることがあるが、これは、生理学的にありえない。目で見てから体を動かすまでの反応時間を考慮すると、球種がわかるほどボールが進んでからでは、バットをボールに当てることは不可能である。バットを振る意思決定が行われるのは、投手の手からボールが離れた直後(あるいは直前)のはずである」p203
    「人間の頭の回転は、多くの基礎物理過程に比べて、極めて遅いと考えた方がよい」p208

  • 前半は相対性理論の説明。光りは時間と空間の界面を走るのでそれ以上の速度はありえないという説明はなるほどとおもうのだけど、グラフの図が無いとわからんかったかもしれない。

    時間は空間のように広がっていて、過去も、未来も現在もない。それは脳の錯覚であるということ。

    で後半は、量子論と脳科学にまで話がすすんでいく面白かった。

    いろいろと創作のネタになると思う。

  • 読んでるときは理解できるけど、読み終わってからなんだかよくわからんってなった。その原因を考えたけど①ほんとは理解できてなかった、②直感に反することを抽象的な議論で進めてる、③そもそも難しく相対論や量子論を未習だとこうなる、の三つが寄与してるんだろうなあという感じだと思う。出直します。

  • 難しかった。現代物理学の基本である場の量子論はニュートンなどの古典的な原子論とは違うロジックで物理現象を記述しようとする。時間は空間と一体となって時空となり、場所によって時間の進み方は違う。時間とは何なのかを場の量子論を元に簡易に説明してくれるのだが、中々頭には残らない。頑張って想像しようとするが難しい。ただ、物理学者達のそうした日々の努力の結果、色々な基本的な物理原則が解明されてきているというか、様々な方法で問題に解を与えようと試みている事は良く分かった。分からないけどたまにはこうした本を読み、分かろうと努力してみるか。ビックバンの前?直後は整然とした空間でだからこそ時間に方向性が生まれるとか分からないけど面白い。

  • タイトル通り「時間」について物理学の視点から紐解いていきます。

    世界中の時計は実は場所によって進み方が違うなんて話はとても興味深くワクワクしますね。

    過去・現在・未来と時間は流れていくのか、それとも時間に流れなど無いのか。

    面白かったです。

  • 時間はどこから来て、なぜ流れるのか。
    時間の神秘にとても興味をそそられます!
    ぜひ読んでみたいです(*^^*)

  • 時間とはなにか? 「時間は外部から影響を受けることなく、宇宙全域で一様に流れるという見方=ニュートン流の時間観」を否定し、場のアイデアに基づいて、それに代わる時間概念を提示する。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40290037

  • イメージするのが難しい部分もあったが、物理学だけの切り口だけでなく、脳の働きから人間の時間の感じ方を論じていることが面白い。
    脳の働きについては、「進化しすぎた脳」でも近い話が載っていたと思う。

  • 少し難しい話でしたが、物理学について学習できました。相対性理論なども少しずつ学習して理解できるようになりたいと思います。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1349490

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著者プロフィール

1956年三重県生まれ。大阪大学理学部物理学科卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。専攻は、素粒子論(量子色力学)。東海大学と明海大学での勤務を経て、現在、サイエンスライター。 著書に、『時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』(講談社ブルーバックス、2020)、『量子論はなぜわかりにくいのか 「粒子と波動の二重性」の謎を解く』(技術評論社、2017)他。

「2020年 『談 no.117』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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