異端審問 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065225455

作品紹介・あらすじ

――皇帝ジギスムントが宮中伯ルートヴィッヒに向かって命令する。「囚人を受け取り、よろしく異端者として扱え」。今度はルートヴィッヒがコンスタンツの帝国代官に向かって命令する。「我ら双方によって断罪されたる者としてこの者を受け取り、よろしく異端者として焼け」。――
 1415年に異端として裁かれた宗教改革の先駆者、ボヘミアのヤン・フス処刑の克明な描写にはじまる本書は、中世のヨーロッパで異端審問がどのようにして生まれ、そして制度として定着していったのかを、具体的なエピソードを丁寧に積み重ねながら、当時の人々の息遣いもあざやかに描き出す。法も手続きも無視して「すべて殺せ」という13世紀の異端狩りの熱狂から、ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』にも登場した、世界で最も有名な異端審問官ベルナール・ギーによって組織化・マニュアル化された14世紀の冷徹無比な異端審問を経て、15世紀末スペインでの過酷な弾圧に至る、その道のりの背後には、いかなる時代精神が見いだせるのか。
 西洋中世史不朽の名著『異端カタリ派の研究』(岩波書店、1989年)の著者が、多彩な史料を駆使して知られざる中世世界への扉を開く!(原本:講談社現代新書、1996年)

【解説(轟木広太郎・ノートルダム清心女子大学准教授)より】
 本書は、一三、一四世紀における異端審問の成立と制度的確立の経緯を、およそ関連するすべての種類の史料を博引傍証しながら描き切った労作である。……ヨーロッパ中世という日本人にはどこか掴みどころのない、しかしそれでいて魅惑的な個性を放つ時代の雰囲気を初学者に感得させると同時に、このテーマに興味を持つ専門家にとってもいまだ探求のヒントを数多く掘り出すことのできる鉱脈たり続けていると思う。(本書「解説」より)

【本書の内容】
第一章 薪と硫黄の匂い――異端審問とは何か
第二章 剣と火と異端者――異端審問の誕生まで
第三章 異端審問創設の頃
第四章 異端審問の制度化
第五章 審問官ベルナール・ギー
第六章 裁かれる者たち
第七章 スペインの火刑台
あとがき
参考書目抄
解説「異端審問と交差する四つの歴史の道筋」(轟木広太郎)

感想・レビュー・書評

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  • 祝文庫化!

    『異端審問』(渡邊 昌美):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000146774

    『異端審問』(渡邊 昌美):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000349790

  • ・異端審問は単に行為を裁断する法廷ではなく、徹頭徹尾霊魂の行方に責任を感じていたのだ。実はこれが悲劇の原因なのだ。

  • https://calil.jp/book/4061493124
    講談社現代新書、1996年の文庫化

  • 異端審問が、魔女裁判と異なり、信仰心を試される機構として整った裁判であったということ。混同していた私にとり、発見の多い本だった。

  • 『薔薇の名前』が好きなので、読んでみました。ベルナール・ギーが実在の人物で、かなりのやりてだったとは。【2021年5月18日読了】

  • コロナ禍では一部狂信的な反応が見られたが、異端審問を扱った90年代の著作を改めて今出したところに、出版社の意図がある気がした。差別の要素を放り投げれば、平凡な人でも(ほど)攻撃性向に火がついてしまう恐ろしさ。異端審問という言葉は中世の響きながら、生物としては我々と何ら変わらぬ人達がやった事でもあり、今日他人事には思えなかった。相手をこうだと極め付けて殺害する行為は、妄想が可能な人間ならではのエラーだけど、そんな蛮行でも手続きを厳格に定めていたところは、正当化を計る茶番とはいえ、これまた人間ならでは(恣意的な虐殺の事例はまた別だが)。異端審問には人間の業が凝縮されている。

  • 皇帝ジギスムントが宮中伯ルートヴィッヒに向かって命令する。「囚人を受け取り、よろしく異端者として扱え」。今度はルートヴィッヒがコンスタンツの帝国代官に向かって命令する。「我ら双方によって断罪されたる者としてこの者を受け取り、よろしく異端者として焼け」。――
     1415年に異端として裁かれた宗教改革の先駆者、ボヘミアのヤン・フス処刑の克明な描写にはじまる本書は、中世のヨーロッパで異端審問がどのようにして生まれ、そして制度として定着していったのかを、具体的なエピソードを丁寧に積み重ねながら、当時の人々の息遣いもあざやかに描き出す。法も手続きも無視して「すべて殺せ」という13世紀の異端狩りの熱狂から、ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』にも登場した、世界で最も有名な異端審問官ベルナール・ギーによって組織化・マニュアル化された14世紀の冷徹無比な異端審問を経て、15世紀末スペインでの過酷な弾圧に至る、その道のりの背後には、いかなる時代精神が見いだせるのか。
     西洋中世史不朽の名著『異端カタリ派の研究』(岩波書店、1989年)の著者が、多彩な史料を駆使して知られざる中世世界への扉を開く!

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著者プロフィール

1930-2016年。岡山県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業。高知大学教授、中央大学教授をへて、高知大学名誉教授。専門は、フランス中世史。主な著書に、『異端カタリ派の研究』、『中世の奇蹟と幻想』、『フランス中世史夜話』など。主な訳書に、エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ『モンタイユー』(共訳)、マルク・ブロック『王の奇跡』(共訳)、ジャン・クロード・シュミット『中世歴史人類学試論』など。


「2021年 『異端審問』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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