月灯館殺人事件 (星海社FICTIONS)

著者 :
  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065280799

感想・レビュー・書評

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  •  星海社とは、講談社の編集者によって設立された出版社だったか。近年はやや寡作気味な北山猛邦さんの新刊が、星海社FICTIONSから刊行された。あの北山猛邦が真正面から「館」に挑む正統派本格ミステリ! だそうだが…。

     雪に閉ざされた「月灯館」に集いし本格ミステリ作家たち。派手な物理トリックでデビューし、物理の北山と称された北山さんだが、ここまでベタな設定は、デビュー初期の「城」シリーズ以来ではないか。過大な期待はせずに読み始める。

     早速首なし死体のオンパレードである。現場はとりあえず密室。ちなみに今どきネットは繋がりません。ド直球と言うべきかあまりにひねりがないと言うべきか。むしろ、興味深いのは、作中の作家たちの言動やキャラクターだろう。

     稼ぐために薄味の作品を濫造する、あるいは本格路線を捨て去る作家。悪いこととは思わないが。古典を読んだことがない作家。盗作を疑われた作家。新入りの作家は、なかなか第二作が書けずにいた。つい、実在の作家に当てはめてしまう。

     本格なんてそんなもんさ。メタフィクション的な彼らの会話は、開き直りのようにも自虐のようにも感じられる。第二作が書けない彼は、北山さんご自身がモデルのような。もちろん北山さんは第二作を出したが、評価は芳しくはなかった。

     「城」シリーズが行き詰まった後は路線変更を図った北山さん。失礼ながら、ブレイクしたとは言い難い。原点回帰なのか心機一転なのか、とにかくガチ本格に挑んだ。ご本人と星海社の意欲は買いたいが、苦しい作品と言わざるを得ない。

     最後の一行に、本作の苦しさが端的に表れている。北山猛邦の一ファンである自分が、いつまでも『クロック城』の幻影を追っているのは認めよう。ネット時代に、本格一本で、況してや物理トリック一本で勝負するのは困難だ。

     重鎮たちの新刊もなかなか出ないこのジャンル。令和の世に敢えて茨の道を歩む作家たちへの敬意は、忘れないようにしたい。

  • 雪深い館に集まったミステリ作家たちを襲う連続殺人事件。
    王道パターンで始まり、密室、首斬り、見立てと盛りだくさんな中にも新本格への矜持や疑念などにも切り込み、数年後には忘れ去られてしまう作品としての自虐として瑠璃城に始まるセルフパロディもありつつ、最後の一撃はまさに十角館のそれ!
    読み返したくなること必至です。

  • 「これぞミステリの進化の系統樹の最前線にしてネオ・クラシック!」っていうキャッチ、読者をバカにしてるのかな?って思ったけど本文読んだら意味はわかった。
    メタに次ぐメタに次ぐメタ、その極めつけの最後の一文。
    多分最後に来るメタネタはこれだろうな…最後の一文はあれがくるんだろうな…とあたりをつけて読んでたけど当たりました。なんというか意図的にやってるネタなので途中で想像はつくし「ば、ばかにしてんのか!!」って爆笑しちゃった なんだこの小説
    そしてゲットー館、って名前なのはわざとなのかな。キリスト教ネタが散りばめられている中、ゲットーの響きだけちょっとセンシティブだなと思ったので気になりました。
    →…理解した…。ゲットーではなく「get館」なんだ……バ、バカミスだ!!!(褒めてる)

    これまでの館シリーズにあった幻想文学的な、物理トリック×エモをもとめて読むとちょっと違うのかも。でも面白かったです。カバーおりかえしの北山先生のコメントが割とすべて。

  • 読んだ後、放心状態。
    先ずトリック云々とは別で作者から作品を通しての読者へのメッセージがナイフのような鋭さでグサッときました(;・∀・)
    次々と真相が明らかになり、大混乱。
    そしてトドメの一撃。
    最後の一行まで気が抜けない作品。
    そして、とりあえず北山先生、私は怠惰で解説サイトを頼ってごめんなさいと謝りたくなりました(苦笑)
    一言で言うならば……もうとりあえず凄いから読んでみて! です(笑)
    私は未読の北山作品を少しずつ読んでいこうと決意させてもらいました。
    本当に凄かった……

  • 城シリーズで一番評価されたという「アリス・ミラー城」を、作者さん自らがなぞって見せたような印象。ネタバレが過ぎるのでいちいち指摘はしないが、本作を読んで気に入った人はご一読を。直ぐに共通点が目に付くはずだ。ことに理解できない読者が大量発生してネットに考察が溢れた結末は、考察が溢れているところまでよく似ている。その上で、「アリス城」にあったぎこちなさや無理矢理感が払拭されていて、作者さんが色々問題を整理されたんじゃないかと思う。
    只まあ、その手のトリックとしては定石すぎるきらいはある。そういう話だと思うと、少しひねたミステリ読者なら、一行も読まないうちから「犯人は○○かな」くらいのことは言うはずで、それがその通りというのはね。なんというか、皆殺し系のクローズドサークルというのは、もはや様式美の世界なんでしょうか。

  • 雪で館に閉じ込められ、予告通りに殺人が行われる…よーし、推理しようじゃないか、と気合いを入れる。
    結果、メイド=作家夢川蘭、はすぐわかったものの、=作家弧木雨論までは見抜けなかった。
    性別もかぁ。

    すぐに再読。不自然なところはあるけど、成り立っている。ヒントもある。くやしい。

    さらに他の方のブログを読むと、過去作のネタをわざと入れているという…うーむ、城シリーズとか読めてないからなあ。これは是非読まねば。

    どなたかも書かれていたけど、安易に本格ミステリを求める読者にも強烈なアンチテーゼとなっている。トリックの焼き直しでも、どうせ忘れてるでしょみたいな。

  • ミステリー作家の苦悩が詰まった一冊。自分にとっての地雷要素がラストにあったので評価低めですが、だんだん犠牲者が増えていく展開は面白かったです。

  • Amazonの紹介より
    あの北山猛邦が真正面から「館」に挑む正統派新本格ミステリ!
    「本格ミステリの神」と謳われる作家・天神人(てんじん・ひとし)が統べる館、「月灯館(げっとうかん)」。その館に集いし本格ミステリ作家たちの間で繰り広げられる連続殺人! 悩める作家たちはなぜ/誰に/何のために殺されるのか?
    絢爛たる物理トリックの乱舞(パレード)とともに読者を待ち受ける驚愕のラストの一文(フィナーレ)に刮目せよ!!
    これぞミステリの進化の系統樹の最前線にしてネオ・クラシック!


    悪天候や館というど定番のクローズドサークルものですが、真っ向から勝負しているかのような密室殺人とトリック、そして衝撃的な真犯人に大いに楽しめました。

    読む前にですが、この小説はグロい描写があります。バラバラ殺人や血生臭い表現がありますので、ご注意を。

    「占星術殺人事件」「そして誰もいなくなる」「十角館殺人事件」といった作品の要素が、チラホラあるのですが、読み応えはなんといっても密室殺人です。一つだけでも難解なのに4つの難解な密室が立ちはだかっていて、本格派から変化球まで、よく考えつくなと驚くばかりでした。

    最初の方はどちらかというと正統派寄りのですが、回が重なるにつれ、そのトリック成立できる?とちょっと疑問も湧きました。
    特に後半の方では、〇〇の重さでイレギュラーになるのでは?とも思ってしまいました。

    そういった疑問はあるものの、それを覆すような衝撃がラストに待っていました。ただでさえ、最初の犯人当てでもどんでん返しで驚きだったのにさらにどんでん返しが待ち受けていて、ラストの一文は衝撃的でした。最初は「?」でしたが、読み返してみると、ジワジワと戦慄と寒気が走っていて、なんとも言えない読了感を味わえました。

    たしかに読み返してみると、そういった解釈もできるといった発見もでき、北山さんの文章力に脱帽するばかりでした。

  • トリックが凄過ぎて、
    逆によく分かりませんでした…(笑)
    まあこれも"無知"と言われそうですが。
    最後の台詞も「え、乗っ取られたってこと?」と解釈してしまい、ネタバレを読んで一人三役してたと知り驚きました。一緒に住むのにそんなこと可能なの…?とは思いましたが、館ミステリー面白かったです。

  • 物理の北山が令和の時代に繰り出してきた王道館もの。
    扉越しのシーンは賛否両論当然。いろいろ差し置いて最後の展開には度肝を抜かれる。
    いつの時代もこういう作品は必要だ。

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著者プロフィール

2002年、『『クロック城』殺人事件』(講談社ノベルス)で第24回メフィスト賞を受賞しデビュー。代表作として、デビュー作に端を発する一連の〈城〉シリーズなどがある。

「2022年 『月灯館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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