- Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065332450
作品紹介・あらすじ
多摩中央署に、警視庁本部捜査一課から一人の女性刑事が配属されてきた。吉村爽子。彼女は、いまだ経験と勘に基づく捜査手法に重きを置く日本の警察において、異端視されがちな「心理捜査官」だった。多摩中央署の新たな同僚たちに心を開く様子を見せない吉村だったが、管内で、女性が殺害される事件が発生。犯人は快楽殺人者の可能性がある。新たな被害者を出さないために、懸命の捜査が始まる――。吉村爽子の悲しき過去。そのトラウマは新たな舞台で克服されるのか。大人気「警視庁心理捜査官」シリーズが講談社文庫に登場。
感想・レビュー・書評
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黒崎視音『マインド・チェンバー 警視庁心理捜査官』講談社文庫。
『警視庁心理捜査官シリーズ』が徳間文庫から講談社文庫に移籍。書下ろしの最新作で、630ページというシリーズ最大のボリューム。
シリーズが最初に刊行されたおよそ20年前と現在とでは様々な事情が異なるのだが、全く違和感は感じない。
結末には少し不満が残るものの、全体を通じて読み応えがあった。ひと昔前にブームになった猟奇殺人事件を扱うミステリーとプロファイリングの組合せを黒崎視音がリバイバルさせようと挑んだ意欲を感じる。
『プロローグ』と『エピローグ』、『間奏曲』と題されたインターミッションを挟み、三章構成の連作小説かと思っていたのだが、全編を通して大きな仕掛けが仕込まれていた。
注目すべきは第二章で、主人公の吉村爽子に加えて、公安の女狐と呼ばれた柳原明日香が登場するや物語は俄然面白くなる。
『プロローグ』。昔流行った久保田早紀の『異邦人』を歌う白い顔の女は何者か。
『第一章 血塗られた翼』。組織捜査という壁に挑む特別心理捜査官である吉村爽子のプロファイリング。背中に傷を負いながら、警視庁本部捜査一課を追われた吉村爽子の身に一体何が起きたのか。警視庁本部捜査一課から多摩中央署に左遷されて来た特別心理捜査官の吉村爽子。新たな同僚たちに心を開くこともなく、まるでセルロイド人形のような無表情を貫く吉村だった。そんな吉村も同僚の支倉だけには僅かに心を開く。そんな中、管内で看護師の女性が自室で殺害される事件が発生する。犯行現場であるアパートの部屋の壁は被害者の出血で汚れ、さらには犯人が意図的に被害者の血で何かを描いたような跡があった。
『間奏曲』。吉村爽子が幼い頃に経験した事件のトラウマに苛まれる姿が描かれる。そして、次なる猟奇殺人事件が……
『第二章 暗い森』。吉村爽子のかつての上司である公安の女狐と呼ばれた柳原明日香が登場する。『間奏曲』で起きた酒鬼薔薇聖斗事件を彷彿とさせる事件の捜査が描かれる。犯人の14歳の少年は意外にもあっさり捕まり、柳原が聴取を行う。しかし、自供により明らかになった凶器も犯行現場に残された物証も少年の犯行を示していなかった。その理由に気付いた吉村がそれを柳原に告げると柳原は豹変するところが読みどころ。
『第三章 正気の仮面』。第一章と第二章に描かれた2件の殺人事件の犯人を治療していた精神科医の奥津城美鈴に吉村爽子が対峙する。奥津城を追い詰めようとする吉村だったが、思いもよらぬ事態が起きる。
『エピローグ』。予想とは異なり、再び吉村爽子だけが責任を取らされるという、何とも煮えきらぬ結末には少し不満が残る。
定価1,188円
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ものすごい読み応え。
臨場感とリアリティ。
さすがの黒崎作品クオリティ。
時系列的には、1作目以降が再構築されたということでよろしいか。
個人的には、署の同僚たちももう少し見たかったなー。
個性豊かな魅力的キャラが揃ってそうなので。
あと、アルトワークスの活躍も特筆すべき。
(どの型のワークスだろう?) -
多摩中央署に、警視庁本部捜査一課から一人の女性刑事が配属されてきた。吉村爽子。彼女は、いまだ経験と勘に基づく捜査手法に重きを置く日本の警察において、異端視されがちな「心理捜査官」だった。
多摩中央署の新たな同僚たちに心を開く様子を見せない吉村だったが、管内で、女性が殺害される事件が発生。犯人は快楽殺人者の可能性がある。新たな被害者を出さないために、懸命の捜査が始まる――。
吉村爽子の悲しき過去。そのトラウマは新たな舞台で克服されるのか。大人気「警視庁心理捜査官」シリーズ。 -
心理捜査官 吉村爽子の活躍を描いた警察小説。
徳間書店から刊行されているシリーズの書き下ろし。
心に傷を持つ心理捜査官が赴任先の警察署で知り合った女性警察官と心を通わせていく過程が印象的でした。
徳間書店から刊行されている作品も後追いしたいです。