上司は思いつきでものを言う (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202403

感想・レビュー・書評

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  • 私にとって、橋本治著 6冊目

    会社・上司・部下という身近な関係におこる現象を、なぜそう言うのか?なぜそう言おうと思うのか?…といつも通り思考の次数をあげていく。

    さらに時代を超えたり、規模を国や世界に広げたり、関係性が相似のままスライドしていくのが非常に爽快である。

    本著の意図などとは全く関係ないと思うが、私自身は
    「がんばろうっかな…」「日本もいいとこあるな…」
    と、ふんわりと前向きになる一冊だった。

  • 今回はサラリーマンにとってキャッチーなテーマを取っ掛かりにして、結局はまた日本社会論まで突っ込んでいます。
    著者の小説は過去に何冊か読んだことあるのですが、評論となるとあの語り口調が気になってしまい、いいことを言ってるんだけど…と敬遠してました。本書を読んでみると、往年の癖ある口調は後退したものの、やはりしつこく繰り返す口調は健在ですが、考えるトレーニングには恰好の素材を提供していますので、著者との迷走を是非とも楽しんで下さい。

  • 内容はお題の通り上司が思いつきでものをいう理由について、日本の体制やはてまて聖徳太子の時代にまでサカノボリ、(いくぶんくどい展開や表現があるが)懇切丁寧に説明したもの。どうやら、部下が建設的な提案をした場合でも現場を離れている上司は
    (1)現場がよく見えないため、昔現場にいた頃に則して時代遅れの指摘をしたり
    (2)部下の提案を認める=今が悪いことを認める=今という時代を作った上司たる自分達の非を認める ことになるため認めたがらず部下の提案を否定したり
    するものだそうです。確かに、上司のいうことは全て認めつつ、上司の意に沿った形を無理やりつくって提案したこととかあった記憶が。。なかなか現実をツブサに書いた本だと思います。会社は大きくなると、ピラミッド構成のため現場が見えない上司が多くなるのが必然で、こうした思いつき上司が増えるとか。。役職を一切無くした会社が好成績をあげているのもわかるような気がしました。

  • このタイトルは、どれほどの人の心を掴んで離さなかったのだろう。タイトル勝ちな本。でも、そのタイトルを生み出すまでの考察のプロセスというのが、著者のオリジナリティに基づいているんだよね。上司が思いつきでものを言うのは、その上司の性分だと思いがち。だけど橋本氏は喝破するわけです。
    「上司が思いつきでものを言うのは、日本のサラリーマン社会の組織的な問題だから」と。

  • 土偶会社の例は一読の価値あり。随所に考えさせられるところあり。

    ・「あなたは「企画書」という文章の書き手で、「書き手は、常に読み手に分かるような文章を書かなければならない」という鉄則がある以上、読み手である上司の「頭のレベル」は、いいわけにならないのです。」

  • タイトルがおもしろかったので読んでみた。

    社会人であれば、誰もが「その通り!」と思うようなタイトルだろう。

    なぜ、上司は思いつきでものを言うのか。
    その背景から論理的に記述されている。

    上司もまた「人」であるということ。
    自分の上に上司がいないのは、社長だけであり、それ以外の全ての上司には
    「部下に対しては上司であり、上司に対しては部下である」という複雑な相互関係の中にいるということ。

    思い付きが生まれる場や、上司と現場の関係性など、
    第1章~第2章あたりは結構おもしろいです。

    なるほど~と思う部分もあります。

    が、しかし。。。いかんせん、文章が読みづらいんですよ・・・・・

    なんというか、非常に回りくどく、解釈が難しいんです。

    中盤以降は結構厳しいです。斜め読みでもいいかもしれません。

    第1章 上司は思いつきでものを言う
    (「思いつきでものを言う」を考えるために;いよいよ「上司は思いつきでものを言う」

    第2章 会社というもの
    (誰が上司に思いつきでものを言わせるのか;上司は故郷に帰れない)

    第3章 「下から上へ」がない組織
    (景気が悪くなった時、会社の抱える問題は表面化する;「下から上へ」がない組織)

    第4章 「上司でなにが悪い」とお思いのあなたへ
    (「上司はえらくて部下はえらくない」というイデオロギー;儒教―忘れられた常識)

  • 【MM024 mylibrary 2004/8/31】
    今回ご紹介するのは、橋本治著「上司は思いつきでものを言う」(集英社新書)です。

     この本はまだ最近販売された本で、新書としてはけっこう売れた本です。
     私も前々から気になっていて、知人からの紹介で購入しました。
     何といっても、「上司は思いつきでものを言う」というタイトルに惹かれました。現在連載中の「上司を動かす50の方法」に通ずるものがあります。もともと著者は「サラリーマンの欠点」や「サラリーマン社会の欠点」というタイトルでの発売を考えていたようですが、もしこういうタイトルだったら、私は買わなかったかもしれません。それだけタイトルって大事なんですよね。
     こういう新書では久々におもしろいと感じた本でした。中でも著者の突拍子のない例え話がなんとなく笑えます。例えばこんな感じです。

     現在、業績不振に悩むある会社があります。この会社は、古墳に副葬品として埋葬される埴輪を製造・販売する会社です。もちろん、現在は古墳を作る人なんていません。そのため埴輪を製造・販売するこの会社が業績不振になるのは当たり前です。
     ある社員は、上司からこの事態を打開するために、わが社の技術を生かした新展開の企画を出せと指示されます。この社員は一生懸命考えました。1つは、一般の人向けに「死んだら古墳に入りましょう」というキャンペーンをすることです。しかし、このご時世、古墳に入る人なんかいないし、そもそも古墳を作る業者が存在しているかどうかも怪しい。この企画は実現不可能です。2つ目は、古墳と決別し、埴輪そのものを美術品として売り出すことを提案しました。古墳が作られていない現在においては当たり前の企画です。
     しかし、この企画は通ることはありませんでした。それどころか「わが社はコンビニの経営をしよう」という訳のわからないことを言う幹部まで登場してしまいました。
     「これのどこがわが社の技術を生かした新展開だ!」と社員は怒りますが、実際コンビニの経営がスタートしました。

     なぜ、こうなってしまうのでしょうか。上司が思いつきでものを言うとはこんな感じだそうです。
     本文はもっと詳しく書いてありますので、理解しやすいと思いますが。。

     さて、この他にも、管理職になった上司を「田舎から出て行って都会人になった人」、部下を「その田舎の青年団」という例えも出てきます。また、「バカ上司」と「優秀な部下」の組み合わせは存在するが、「優秀な上司」と「バカな部下」の組み合わせは存在しないといった話も登場してきます。なぜ日本人はこういうものの考え方をするのか、という内容も出てきます。
     上司が思いつきでものを言ったら私たちはどうしたらいいのか?これに対処する方法も書いてありますが、私は実行できそうにありません。。。




     この本はサラリーマン社会の閉塞を嘆じるものではありません。「上司は思いつきでものを言う」ということが、なぜ起こってきたのかを、儒教の伝来まで遡り、とてもスリリングに解剖していく本です。日本の男たちが、なぜ戦国時代と幕末維新の時代ものが好きなのか。こんな「なぜ」も見えてきます。そして、では日本はどうするのかー「現場」の声を聞く能力の復活に向けて、上司のみなさんにも、上司でないみなさんにも、懇切丁寧な今後の道中案内の書であります。


    目次

    はじめに
    第1章 上司は思いつきでものを言う
    第2章 会社というもの
    第3章 「下から上へ」がない組織
    第4章 「上司でなにが悪い」とお思いのあなたへ
    あとがき

  • 作家の橋本治さんの本。
    「サラリーマンの欠点とサラリーマン社会の欠点」というテーマだとご自分ではおっしゃっているが、どちらかというと「何故サラリーマン社会には欠点があるのか」がテーマの思考実験本だと思った。
    思考実験の表現方法が(訳者の望月さんのせいかもしれないが)ちょっとタレブに似ている気がする。

    上司が思いつきでものをいうプロセスを、
    1、上司と部下では、持っている情報が違う。現状に対する情報量と、過去の成功体験が違う。
    2、部下の改善策が、現状認識を怠った無能の責任の追求に聞こえる(その意図がまったく無かったとしても)
    3、現場の前提と、組織の内部から外部をみる上司は、前提から食い違う事が多いが、それが明らかになる事は少ない。
    ※日本の会議は、議論をする場では無く、承認をする場である。
    (バイアス)現場からの意見にたいして、てきとうな事を言って困惑させることで、断続されている現場への優位性を保とうとする。
    (バイアス2)上司というものが、部下に命令をするものだと思い込んでいると、部下に嫉妬する事になる。だからこそ、逆に部下というものを原則として有能だと考えなければいけない。
    ただし、有能だと考えられる上司は、現場と自分が既に乖離している意識を持たないと自分も参加したい気持ちが逆に部下の意見をスポイルする。
    4、結果的に上司からすると傷付かない(責任を感じない)、建設的な部下からすると思いつきでものをいうとしか思えない答えに帰着する、というもの。

    組織の課題としては、
    会社の構造上の課題を、「大きくなるという動機に歯止めをかけるものが無い」事にあると定義し、株式会社が出来た時代は「金が集まりにくかった時代」であり、金があるからいいじゃないかという考え方だが、現在では「金があると(利潤を追求しなければならない為に)困る」という時代になってしまった。しかも、20世紀の現場は「必要」が生み出していたが、21世紀の現場は「観念」でしか生み出されないので危ういと分析している。
    また、日本での文化的背景としては、聖徳太子以降官僚制度が世界に類を見ないほど協力になった事をあげている。
    (官僚=あくまで実権を持った二番手以降を最終目的とする存在だからリーダーが発生しにくい、戦国時代と明治維新は例外的に官僚組織の力が弱まっているので時代として人気がある、の二説は面白いと思う)

    ちなみに、筆者の提唱する解決方法は、明らかにそうとわかる態度で「呆れる」こと。
    きちんと呆れることで、上司に気づきを与えるしかないという消極策。
    呆れるという行為を高度に知的な作業と定義して、それを実行する事を提唱している。
    きちんとフィードバックをして前進していくしか無い事を、思考実験の結果としている点も面白いと思う。

  • 本のタイトルからして「無能な上司」について書いた本かと思ったが、それだけではなかった。

    ”会社組織のピラミッドにより生じる人間心理”

    これが非常にわかりやすく書かれている。

    上司も人間。そして以前は部下だった。
    しかしなぜか上司と部下の気持ちは乖離する。
    これはしかるべくして起こる

    それゆえ「思いつきでものを言う」しかない。(そう聞こえる)

    上司の気持ちを理解できない人、部下の気持ちを理解できない上司。
    これら、普通に発生する問題の原因について、事細かに書かれていて面白い。

    面白いので一気に読み終わってしまった。
    読んでる途中に目から鱗が落ちる箇所もいくつかあった。

  • タイトルの通り。面白いが、「面白がるだけでいいのか」という気になる。
    この本で、著者は誰にケンカを売っているのだろうか?

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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