「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206531

作品紹介・あらすじ

様々な原発報道において、なぜか盲点になっている場所がある。それが、青森県六ヶ所村の「使用済み核燃料再処理工場」だ。本格稼働すると「原発が一年で放出する放射能を一日で放出する」と言われるこの施設では、いくつものお粗末な欠陥が露呈し、しかも、直下には明らかに活断層が存在する。その危険性は、通常の原子力発電所の比ではない。本書は、それぞれの分野で「六ヶ所」にアプローチしてきた専門家たちの切実な訴えで構成されている。

感想・レビュー・書評

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  • 原発用燃料の再処理施設に関する著作です。福一事故により明らかにされた原発自体の危険性は周知されたように思いますが、再処理工場についても危険であることが示されています。放射性物質を取り扱うこと、その施設の地勢的な危険、国も含めた管理の脆弱性について指摘されています。電力会社という民間企業が設置してきているので、ある程度経済的に合理的な手法で判断され設置されてきたと思っていましたが、色々な利権の中で設置され技術的、学術的見解も捻じ曲げられてしまうことに驚いてしまいます。また事故を起こしてしまえばその結果を享受するのは、子供たちであることを思えば、今すぐやめていくことに躊躇いを感じませんでした。

  • 2011年に東北で大地震が発生する以前、六ケ所村の再処理工場の問題のことはいくらか知っていて、「ガンになりたくねーし、止めてくれー」と憂いていた中、震災が起きて福島原発の惨状が地獄になってから、六ケ所村への関心が(恥ずかしながら)薄れてしまっていた中、「そういえば」とふと思い出して読んだ一冊。

    いつの間にか2021年竣工予定で、「まじかよ~」と思って簡単な本書をさくっと読んでみた。

    トイレのない巨大ラグジュアリーホテルから垂れ流される最大級に汚いウ〇コ(放射性物質)が海に流れる。その量が今のホテル(原発)と桁違いって、ふざけんな!

    「想定外」が唯一許されないのが原子力、なんせ何百年何千年と土地が汚染されてガンの脅威にさらされる。命短いクソジジイ達が惨劇の後で「やっぱしすみませんでした」では決して済されない!(ゴミの不法投棄とか森林破壊とかは(大変だが)復活がきく、ただ原子力だけは歯が立たない。。。)

    電力関係で膨大な利益を得ている電力会社関係者、御用学者、役人、みんな大気圏内から消えてくれ!!!

  • 原子力発電

  • ◆経済産業省による誤った政策決定の束。この隠蔽・擁護に加担する御用学者。目的は奏効せず非効率的な「核燃料再処理施設」を運用し続けることで狙うのは、自らの核兵器製造の悪夢なのか?◆

    2012年刊行。
    著者小出裕章は京都大学原子炉実験所助教
    同渡辺満久は東洋大学教授(変動地形学)
    同明石昇二郎はルポライター。

     フランスの元環境大臣ですら、原発の使用済み核燃料の再処理は技術面・経済面で世界的潮流ではないと言う中、そのフランスから技術導入・設備・施設建設を依拠した日本の核燃料再処理施設。
     本書はその六ケ所村核燃料再処理施設の存在が意味するところを、原子炉・原子力発電の専門家、活断層の専門家、ルポライターの3名が各々、あるいは協働して解読していく。

     テーマは以下のとおり。
    ➀ 核燃料再処理。
     使用済み核燃料の物理的分解とともに、核燃料の組成物質を化学的に分離し、プルトニウム(核兵器の材料)が生成。
    ➁ 再処理施設建設・稼働にかかる費用、危険性その他の問題点。及びこれに対する実施ありきの甘い見積と情報隠蔽。
    ➂ シュミレーション「六ケ所村再処理施設」震災被災。
    ➃ 全国主要活断層上にある原発群。
    ➄ 活断層過小評価を生む政策配慮と忖度。その誤謬。
    ➅ 原子力規制委員会設置法案、原子力基本法改正法案が盛り込んだ核武装への道。


     余りの杜撰さ(というか、経済産業省と御用学者のズブズブぶり)に開いた口が塞がらない。しかもこれを丁寧に検証し、追跡するジャーナリストの少ないこと少ないこと…。
     不確定要素ではあるが、過去の現実の組み合わせが生む問題に対する無関心・軽侮。臭いもの=核燃料処分を進めることのできない政治と、情報隠蔽・不開示。
     そしてごかましの上に堆積し続ける誤った政策決定の束。
     この見るに耐えない事実が、これでもかと開陳される。

     そして極め付けなのは原子力基本法改正。2012年6月に人知れずなされたそれは、核武装容認と捉えられても仕方のない内容であり、個人的に野田政権には信を置けなかったことを例証させられた感がある。しかも、経産大臣は今の某政党代表のE氏であるし…。

     なお使用済み核燃料の再処理に関しての補足。
     使用済み核燃料を化学的に分離する前提としての物理的破壊。この際に大量の放射線が放出するが、この制御が極めて困難という点に注意を要するだろう。

  • ◆きっかけ
    2016/8/18

  • タイトルとは裏腹に以外にまともな作品。
    とりわけ放射性物質・放射能拡散によるリスクがどの程度かを推計している。

  • [ 内容 ]
    様々な原発報道において、なぜか盲点になっている場所がある。
    それが、青森県六ヶ所村の「使用済み核燃料再処理工場」だ。
    本格稼働すると「原発が一年で放出する放射能を一日で放出する」と言われるこの施設では、いくつものお粗末な欠陥が露呈し、しかも、直下には明らかに活断層が存在する。
    その危険性は、通常の原子力発電所の比ではない。
    本書は、それぞれの分野で「六ヶ所」にアプローチしてきた専門家たちの切実な訴えで構成されている。

    [ 目次 ]
    第1章 「原子力後進国」日本の再処理工場が招く地球汚染の危機(五感に感じなくても著しく危険な放射線;放射線の危険性に対する「認識」の進化 ほか)
    第2章 シミュレーション「六ヶ所炎上」(裂けた核燃料再処理工場;シミュレーションの概要 ほか)
    第3章 核燃料サイクル基地は活断層の上に建っている(福島第一原発事故の根源となった国の「安全審査」体制;島根原発直近の「鹿島断層」過小評価事件 ほか)
    第4章 再処理「延命」のため浮上した日本「核武装」論(二人の「工業技術院」OB;「再処理路線」にしがみつく本当の理由 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • ◯被曝量の評価は、施設で取り扱う放射性物質の量の評価を行い、その上で環境に放出する放射性物質の種類や量を評価するなど、仮定に基づいていくつかの評価をした後で、平常運転時の住民の被曝量の計算結果を算出するそうです。
    この仮定というのがミソで、評価者のサジ加減で極端に甘い結果になっている恐ろしさ。
    フランスに造ってもらった東海村再処理施設ですが、なぜかフランスのものより高性能になっているとか。

    ◯原子力業界による活断層調査は、なるべく断層を認めたくない。認めざるを得ない場合はできるだけ短くしたい。
    なんで「活断層がある可能性がある、だけでは活断層の存在を想定できない」になってしまうのか。

  • 「活断層です」「いや、結論を出すには早い」「この断層は死んで
    ます」「よ~く調査したら活断層でした」

    既存の原発立地の地層調査が報道される度に思う。一体、どれが
    本当なのか…と。

    科学はまったくの不得手である。だから、活断層か否かの根拠を
    専門的に語られても分からぬ。でも、日本が地震列島であると
    いうことは知っている。

    そんな国に「安全ですよ~。安いですよ~」と宣伝してボコボコと
    建てられた原子力発電所には懐疑的だった。

    青森県六ケ所村には使用済み核燃料の再処理工場がある。
    福島第一原発の事故以来、反原発デモなどで原発の危険性を
    訴える人々は多くなった。しかし、この再処理工場については
    あまり目が向けられていないようだ。

    ここの敷地も活断層が走っているそうだ。本書ではそこで巨大
    地震が起こり、再処理工場が被災したら…とシュミレーション
    が物凄く怖い。

    日本列島の半分は機能不全になるんだなぁ。なんでこんな危険な
    工場を、当初の予算を大幅にオーバーしてまで作っちゃたんだろうか。
    日本国内で再処理するより、イギリスやフランスにお願いした方が
    安いっていうのに。

    「もんじゅ」だって上手く動かない。そして、再処理工場も絵に描いた
    餅になりかかっている。日本が抱える核のゴミ、どうするんだろう。

  • 脱原発を考える人より、原発推進を考える人に読んで欲しい。

    もととなる資料やシュミレイションに使った変数の妥当性は、シロウトの私には判断できない。
    しかし、論旨は明確で資料もわかりやすく、大変納得できた。
    現時点では、この新書の主訴に全面的賛成。


    そして、それなりの立場にある人や本書で批判された人、疑問を呈された関係者からの『反論の書』を待つ。

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著者プロフィール

元京都大学原子炉実験所助教。工学修士。
第2次世界大戦が終わった4年後の1949(昭和24)年8月、東京の下町・台東区上野で生まれる。中学生のとき地質学に興味をもち、高校3年までの6年間、ひたすら山や野原で岩石採集に没頭する。68年、未来のエネルギーを担うと信じた原子力の平和利用を夢見て東北大学工学部原子核工学科に入学。しかし原子力について専門的に学べば学ぶほど、原子力発電に潜む破滅的危険性こそが人間にとっての脅威であることに気づき、70年に考え方を180度転換。それから40年以上にわたり、原発をなくすための研究と運動を続ける。2015年3月に京都大学を定年退職。現在は長野県松本市に暮らす。著書に『隠される原子力・核の真実─原子力の専門家が原発に反対するわけ』(2011年11月/創史社)、『原発のウソ』(2012年12月/扶桑社新書)、『100年後の人々へ』(2014年2月/集英社新書)ほか多数。

「2019年 『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】 The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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