資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207323

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義は「トン(獣偏に貪)」である。際限無い成長を要求し、実物空間を呑み込み終え、金融というimaginaryな虚空間さえも生み出し、食べ尽くした怪物。
    「脱成長」「ゼロ成長」と聞くと、人生を逃げ切った団塊の年寄りの妄言と断じたくなるが、現実的にもう不可能だという認識を持つところから今後のシステムを考えていく必要性。
    リーマンショックと3.11とを並列にして語る箇所がいくつかあるが、そこは大いに引っかかる。金融工学と原子力工学を同列に語らないでほしい。
    作者もわからないという「資本主義の次のシステム」、願望としては利子の無い世界が創出されてほしい。あるいは宇宙に実空間を拡張するか。

  • ①先進国、中進国の需要が飽和したこと、②それにより資本が生み出す利潤=利子率がゼロになっていること、③これまでそうならなかったのは周辺から資源を簒奪してきたからに過ぎないが、それももう限界が近いこと、④地球上でエネルギーを好きに使えるのは全人口の15%であり、これ以上の成長はあり得ないこと、の4点については説得力があり納得できる。一方で陸の国→海の国への権勢移動とか、資本主義が蒐集に適したシステムであるとかは全く共感できなかった。
    仮に資本主義が終焉を迎えているとして、著者の示唆はその先のゼロ成長を前提とした停滞社会を考え方を変えることで乗り切ろう言っているだけに思える。これまでに預金したお金も出資金と捉え直して差し出せと言うのは到底実現できない政策で暴論である。
    こうなると古典的手法である戦争と革命でガラガラポンしか解決策はないか?

  • バブルの生成と崩壊が繰り返されていく

  • 特に読んで目新しい内容はなかった。リーマンショック以来このへんの論調に大きな進化はないね。国際資本の移動の自由化というものの影響がただ明確に示されてたのはよかった。投資の対象の空間の拡大(土地→金融に現代社会はシフトしてきた)はいつ食い止められるのか、あるいはその前に宇宙が新たな投資先になるのか。資本主義後のイデオロギーを明確に描かれるのはいつになるんだろう。

  • かなり難解

    資本主義の歴史と限界について

    個人としてどうあるかが問われる

  • 周辺を取り込んで過利潤を得てきた資本主義の限界を説く。周辺の取り込みという話は世界システム論やらポストモダンまでいろいろ言われてきたし、長期的に利潤ゼロというのも経済学の入門的論点で馴染みがある。それを、利子率の下落傾向を実証することで説明するというのはシンプルでわかりやすい。
    しかし、利子率を利潤率の代理変数とするのはどうなんだろう。ファイナンスで例えるなら、WACC = 負債コストとするようなもので、資本コストはどうした?と。だから、利潤率の代理変数は資本収益率とすべきだろうし、その資本収益率はピケティさんが実証したように長期的に5%近傍のまま。そうすると、あれ、利潤ゼロって話はどこいった?ということになる。
    理論的にも実務の実感値からも遊離している気がする。負債コストだけみちゃうのは、なんだか証券マンな発想なのかな。
    周辺の枯渇と資本主義の限界というおおもとの主張はよくわかるのだけど、その実証としては少々疑問に思わざるを得ない。

  • 傾向として消費に関心の薄い世代が育ってきているのは、ぼんやりと資本主義の終焉を予感しているからなのかな…と思いつつ読了。自分自身もそう感じるからなのか、経済システムを考え直そうと提案するものをよく読んでいる気がする。バランスをとるために、これからも経済成長していかなければ、というものも意識的に読んでみた方がいいかもしれない。共感できるか分からないけれど。

  • 資本主義は、周辺の存在を前提とする。新たな周辺はサブプライム層や非正規社員。

    民主主義は中間層の存在が前提。資本主義は国内を分断し民主主義を破壊する。

    シュール革命も100年程度の延命策でしかない。

    バブル崩壊は金融緩和をまねき、更なるバブルの元凶を生む。

    電子金融空間によって資本主義が生き延びた。
    金融緩和の出口はない。

    長い16世紀の価格革命と長い21世紀の価格革命。
    実質賃金の低下。

    ジョヴァンニアリギ=資本が健全な投資先を失い、利潤が下がると金融拡大の局面に入る。と同時にその国の覇権が終わる。
    実物経済のもとでは資本蓄積が進むと利潤率が下がる。周辺へ投資することで金融拡大が起こる。

    グローバリゼーションが進むとインフレは貨幣現象ではなくなる。マネーを増やしても資産価格だけが伸びる。

    金利を下げられない国も下がっても不平不満が亡くならない国もどちらも文明は破綻する。

    資本主義は資本が自己増殖するプロセス。利潤を求めて新たな周辺を生み出そうとする。海外に周辺がなくなれば自国内に周辺を作る。格差の拡大。民主主義の崩壊。
    未来からの収奪。

    成長のない定常状態は、歴史的には珍しいことではない。

  • 金利の観点から資本からの利潤獲得ができなくっていることや新たな市場がないこと、地球が耐えれるのか?
    などから資本主義の終焉を説明するある意味、名著。

  • 資本主義の目的である拡大と成長のための侵食先が欠乏していき、そして金利の低下から資本主義の終わりと未来への警告を唱える一冊。
    ルターとスノーデンを同列に考えるなど、ちょっと強引かなと思うところもあるが、資本主義の終焉を憂える根拠は理解できる。
    エネルギー問題など色々あるが、著者の指摘する資本主義の侵食先となるのは、これからはきっと宇宙になると個人的に思うが、人類初の月面着陸から大きな進歩が感じられない宇宙開発が、資本主義が終わったらそれこそ進まなくなるし、どうなるんだろうか。

著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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