- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087445565
作品紹介・あらすじ
「弱音を吐かない人は、いつだってひとりで闘っている」がん宣告を受けた<彼>と、彼を支える<家族>の物語。心揺さぶられる感動長編。笹本遼賀、33歳。都内のレストランで働きながら、人並みに、真面目に生きてきた。だが、胃の不調で受けた検査は予想外の結果――がんだった。どうして自分が? 絶望に襲われた時、弟の恭平から荷物が届く。それは遼賀が15歳の頃、故郷の山で遭難した時に履いていたオレンジ色の登山靴で……。「おれはまだ生きたい」懸命に前を向く遼賀と、彼を支える家族を通して誠実に“生”と向き合った傑作長編。【著者略歴】藤岡陽子(ふじおか・ようこ)1971年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。報知新聞社を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学留学。慈恵看護専門学校卒業。2006年「結い言」が、宮本輝氏選考の北日本文学賞の選奨を受ける。09年『いつまでも白い羽根』でデビュー。著書に『手のひらの音符』『晴れたらいいね』『おしょりん』『満天のゴール』『跳べ、暁!』『金の角持つ子供たち』などがある。現在は、京都の脳外科クリニックに勤めている。
感想・レビュー・書評
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最後は涙、涙でした。
人生の最後を迎える時、何を思うのか。
考えさせられる作品。
主人公は、スポーツや勉強とか、
何かで抜きにでていたわけではなかったけれど
目立たないところで目立っていた。
皆んなの拠り所となっていた。
そんな人になりたいと思っても
なかなかなれるものではないけれど
時々この物語を思いだしてみようと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
闘病ものは苦手だ。どうしても死に向かう結末を想像してしまうし、その過程を読むのも辛い。
この本は、33歳という若さで癌になってしまった遼賀が主人公。しかも子どもの頃に一度雪山で遭難して死にかけたことがあったり、弟が実の家族ではなかったりと、事実を並べると一見過酷な人生を送っているのだが、本人からはあまり鬱々とした感情は読み取れない。
もちろん闘病の辛さや自分の在り方について、苦しんだり悩んだりしているのだが、何故だか致命的な悲壮さがない。それは、彼が周りの人に優しさを与える人であり、人から与えられる優しさを感じられる人だからだと思う。
本書では章ごとに、遼賀、遼賀の母、弟、担当の看護師の視点でそれぞれ物語が語られる。みんながみんな、遼賀を好きで、彼の幸せを祈っている。病と闘う当人だけでなく、周りの人の受け止め方を読めるという点でも勉強になる。また、闘病中の人は周りから助けられるだけでなく、周りの人を励ましたり心を癒したりすることができるということを知れたのも、大きな収穫だった。
自分が病気になった時に読むには、現実逃避にはならないし辛くなるかもしれない。それでも、最後まで希望は消えず、残り続けるものがあるという事実を教えてくれる、優しい本だと思う。
著者が看護師として勤務しておられるということを知り、なおさらこの本への信頼が増した。
闘病ものは苦手だが、この本は読めて良かった。 -
フォローしている多くの方が読んで推しておられた本。
読んでみれば、それらのレビューに違わず、とても佳いお話だった。
チェーン店のレストランを店長として切り盛りする遼賀(33歳)に突然のがんが見つかるところから始まる物語。
そこからは、当たり前の日常が一変する中で、遼賀がどう病気(≒死)と向き合ったか、家族や周りの人たちと彼がどう付き合ったかが描かれる。
私のようにこれまで生きてきた時間よりも多分残りの時間のほうが少ない者でもその告知を聞けば怖れや絶望感を抱くと思うが、働き盛りでまだ将来がある青年がその状況に直面したらその受け止めはいかばかりのものか。
不安や後悔ややるせなさだけでなく希望や感謝なども加えて語られる彼の様々な思いに、自分だったら治療に堪える気力が湧くだろうかとかしっかり受け入れて前向きになれるだろうかなどと思いながら読んだ。
遼賀が自らの人生をして『新聞に載るほどの良いことも悪いこともせず、特に目立つこともなく生きて……。でも、間違いなく自分は幸せだった』と顧みる場面があるが、同じく平凡な人生であったとしても最後に『自分は幸せだった』と言える人生でありたいと思う。
『リモコンの5の部分についている突起みたいな感じ(=困った時に思わず探してしまう)』と評された遼賀をはじめとして周りの人もみんなが出来た人だったのがお話として少し喰い足りなかったところはあり。 -
うっかりバスの中で泣きそうになりました
闘病記でもない、でも、病気になった自分の話
死ぬときに私は何を思うんだろう
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癌宣告を受けた青年の闘病の物語。
登場人物はみな良い人ばかり。
生ききることを感じる物語でした。
都内のレストランの店長の遼賀。胃の不調から検査をうけた結果、癌。
その病院で偶然再会した高校の同級生の矢田。
遼賀は弟の恭平と連絡をとります。
そして、遼平から届いた荷物は、オレンジ色の登山靴。
遼平と恭平は15歳の時に、雪山で遭難し、死にかけた過去を持ちます。その時の登山靴。
この経験が、この後の闘病でたびたび思い出されます。
そんな遼平の闘病とそれを支える恭平、矢田、母親、そして良い味出しているレストランのバイトの高那。
恭平と遼平の関係。
手術、辛い抗ガン治療、治験。
そして、以前に遭難した山に再び挑みます。
そこで過去の遭難時に書いた手紙には熱いものがこみ上げます。
生ききること。
みんなにありがとうを伝えたい。
温かく優しい気持ちになれる物語でした。
お勧め。 -
なんだろう、自分にはあんまり刺さらなかった。。
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ストーリーを知らずに、なんとなくブクログの評価が良かったので読み始めたら、とまらなくなり、一気読み。
第1章から5章まで、章ごとにメインが代わる。
そのおかげで、登場人物たちの心情が痛いほど伝わってくる。
遼賀(本来の主人公)の人柄がとてもとても響いてくる。
『新聞に載るほどの良いことも悪いこともせず、特に目立つこともなく生きて……。山に生える、一本の木のような人生だ。
でも、間違いなく自分は幸せだった。〜』(280頁)
この一文を読んで、何にも起こらない、ただ毎日、在宅で仕事をこなし、週末にはショッピングや、プールに行く。そんな自分の日常も、間違いなく幸せなのだと、改めて感じた。
やっぱりこの作家さん、好きだなー。。。
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笹本遼賀、33歳。都内のレストランで働きながら、人並みに、真面目に生きてきた。だが、胃の不調で受けた検査は予想外の結果──がんだった。どうして自分が? 絶望に襲われた時、弟の恭平から荷物が届く。それは遼賀が15歳の頃、故郷の山で遭難した時に履いていたオレンジ色の登山靴で……。「おれはまだ生きたい」懸命に前を向く遼賀と、彼を支える家族を通して誠実に〝生〟と向き合った傑作長編
読んでいて、もうこの世にはいない両親と 遠く離れた所で暮らしているので 年に1回くらいしか会わなくなってしまった上の子のことを考えてしまった
上の子は遼賀と同じような歳だからかなぁ…自分の事と置き換えてしまう…
人の死は皆等しく いつかやってくるのだけど 遼賀のように若くして逝ってしまう人や 自分より先に子供を亡くす人の気持ちは想像するのも難しい
登場人物が温かい人ばかりで 何度も涙が出てしまった…
この方は初読みの作家さんかな?と思ったけど 『満天ゴール』を5年くらい前に読んでいた
☆4つつけているので 読んで良かったと思った作品なんだろう…なのに内容がうっすらとしか思い出せない(^◇^;) -
爽やかな異母兄弟の絆と思いやりに癒されます
遼賀の柔らかな生き方に共感 -
私はこの方の作品が好きかもしれない。
心が温かくなり、今この瞬間を大切に生きようと思いました。平凡な人生がどれだけ素晴らしいか気づかせてくれる作品でした。