国道沿いのファミレス (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450699

作品紹介・あらすじ

勤め先で左遷され、6年ぶりに故郷に戻った25歳の善幸。職場、家族、友達、恋人……様々なしがらみが彼に降りかかる。現代の若者をリアルに描いた第23回小説すばる新人賞受賞作。(解説/北上次郎)

感想・レビュー・書評

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  • 身に覚えのない噂から左遷され、自分の故郷のファミレスで働く事になった主人公。
    全体的に淡々と話は進み、細かい人間関係のトラブルはあるが、大きな展開はなく無事ハッピーエンドで終わったという印象。幼なじみのシンゴとの関係が読んでいて癒された。主人公は父親が女にだらしなく、シンゴは父親が誰か分からない…そんな生い立ちでも二人は周りの人に愛されて育ってきたし、二人の周りの人々もファミレスの従業員達も一人を除き良い人ばかりで殺伐としていないのがいい。
    帯に「全世代、共感間違いなし」とあった割には、私は共感できる登場人物はいなかったかな(^_^;)

  • 私が父のことをあまり良く思わないのは、きっと自分と似てるからなんだろうな、特に自分の嫌なところが。
    歳を取って、鏡に映る顔の形やちょっとした仕草や口調が似てくるのを自覚すると、益々そう思うようようになった。
    だけども、ほんとは自分の嫌なところは、多少の遺伝はあったとしても、自分の人生の、自分の責任なんだよね。
    息子を持って、二人とも独立した今となって、もっとこう接してあげていたら良かったとか、こう育てていれば良かったとか思うけど、彼らの人生には、私はまた間接的にしか関与できなくて、彼らの人生は自分で作り上げるものなんだよ。今度の次男の就活でつくづく思った。
    ずっと長い、父と私、私と息子たちとの生活を経て、そういうことが漸く分かって来たのも今更なのだけど、この小説の、主人公と父の関係を見ていて、そういうことを改めて思った。
    前置きが長くなったけど、この小説、ファミレスのチェーン店に勤める主人公・佐藤善幸がネットに書かれた良からぬ噂によって、都心の店から、遠く離れた故郷の町の店に飛ばされてきたところから始まる。
    幼馴染みのシンゴ、その母の茜さん、高校の同級生でシンゴの恋人の吉田さん、行きずりから恋仲になった綾さん、女にだらしない父、それを赦してこの日まで来た母と祖父、店の上司・同僚とアルバイトの面々…、これらの人との交わりの日々がグダグダと描かれる。
    それにしても、このグダグダ感がリアル過ぎ。
    したいことが何もない、将来の確たる希望もない、ただ生きるために生きている、欲望に任せて彼女と交わる、執着もなく、愛情も薄く、若者だけでなく、多分人間誰しもが持つ怠惰な欲望がこれでもかというように描かれて、自分の怠惰な心にグサッと来る。
    だけども、それでも「立派な社会人になる」程度のささやかな望みの中で、恋を実らせ、仕事に生きることも、ちゃんとしたひとつの人生と思わせて、エンディングのささやかな幸福感が余韻あり。

  • ようやく読み終えた。
    中途半端な田舎の、寂れたシャッター商店街を、人けのない白昼にとぼとぼ歩いているかのような、けだるい、茫漠とした気分になる作品。
    登場人物の背景は、けっこうドラマチックなのだが、筆致が淡白なので、ひどくどうでもいいことに思えてくる。
    泣くことも、怒ることも、恋愛感情すらも、平板で熱のないものに見える。
    それが作者の持ち味なのだろうか。
    いちばん最初に読んだ「南部芸能事務所」では、もう少し人が立体的に描かれているように思ったのだが。

    読んでいるうちに、あらゆることが相対化されて、たいしたことではないように思えてくる。父親が許せないことも、恋人のあらそいも、ストーカーも、出生の秘密も、なにもかもが、灰色の日常に飲み込まれていく。昨日も今日も明日も、ちょっとした凸凹はありながらも同じようにただ過ぎていくだけなのだろうな、という、しらけた気持ちになる作品だった。

  • 暖かい小説だったが、綾ちゃんの言動にショックを受けた。
    あまりにも尻軽すぎでしょ。「夏のバスプール」の方が、純で好みだった。

  • 再読。

    著者の近年の作品に引き継がれたものをいくつも垣間見ました。
    デビュー作だと思うと、ファンとしては感慨深いです。

    大まかなあらすじは覚えていたつもりでしたが、後半に繰り返されるトラップを忘れていて、その都度驚かされ、新鮮な気持ちで読みました。

    ユキのような男性は自分や自分の身内には近づいて欲しくないタイプかも。
    でも、最後の彼女との暮らしで変わって欲しいなと思います。

    シンゴが愛おしい。
    出自を本人が知る日が来るかもしれないと思うと胸が苦しくなりますが、ユキやその他周囲の人たちに守られ、ずっと幸せでいて欲しいです。

    とても好みの作品。
    また手に取ると思います。

  • 畑野作品には女にだらしない男がよくでてくる、ような気がする。女関係や主人公のろくでもなさが遠慮ない。
    親友カップルはとても素敵なだけに、主人公の女周りはどれも後味悪く(ハッピーエンドだった相手もあまり好きにはなれない……)、印象としてはあんまり良くはないのだけれど、それでも最後まで読んでしまったのは、やっぱり面白かったからだ。
    この作品がデビュー作で、既に独特の毒があり、最近の作品の方がよりこなれていて読みやすい感じはするけれど、青春群像劇が得意な作家さんだな、と感じる。

  • 読ませるなあ。
    クライマックスの少し前から、ぐっと来た。

    おそらく山梨あたりの田舎町だろう、その町にある今は廃れつつあるファミレスが舞台。都内の店舗から左遷させられた20代の男子、佐藤善幸を中心とした青春・家族・恋愛物語だ。

    このファミレスは、もしかすると私が以前バイトしていたレストランチェーンがヒントなのかとも思う。元はアメリカからやって来たとか、バイト仲間同士でファーストネームで呼び合うとか。著者はファミレスでバイトをしていた経験もあるようなので、もし推測が当たっているなら、どこかで会ってたりして。

    狭い田舎街での窮屈な人間関係、主人公のいびつな家庭環境、親友の出生の秘密、恋人の黒い噂……
    次々と障害が現れて、そのたびに苦しむ善幸とともに心の中では泣いたり怒ったり。

    登場人物みんなが幸せになってほしいと思える物語だった。

  • 全体的に漂う雰囲気は面白いと感じたが、登場人物のほとんどに魅力がない。

  • もう何冊も畑野作品を読んでいて、やっとこのデビュー作を読み終えました。解説の北上次郎さんが書いていた通りの感想です。一人を除いて全ての登場人物に幸せになってほしいと願ってやまない。そして登場人物を甘やかさないのはデビュー作からずっとなのですね。

  • ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまった。
    面倒な人間関係が詰まっているけど、シンゴの爽やかさと女子のような可愛さでそれが中和される感じがした。
    シンゴがいなかったら、どうなっていたのか……。
    無理矢理じゃない感じのハッピーエンド。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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