- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087450798
作品紹介・あらすじ
運命の糸に操られるように、北千島の戦地へ向かった3人の男。信州の疎開先から逃げ出した少年と少女。過酷な状況下、何を信じ、何を守るのか。人間の本質を照射する戦争文学の巨編。
感想・レビュー・書評
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疎開先の小学生たちや教師、島で働く女子学生たち、そして敵兵であるソ連兵たちなど、自国の兵士だけでなく、それぞれの立場の苦悩と葛藤、戸惑いを描くことで浮かび上がる、戦争の不条理と非情さ。
こうした様々な立ち位置からの悲劇を描けるだけでも、すごいと思うのですが、さらに浅田さんは物語の舞台となる占守島すらも、不条理と非情から生まれたことを描きます。
国家の思惑に踊らされ、故郷を追い出された先住民たちの悲劇。単に物語の舞台でしかなかったと思っていた島すらも、不条理と非情から生まれていたということが、明らかにされるのです。
個人と土地、それぞれの物語をあますことなく描ききり、小説は最終刊に向かいます。 -
終戦後の任務を担った片岡と菊池医師、鬼熊軍曹の運命、そして疎開先から抜け出した片岡の息子。刻々と近づく終戦の日とその後の終わらない夏。中篇はじりじりとして進まない時と進んでほしくない時が交錯しているようだ。
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中巻はあっという間に読み終えました。
なんなんだ、もう。
幸せな思いをしてる人が一人もいないじゃないか。
戦争ってそういうもんなんだけど、やっぱり悲しい。
片岡さんはようやく占守島に着きました。
本当に悲惨になりそうなのは下巻のよう。
どうか、片岡さんも菊池さんも鬼熊さんも死なないで…と
祈りながら読まなければなりません。 -
2020年3月21日読了。
片岡、富永、菊池の三人はついに占守島に到着する。
新兵の3人が到着後に参謀の吉江少佐から伝えられたこととは。
また、疎開先を脱走した譲と静代の行方は?
終戦の日まで残り3日、満州にはソ連軍が条約を破棄して国境を超えてきている。 -
「戦争とは、生と死との、ありうべからざる親和だった。ただ生きるか死ぬかではなく、本来は死と対峙しなければならぬ生が、あろうことか握手を交わしてしまう異常な事態が戦争というものだった。」
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上巻より濃い内容の中巻。驚くほど過激な浅田次郎節炸裂の、登場人物の言葉選び。
凄まじい戦時中の普通に生きている一般人と軍人の
なんちゅーかもどかしいというか、どうにも出来ない現実の描写。
引き込まれていくように読むにつれ、眉間にシワが寄っていくような。
一億総玉砕というより全滅という言葉が何ともリアル。
やっとバラバラだった登場人物がパズルの様に繋がったかなぁーと。 -
登場人物達それぞれの戦争に対して向き合う戦いを描く中巻。
戦争が終局に向かう中、片岡が召集された真実も明らかになっていく。
狙った通りの結果をもたらすのか?それとも?
戦争の凄惨さを感じながらも、ページを捲る手は止まらない。
戦争自体ハッピーエンドでないが、登場人物達のハッピーエンドを願って、
そして、この物語の結末に向けて、いよいよ下巻。