- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087451306
感想・レビュー・書評
-
どんな時代でも時流に抗えない、それにどう向き合うか。そして生きて刻まれた「跡」に目を背けてはならない。市井の人間に共通する永遠の命題。
出だしが非常に緩慢でこの先どうなることかと思ったが、そして小野菊の行方も読めたが、それでも最後は読ませた。流石は直木賞受賞作と言ったところか。
巻き返しの力を評価し★3.5のところ★半分評価を上げさせていただきます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
明治初期、舞台は根津の遊郭。社会の変革期にあって行先を求めてさまよい、混沌の中から抜け出そうとする市井の人々の葛藤が描かれる。歯切れのいい江戸言葉による台詞や重層的に用いられる同時代の噺家の存在も効果的で、主人公が身を寄せる常磐津のお師匠さんが彼の代表的な怪綺談を連想させるのも面白い。
-
自由とは言い難い境遇の中で縛られているとは思わない意識が時代なのか⁈
-
明治の武士の生きつらさが切ない。
-
最初の100ページあたりは正直言って退屈だった。
この作者の本は、別の短編集でもスロースターターだったなあ…
途中から伝奇物の様相を呈するけれど、夢が覚めてみれば、明るい空の下であった…ような。
途中、世相を映して、西南の役の様子が語られる。
西郷の最後の言葉「もうここらでよか」
明治の時代に乗りきれなかった人の象徴なのだろう。
ここを乗り切ったからといって、決していい時代には進まないことを、後の世を生きる私たちは知っているけれど、主人公にはこの先、地に足をつけて生きて欲しいと願うのだ。
巻末に紹介されていて初めてわかったけれど、表紙の絵は、小村雪岱でした。
この絵ではないけれど、埼玉県立近代美術館で絵を見て、気に入って絵葉書を買った画家でした。 -
うーん。
-
明治維新後の東京、根津の遊郭が舞台。
主人公の定九郎は妓楼の立番として働き、そんな己を嘲るように空しく日々を過ごしていた。
*************
先を思えば不安ばかりが立ち籠めるのに、確かな手立てを探ることは面倒であり無駄にも思え、結局、どうとでもなるさと思考を投げ出すのもまた、定九郎の常だった。(p.35)
***************
大きな時代の変動から取り残されたような町と人々。
華々しい出来事や有名な人物が描かれがちな明治初期の、谷底のような町に息づく人々の姿は、フィクションなのにリアルな存在感を持っています。
定九郎のどんづまり感がもたらすやるせなさをひしひしと感じつつ、どうなるのかな、と頁をめくっていくと――。
私はこういう終わり方、嘘っぽくなくて結構いいと思います。 -
直木賞らしいが、あんまり良さがわからなかった。
明治時代の遊郭の、なんとも奇妙なストーリー。
途中でオチがわかってしまったせいで、
最後まで心躍ることなく終わった。
『小さなおうち』みたいな一発を期待してたのに・・・ -
人物設定は地蟲を思いおこさせるが、心情描写を主人公に絞り込んだため登場人物の個性がひとりひとり際立っているように感じられる。傑作。